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被害者
しおりを挟む「わたしだって被害者のひとりなんだから、気になるわよ」と陽子ちゃんは主張してさらに――
「友香ちゃんの調査のアシストをさせてくれない?」と頭を深々と下げて懇願した。
「陽子ちゃんの気持ちもわからなくもないけど、また危ない目にあったらどうするの?」とわたしは、彼女に冷静になるように言葉をかけた。
「友香ちゃん、実は怒ってるんでしょ?」
「何に怒ってるって言うの?」と角田の件には、触れずに問いただした。
彼女は、何をどこから話して良いのか?わからないって表情で、口をモゴモゴさせている。
気を利かせて、わたしから質問した。
「もしかして、角田くんのこと?」
彼女は、急所を突かれた発言だったらしく、一層もじもじしている。
「友香ちゃん、わたしと角田くんが付き合ってるって知ってたから・・・もしかして、って思っていたの」と彼女は事実を認めた。
「だったら、陽子ちゃんは被害者ではないじゃない」とわたしは、彼女に詰め寄った。
「でも、これだけは信じて友香ちゃん。襲われたのは事実よ、ホントよ!」と彼女は、頬を紅潮させて訴えた。
まんざらでもない主張に、わたしは〝百歩譲って〟本当に襲われたとして、怪しいのは〝角田〟と証言したのは何故なのかが気になるところだが――――
彼女が、被害者であることは認めた。
「それで、わたしをアシストして犯人探しに協力したいってわけ、陽子ちゃん?」とわたしは彼女にねんを押した。
「まぁ、そういうところ」と彼女は頷いた。
渋々ではあるが、彼女に対して調査に同行することをわたしは認めた。
JR高田馬場駅付近は、学生や通勤客でとても混雑していたけれど――――
和久さんは、待ち合わせ場所に1秒の遅れもなく到着した。
「そちらは〝飯田橋〟の被害者の確か・・・〝沢田陽子さん〟じゃないかい?」とわたしと陽子ちゃんを見つけるなり問いただした。
わたしが、人見知りの彼女に代わって説明した。
すると和久さんは、ハンチング帽をとり禿頭の頭をひと撫でして「そうなんだ!」と了解してくれた。
まず、大雑把な状況を和久さんは、説明してくれた。
犯行現場が、広範囲に及ぶので各所轄が、情報を共有して地道な捜査をしている、ということだった。
「陽子さん、その後怪我の具合はどうだい?」と和久さんは、彼女に心配そうに尋ねた。
「おかげさまで、だいぶ良くなりました」と彼女は返答した。
「それで、あんたたちは高田馬場の件の情報が知りたいんだね?」
と和久さんは、すべてを見透かしていた。
酒の勢いで話してくれるかと、わたしと彼女は身を乗り出した――
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