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学食にて
しおりを挟む優作くんが、差し出したレジ袋の中には、たくさんのパンがぎっしり詰まっていた。
「友香ちゃん、お腹空いてない?」
と優作くんは、夕食というか、夜食というか?食事もせずに話し合っていたので気を利かせて食べ物を差し入れてくれたのだった。
「ありがとう、優作くん」とわたしは素直に礼を言った。
「友香ちゃん、パン好きでしょ!おにぎりとも考えたんだけど・・・」
わたしは、毎食パンでも構わないくらいのパン好きなので、この差し入れは有り難かった。
「遅いからバイクで送るよ、パンは家についてゆっくり食べれば?」
「そうね」
今夜も暖かい、春って感じがしない夜だった。やっぱり地球温暖化のせいだろうか?などと考えつつ優作くんのオートバイで風を感じながら家路についた。
和久さんから電話がかかったのは、翌日の午前の講義を受けて学生食堂で、陽子ちゃんとランチを摂っているときだった。
わたしは〝サンドイッチ〟を彼女は、〝タラコ・スパ〟を食べていた。
「ねぇ友香ちゃん、その後事件の方はどうなの?」と彼女は、わたしに尋ねた。
わたしは、暗礁に乗り上げていることには触れずに
「いまだに犯人に結びつくものも何も、見つからない状態が続いているわ」ととぼけておいた。
心の底では、よくも角田が怪しい――なんて言って調査を攪乱させたわね!と言ってやりたい気持ちが、口からこぼれてしまいそうなのをすんでのところで、のみ込んだ。
なんだかんだ言ったって、わたしと彼女は小説家になろう!という同じ目標に向かっている良き友人なのだから、そういう関係を壊したくはなかった。
「力になれなくてゴメンね」と彼女は、わたしに謝罪した。
次の瞬間、着信を告げる〝東京音頭〟が、流れた。画面を確認すると和久さんだった!
和久さんは「今晩、あいてるか?」と前置きもなくストレートに尋ねてきた。わたしは、特に予定はありません、と伝えると高田馬場の居酒屋を指定された。
夕方に、高田馬場で落ち合うことを約束して通話を切った。
「誰なの?」と彼女は、訊いてくる。
「所轄の刑事さんよ」と答えると――――
「高田馬場って聞こえたけど・・・例の事件のこと」
と彼女は興味津々って感じでさらに訊いてきた。
「まぁ、そんなとこ」とわたしは曖昧に答えておいた。
すると彼女は・・・
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