王になりたかった男【不老不死伝説と明智光秀】

野松 彦秋

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第6章 土岐家の名君

18.襲撃事件

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会川かいせん和尚のお茶を飲み、本堂で一息ついた十兵衛達4人は、和尚へ丁寧にお礼を述べ、寺の外で待つ頼純の家来達の元に向かう。

本堂から、寺の出口に向かう道を歩く4人、途中で頼純が足を止める。

見ると、頭を丸めた男が行く手を遮るように立っている。

『お主達、何者じゃ?』と口を開いたのは、頼純と男の前に割って入った六郎である。

気がつけば、十数名の者達が4人を囲んでいる。

十兵衛も又、帰蝶を頼純の横に立たせ、二人を中心にして六郎の背後に立ち、囲んだ者達を睨みつける。

男達は、六郎の言葉には答えず、無言で少しずつ近づいてくる。

状況を理解した十兵衛は、速やかに自分の懐に用意していた小さい笛を取り出し、思いっきり吹いた。

『ピィ~』という笛の音が周囲にこ響く。

『直ぐに家来の者達が来るぞ!!お主ら、命が欲しくば、立ち去れ!』

十兵衛は、相手を威嚇する様にそう怒鳴りつける。

4人を囲んだ者達は、一瞬動きを止めたが、直ぐ自分たちの任務を速やかに遂行すべく、4人の元へ小走りで近づいて来た。

(狼狽えないとは、かなりの手練れの者達である)

十兵衛は、冷静に刺客達の様子を観察しながら、そう判断したのである。

『頼純様、帰蝶様を宜しく頼みまする!』

十兵衛はそう言うと、自分の刀を抜き、2,3歩前に出て、近づいてくる者達へ威嚇する様に、刀を一振りする。

一人の刺客は、その刀をギリギリでよけ立ち止まり、その者と同様に他の者達も立ち止まる。

『お主らに、面白いモノを見せてやる。我が斬馬刀の剣技、冥途の土産にとくとご覧あれぇい!』

十兵衛の後ろから、六郎の声がする。

『頼純様、あれ、まるで舞のようだわ』

帰蝶が、生まれて初めてみたモノに感動する様に、頼純に訴える様に叫ぶ。

六郎はそう言うと、まるで踊る様に長い刀を全身を使い、振り回す。

六郎の動きが早くなるにつれ、刀の速度もどんどん加速していく、正に舞を踊る様であった。

一番近くにいた刺客を切った六郎は、竜巻のように、又その近くの者へ、瞬時に向かっていく。

美しく、踊りの様でもあるが、それは命を断つ剣の舞である。

一瞬で3名の刺客が切り捨てられ、他の刺客達は恐怖を感じ、後ろへ飛び下がる。

しかし、六郎は彼らを逃がさない。その者達との距離を瞬時に詰め、一人、また一人と切り倒していく。

『スゴイ、スゴイわ』と敵が次々と切られていく様をみて無邪気に喜ぶ帰蝶。

帰蝶は、喜んでいるが、斬られる刺客達からしてはタマッタものではない。

死神、彼らの目に映った六郎は、正にそれであった。

気がつけば、刺客の半分は六郎の剣舞の餌食になっていた。

『こんな手練れがいるとは、聞いていねぇぞ、お頭!』

一人の刺客が、堪らず声に出す。

『剣では敵わぬのなら、作戦を変えるぞ!!』

頭と呼ばれた男がそう言うと、刺客達は手裏剣を取り出した。

そして、彼らが一斉に手に持った手裏剣を目標に向けて一斉に投げた。

彼らの視線、身体の方向から、一瞬で十兵衛は彼らの目標を察知した。

それは、理解ではなく、正に察知、直感的な反射の様なモノであった。

(こ奴らの目標は、帰蝶様だ)

十兵衛は、咄嗟に帰蝶へ飛びかかり、自分の身体を盾にして帰蝶を守った。

帰蝶を抱きしめたと思った瞬間、7,8本の手裏剣が次々と十兵衛に刺さる。

不思議と痛みは感じなかった。しかし、直ぐに身体に違和感を覚える

(体が・・・痺れる。毒か・・)

十兵衛は、突然胸の不快感を感じ、気持ちが悪くなり、そして吐いた。

十兵衛は動けなくなったが、前方にいた六郎が、直ぐに十兵衛の助太刀に入り、武器を投げ無防備になった刺客達を血祭りにあげた。

刺客達の脅威がなくなった3人は、慌てて十兵衛に歩み寄る。

『十兵衛兄様、しっかりして』

『十兵衛、目を開けるのじゃ』

『十兵衛殿・・』

(腹の中が、いや、全身が痛い、・・身体が寒い・・・)

十兵衛の意識は飛び、そして十兵衛はその場で倒れたのである。

笛の音で慌てて駆けつけた50名の家来達は、十数名の刺客達の屍と倒れている十兵衛を見たのである。

『急ぎ、大桑城へ、医者、薬師を急いで呼ぶのじゃ、絶対に十兵衛を殺すな!』

頼純の怒鳴り声のような指示が、南泉寺にこだまするかのように響いた。
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