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5:誤解を解くために
1 噂の真相
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****side■裕也
「白石奏斗の噂?」
二つ上で現在K学園大学部三年の【鶴城慎】は裕也にとっては従兄にあたる。奏斗の妹が同学年に在籍しており、高等部時代はクラスメイトでもあったようだ。
「何、裕也。白石先輩狙ってんの? やめた方が良いと思うぞ、勝ち目ないし」
慎は裕也の前に珈琲の入ったカップを置くと眉を寄せる。
「いや、狙ってないし」
彼は現在一つ上の【美咲優也】という恋人と同棲していた。裕也がここに聞きに来たのには何個か理由がある。
従兄である慎は高等部時代に生徒会長も務めていた。そんなことからも学園のことには詳しいと思われた。そして彼の恋人である美咲優也は、奏斗の妹が所属していた風紀委員会の委員長を務めたという経歴があるのだ。そして奏斗の在学中に彼らは同じく高等部にいたし、大学部でも同じく在学していた時期がある。
「生徒会や学生会がK学園の裏掲示板を管理しているって聞いた」
”だから色々知っているんじゃないかと思って”と続けるが、
「確かにその通りではあるけれど、人の噂なんて知っても良いことはないし、特に白石先輩のは聞かない方が良いぞ」
と言われてしまう。
高等部時代の噂については裕也も少しなら知っている。
だがその噂の真相を知った自分は、奏斗を悪い人とは思わなかった。むしろモテるが故の不幸と思っている。人は良い感情ばかりを持っているわけではない。妬みや嫉みを持っていて当然。それを感じたことがない人は、とても幸せなのだろう。
一途で恨みを買いやすいイケメン。奏斗に対し、こんな印象を持った裕也は慎から大学部時代の噂話を聞いて思わず咽たのだった。
「さ、三股?!」
どうやら奏斗には大学部時代に三股疑惑が浮上していたらしい。
相手は女性三人。同じ大学の学生。
「何がどうなってそうなったのか、詳しくは知らないが本人が認めているから事実なんだろう」
と慎。
「認めたって、言質取ったってこと?」
「いや、言質だと意味違うだろ」
「じゃあ、自白したってこと」
裕也の言葉選びに慎が笑っている。
「白石先輩の高等部時代のクラスメイトに【古川悠】という先輩がいるんだけどさ、その人が本人に確かめたらしい」
古川悠。その名前には聞き覚えがあった。確か高等部では生徒会長、大学部では学生会長を務めた経歴の持ち主だったはずだ。とは言え、覚えているのにはもう一つ理由がある。
K学園では幼稚園からK学園に在籍している者を内部生。
それ以外の中途から入学した者を外部生と呼ぶ習わしがある。内部生が生徒会や学生会に所属するのは特に珍しいことではないが、その風潮を変えたのが『古川悠』なのだ。
つまり彼は外部生でありながら生徒会長、学生会長を務めたから珍しいのである。
「なんか、白石先輩の噂もそうだけど人脈が凄いなと思うよ」
裕也が素直な感想を述べると慎はふふっと笑った。
「白石先輩の代はK学園の二大セレブがいたしな。あと理事長の息子も同じ学年だし」
「いるからって簡単に仲良くなれるもんでもないでしょ」
「たぶんそれが白石先輩の魅力なんだろうと思うよ」
噂を聞きに来たはずなのに彼の魅力に触れることになった裕也はなんだか複雑な心境になる。
大学部時代には女性三人と同時につき合っていた白石奏斗。
それが何故、今男性とつき合っている上に三人恋愛という形なのか。その辺が理解を超えるなと感じていた。
「白石先輩は男も女もイケるってことなのか? それとも男も女も虜にしまくる妖艶な人物ってこと?」
自分の理解を超えた裕也はなんとか疑問を口にしてみる。すると慎はその言葉選びが面白かったのか、また声をだして笑っていた。
「あまり詳しくは分からないが、その相手ってのは高等部時代の元恋人なんじゃないのか? 相手の名前が分かればもう少し考察できそうだが」
「え?」
──高等部時代に彼女と別れて男に走った挙句、別れて大学部時代には三股かけて、現在は高等部時代の元カレと付き合っているというとこなのか?
ますます奏斗がどんな人なのかわからなくなる裕也であった。
「白石奏斗の噂?」
二つ上で現在K学園大学部三年の【鶴城慎】は裕也にとっては従兄にあたる。奏斗の妹が同学年に在籍しており、高等部時代はクラスメイトでもあったようだ。
「何、裕也。白石先輩狙ってんの? やめた方が良いと思うぞ、勝ち目ないし」
慎は裕也の前に珈琲の入ったカップを置くと眉を寄せる。
「いや、狙ってないし」
彼は現在一つ上の【美咲優也】という恋人と同棲していた。裕也がここに聞きに来たのには何個か理由がある。
従兄である慎は高等部時代に生徒会長も務めていた。そんなことからも学園のことには詳しいと思われた。そして彼の恋人である美咲優也は、奏斗の妹が所属していた風紀委員会の委員長を務めたという経歴があるのだ。そして奏斗の在学中に彼らは同じく高等部にいたし、大学部でも同じく在学していた時期がある。
「生徒会や学生会がK学園の裏掲示板を管理しているって聞いた」
”だから色々知っているんじゃないかと思って”と続けるが、
「確かにその通りではあるけれど、人の噂なんて知っても良いことはないし、特に白石先輩のは聞かない方が良いぞ」
と言われてしまう。
高等部時代の噂については裕也も少しなら知っている。
だがその噂の真相を知った自分は、奏斗を悪い人とは思わなかった。むしろモテるが故の不幸と思っている。人は良い感情ばかりを持っているわけではない。妬みや嫉みを持っていて当然。それを感じたことがない人は、とても幸せなのだろう。
一途で恨みを買いやすいイケメン。奏斗に対し、こんな印象を持った裕也は慎から大学部時代の噂話を聞いて思わず咽たのだった。
「さ、三股?!」
どうやら奏斗には大学部時代に三股疑惑が浮上していたらしい。
相手は女性三人。同じ大学の学生。
「何がどうなってそうなったのか、詳しくは知らないが本人が認めているから事実なんだろう」
と慎。
「認めたって、言質取ったってこと?」
「いや、言質だと意味違うだろ」
「じゃあ、自白したってこと」
裕也の言葉選びに慎が笑っている。
「白石先輩の高等部時代のクラスメイトに【古川悠】という先輩がいるんだけどさ、その人が本人に確かめたらしい」
古川悠。その名前には聞き覚えがあった。確か高等部では生徒会長、大学部では学生会長を務めた経歴の持ち主だったはずだ。とは言え、覚えているのにはもう一つ理由がある。
K学園では幼稚園からK学園に在籍している者を内部生。
それ以外の中途から入学した者を外部生と呼ぶ習わしがある。内部生が生徒会や学生会に所属するのは特に珍しいことではないが、その風潮を変えたのが『古川悠』なのだ。
つまり彼は外部生でありながら生徒会長、学生会長を務めたから珍しいのである。
「なんか、白石先輩の噂もそうだけど人脈が凄いなと思うよ」
裕也が素直な感想を述べると慎はふふっと笑った。
「白石先輩の代はK学園の二大セレブがいたしな。あと理事長の息子も同じ学年だし」
「いるからって簡単に仲良くなれるもんでもないでしょ」
「たぶんそれが白石先輩の魅力なんだろうと思うよ」
噂を聞きに来たはずなのに彼の魅力に触れることになった裕也はなんだか複雑な心境になる。
大学部時代には女性三人と同時につき合っていた白石奏斗。
それが何故、今男性とつき合っている上に三人恋愛という形なのか。その辺が理解を超えるなと感じていた。
「白石先輩は男も女もイケるってことなのか? それとも男も女も虜にしまくる妖艶な人物ってこと?」
自分の理解を超えた裕也はなんとか疑問を口にしてみる。すると慎はその言葉選びが面白かったのか、また声をだして笑っていた。
「あまり詳しくは分からないが、その相手ってのは高等部時代の元恋人なんじゃないのか? 相手の名前が分かればもう少し考察できそうだが」
「え?」
──高等部時代に彼女と別れて男に走った挙句、別れて大学部時代には三股かけて、現在は高等部時代の元カレと付き合っているというとこなのか?
ますます奏斗がどんな人なのかわからなくなる裕也であった。
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