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異世界転生 前田正樹の場合 後編
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後ろから急に話しかけられて驚いてしまったのだけれど、僕はすぐに振り向いてその声の主を思いっきり殴りつけた。
誰かを殴った経験はなかったけれど、人を殴ることはそれほど気持ちいいものではないんだなと思いながらも、それが何かを言おうとするたびに僕は殴るという事を続けていた。
僕は何も言わなくなったそれを見下ろすと、何も言わなくなっていたみさきをそっと抱きしめていた。
今まで抱きしめた中で一番細く軽くなっていたみさきではあったけれど、不思議とぬくもりは残っているように思えた。
「ごめんな、お前たちに手を出しちゃ駄目だって言ってたんだけど、こいつらって二つまでしか命令を守れないんだよね。でもさ、こんな世界にいたって楽しくないだろうし、前みたいにもっと楽しくやっていこうぜ」
僕の後ろに立っている見覚えのある男がそう言ったのだけれど、僕は振り向くことに精一杯で先ほどのように殴りつけることは出来なかった。
「俺がお前を殺すのってこれで何回目かわからないけど、今度は上手くやってくれよ。お前の彼女もちゃんと一緒の世界に飛ばしてやるからさ」
言葉の意味は理解できなかったけれど、僕はその言葉の奥に謎の安心感を覚えた。
知らないどこかで目が覚めた僕は、目の前に立って微笑んでいる女性に懐かしさを感じていた。どこかで会ったことがあるような気はしているけれど、それがどこだったのか思い出すことは出来ない。
「本当はみさきちゃんも正樹君と一緒に来る予定だったんだけど、ちょっとした手違いがあったから今は離れ離れになっちゃってるんだよね。でも、すぐに合流できると思うから安心してね。それと、ルシファーが正樹君をまた殺しちゃったことを後悔しているみたいだったんで、どこかで会ったら慰めてあげてね。ルシファーに殺された正樹君にするようなお願いじゃないんだけど、これは正樹君にしか頼めないことだもんね。そうそう、私達はここから動けないんで直接助けることは出来ないんだけど、その代わり君に特殊能力を授けちゃうよ。そうだね、正樹君だけじゃなくみさきちゃんも強くなれるような能力がいいと思うんだけど、『相手がどんな種族でもモテモテになっちゃう能力』ってのどうかな?」
「その能力が何の役に立つのかわからないけど、僕はみさき以外に興味無いんで嬉しくないです」
「そう言わずにさ、これはもう与えてしまったから取り消せないよ。それに、この能力が発揮されればみさきちゃんの戦闘力もどんどん上がっていくと思うからさ」
「そんなもんなんですかね。サクラさんってそういうとこありますよね」
「へえ、私の事思い出したのかな?」
「ちゃんとは覚えてないですけど、なんとなく会ったことがあるような気がしていたんですよ。それだけです」
「でも、名前を憶えていてくれたことは嬉しいな。みさきちゃんが来るまでこの世界の事を簡単に教えてあげるよ」
名前を思い出したのは何となくだったけれど、ルシファーとサクラという名前は言いなれているような感覚があった。いつも口にしていたような感覚が。
「さ、みさきちゃんが来るまで私が優しく教えてあげるからね」
「ちょっと近過ぎませんか?」
「そんな事ないと思うけど、そう感じているとしたら、君の能力のせいなのかもしれないんだぞ。お姉さんは君の事が前よりも好きになっちゃったかもしれないな。この世界の事よりも、正樹君には私の全てを教えてあげるね。みさきちゃんにはない大人の魅力をたくさん教えてあげるよ」
「いや、そう言うのではなくこの世界の事を教えてくださいよ」
「大丈夫、みさきちゃんが来るまでたくさん時間はあるから、ゆっくり教えてあげるからね」
ゆっくりと迫ってくるサクラさんの表情は柔らかいのだけれど、その目はどこかいっちゃっているように見えて軽い恐怖を覚えてしまった。
僕は迫ってくるサクラさんにおされるように壁際に追い込まれると、その目に圧倒されて動くことが出来なくなっていた。
異形の怪物に襲われるのとは違う恐怖を感じていたのだけれど、僕は指一本動かすことが出来なかったのだが、もたれかかっていた壁が音を立てて崩れたことによってサクラさんから逃げることが出来たのだった。
「まー君を誘惑するのやめてもらっていいかな。やめないんだったらお前も殺しちゃうけどいいのかな」
「ごめんごめん。冗談だから冗談。みさきちゃんがいるのに正樹君の事を誘惑したりしないからさ、それは本当だから殺そうとしないでね。お願いだからさ」
「冗談ならいいんだけど、あんまり行き過ぎた冗談は面白くないからね」
「良かった。みさきは死んじゃったのかと思ってたけど、生きててよかったよ」
「それにしても、私が思っていたよりもみさきちゃんが来るの早かったんだけど、ルシファーの説明ってそんなに早く終わったのかな?」
「ルシファーの説明って何言っているのかわからなかったから途中で出てきちゃったよ」
「そんなことしてルシファーは怒らなかったの?」
「何か怒ってたけど、まー君に会えるって聞いたから無視して出てきたよ。それでも追いかけてきたんだよね。ちょっとうざいなって思って、殺しちゃったんだけどさ」
誰かを殴った経験はなかったけれど、人を殴ることはそれほど気持ちいいものではないんだなと思いながらも、それが何かを言おうとするたびに僕は殴るという事を続けていた。
僕は何も言わなくなったそれを見下ろすと、何も言わなくなっていたみさきをそっと抱きしめていた。
今まで抱きしめた中で一番細く軽くなっていたみさきではあったけれど、不思議とぬくもりは残っているように思えた。
「ごめんな、お前たちに手を出しちゃ駄目だって言ってたんだけど、こいつらって二つまでしか命令を守れないんだよね。でもさ、こんな世界にいたって楽しくないだろうし、前みたいにもっと楽しくやっていこうぜ」
僕の後ろに立っている見覚えのある男がそう言ったのだけれど、僕は振り向くことに精一杯で先ほどのように殴りつけることは出来なかった。
「俺がお前を殺すのってこれで何回目かわからないけど、今度は上手くやってくれよ。お前の彼女もちゃんと一緒の世界に飛ばしてやるからさ」
言葉の意味は理解できなかったけれど、僕はその言葉の奥に謎の安心感を覚えた。
知らないどこかで目が覚めた僕は、目の前に立って微笑んでいる女性に懐かしさを感じていた。どこかで会ったことがあるような気はしているけれど、それがどこだったのか思い出すことは出来ない。
「本当はみさきちゃんも正樹君と一緒に来る予定だったんだけど、ちょっとした手違いがあったから今は離れ離れになっちゃってるんだよね。でも、すぐに合流できると思うから安心してね。それと、ルシファーが正樹君をまた殺しちゃったことを後悔しているみたいだったんで、どこかで会ったら慰めてあげてね。ルシファーに殺された正樹君にするようなお願いじゃないんだけど、これは正樹君にしか頼めないことだもんね。そうそう、私達はここから動けないんで直接助けることは出来ないんだけど、その代わり君に特殊能力を授けちゃうよ。そうだね、正樹君だけじゃなくみさきちゃんも強くなれるような能力がいいと思うんだけど、『相手がどんな種族でもモテモテになっちゃう能力』ってのどうかな?」
「その能力が何の役に立つのかわからないけど、僕はみさき以外に興味無いんで嬉しくないです」
「そう言わずにさ、これはもう与えてしまったから取り消せないよ。それに、この能力が発揮されればみさきちゃんの戦闘力もどんどん上がっていくと思うからさ」
「そんなもんなんですかね。サクラさんってそういうとこありますよね」
「へえ、私の事思い出したのかな?」
「ちゃんとは覚えてないですけど、なんとなく会ったことがあるような気がしていたんですよ。それだけです」
「でも、名前を憶えていてくれたことは嬉しいな。みさきちゃんが来るまでこの世界の事を簡単に教えてあげるよ」
名前を思い出したのは何となくだったけれど、ルシファーとサクラという名前は言いなれているような感覚があった。いつも口にしていたような感覚が。
「さ、みさきちゃんが来るまで私が優しく教えてあげるからね」
「ちょっと近過ぎませんか?」
「そんな事ないと思うけど、そう感じているとしたら、君の能力のせいなのかもしれないんだぞ。お姉さんは君の事が前よりも好きになっちゃったかもしれないな。この世界の事よりも、正樹君には私の全てを教えてあげるね。みさきちゃんにはない大人の魅力をたくさん教えてあげるよ」
「いや、そう言うのではなくこの世界の事を教えてくださいよ」
「大丈夫、みさきちゃんが来るまでたくさん時間はあるから、ゆっくり教えてあげるからね」
ゆっくりと迫ってくるサクラさんの表情は柔らかいのだけれど、その目はどこかいっちゃっているように見えて軽い恐怖を覚えてしまった。
僕は迫ってくるサクラさんにおされるように壁際に追い込まれると、その目に圧倒されて動くことが出来なくなっていた。
異形の怪物に襲われるのとは違う恐怖を感じていたのだけれど、僕は指一本動かすことが出来なかったのだが、もたれかかっていた壁が音を立てて崩れたことによってサクラさんから逃げることが出来たのだった。
「まー君を誘惑するのやめてもらっていいかな。やめないんだったらお前も殺しちゃうけどいいのかな」
「ごめんごめん。冗談だから冗談。みさきちゃんがいるのに正樹君の事を誘惑したりしないからさ、それは本当だから殺そうとしないでね。お願いだからさ」
「冗談ならいいんだけど、あんまり行き過ぎた冗談は面白くないからね」
「良かった。みさきは死んじゃったのかと思ってたけど、生きててよかったよ」
「それにしても、私が思っていたよりもみさきちゃんが来るの早かったんだけど、ルシファーの説明ってそんなに早く終わったのかな?」
「ルシファーの説明って何言っているのかわからなかったから途中で出てきちゃったよ」
「そんなことしてルシファーは怒らなかったの?」
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