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4:幸せの形を探して
6 噂と誤解と理人
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****side■優紀
「ほれ、乾杯」
優紀はサイダーの入ったグラスを裕也に手渡され、眉を寄せた。
「何に乾杯?」
まだ二十歳にならない自分たちは飲酒はできない。
気分だけのサイダーに肩を竦めると、
「俺たちの未来に」
と裕也。
「お、おう」
軽くグラスを掲げると、サイダーに口をつけた優紀。
裕也は座ればというように椅子を優紀の方に向けた。素直に腰かける優紀。
「こんな結末になるとは思わなかったな」
と裕也。
自分にとってもこれは想定外だ。抜け駆けはしない約束ではあったが、自分に分があるとは思っていなかった。
更にややこしくした裕也。それを正しい道に直そうとした優紀。
「ま、でも。理人らしいと言えば、らしいのか?」
と裕也。
いつになく饒舌に感じるが、それはこうなったのが嬉しいからとも言えるだろう。
「理人、変わらないね」
と優紀。
「そうか? 俺様っぷりに磨きがかかった気がするが」
「それは、否定できない」
理人は、幼い頃はそれなりに考えを口にするタイプだったと思う。正義感が強く、誰よりも男らしかった。
面倒見がよく、無口な裕也のフォローをしたり、いじめられやすい優紀を庇ったりしていたものだ。それが態度だけで相手を黙らせられるようになった頃には、少し雰囲気は変わっていた。
それでも三人の立ち位置は変わらなかったのかもしれない。
「たまんねえな。理人の魔王っぷり」
いつの間にかテーブルの上にナッツを出し、それを頬張る裕也。
将来、良い酒呑みになりそうだなと思いながら、優紀も手を伸ばす。
「裕也はドMだからな」
「俺がいつ、ドMになったんだよ」
ぷッと吹きだす裕也。今日はとても気分が良いのだろう。
「前からドMじゃん。理人に怒られんの好きみたいだし」
何言ってんだ、ホントというように優紀がそういうと裕也は、
「そうか?」
と不思議そうな顔をする。
「そういや、今日」
「ん?」
急に話を変える裕也。そんなことはよくあることだ。
「白石さんと一緒にいたとか」
「あ。ああ」
白石奏斗は大学部ではとても有名な人物である。奏斗自体は既に大学部を卒業しているが、彼の妹が現在三学年に在籍中だ。つまり優紀たちにとっては二つ上。
「理人が良く思ってないのは、噂のせいか?」
白石奏斗の妹が在籍する三学年には裕也の従兄にあたる『鶴城慎』がおり、そんな関係からも裕也は奏斗をよく知っていた。
優紀にとっても奏斗は知らない仲ではない。
優紀には一学年上と奏斗と同級生に従兄がいる。ちょっと複雑な関係ではあるが、一学年上の従兄の恋人の兄が奏斗と仲が良いのだ。
つまり白石奏斗は優紀と裕也にとってはよく知る人物。
だが理人にとっては良く知らない相手なので『悪い噂』の方を信じてしまっていても不思議はなかった。
「誤解、解かないと面倒なことになりそうだな」
と裕也。
「それは俺も同感だけれど。悪い噂って、具体的にどんなのがあるんだ?」
人の噂には尾ひれがつくもの。
奏斗の噂が流れ始めた発端は高等部時代にある。自分に告白をしてきた女子生徒を振ったことで、あることないこと悪意を持ってバラまかれたということらしい。
「俺も断片しか知らないからな。今度情報集めてみるか」
と彼。
「それがいいね」
優紀も特に異論はない。
その噂がどんなものか知るまでは、簡単に誤解が解かれるものと思っていたのだった。
「ほれ、乾杯」
優紀はサイダーの入ったグラスを裕也に手渡され、眉を寄せた。
「何に乾杯?」
まだ二十歳にならない自分たちは飲酒はできない。
気分だけのサイダーに肩を竦めると、
「俺たちの未来に」
と裕也。
「お、おう」
軽くグラスを掲げると、サイダーに口をつけた優紀。
裕也は座ればというように椅子を優紀の方に向けた。素直に腰かける優紀。
「こんな結末になるとは思わなかったな」
と裕也。
自分にとってもこれは想定外だ。抜け駆けはしない約束ではあったが、自分に分があるとは思っていなかった。
更にややこしくした裕也。それを正しい道に直そうとした優紀。
「ま、でも。理人らしいと言えば、らしいのか?」
と裕也。
いつになく饒舌に感じるが、それはこうなったのが嬉しいからとも言えるだろう。
「理人、変わらないね」
と優紀。
「そうか? 俺様っぷりに磨きがかかった気がするが」
「それは、否定できない」
理人は、幼い頃はそれなりに考えを口にするタイプだったと思う。正義感が強く、誰よりも男らしかった。
面倒見がよく、無口な裕也のフォローをしたり、いじめられやすい優紀を庇ったりしていたものだ。それが態度だけで相手を黙らせられるようになった頃には、少し雰囲気は変わっていた。
それでも三人の立ち位置は変わらなかったのかもしれない。
「たまんねえな。理人の魔王っぷり」
いつの間にかテーブルの上にナッツを出し、それを頬張る裕也。
将来、良い酒呑みになりそうだなと思いながら、優紀も手を伸ばす。
「裕也はドMだからな」
「俺がいつ、ドMになったんだよ」
ぷッと吹きだす裕也。今日はとても気分が良いのだろう。
「前からドMじゃん。理人に怒られんの好きみたいだし」
何言ってんだ、ホントというように優紀がそういうと裕也は、
「そうか?」
と不思議そうな顔をする。
「そういや、今日」
「ん?」
急に話を変える裕也。そんなことはよくあることだ。
「白石さんと一緒にいたとか」
「あ。ああ」
白石奏斗は大学部ではとても有名な人物である。奏斗自体は既に大学部を卒業しているが、彼の妹が現在三学年に在籍中だ。つまり優紀たちにとっては二つ上。
「理人が良く思ってないのは、噂のせいか?」
白石奏斗の妹が在籍する三学年には裕也の従兄にあたる『鶴城慎』がおり、そんな関係からも裕也は奏斗をよく知っていた。
優紀にとっても奏斗は知らない仲ではない。
優紀には一学年上と奏斗と同級生に従兄がいる。ちょっと複雑な関係ではあるが、一学年上の従兄の恋人の兄が奏斗と仲が良いのだ。
つまり白石奏斗は優紀と裕也にとってはよく知る人物。
だが理人にとっては良く知らない相手なので『悪い噂』の方を信じてしまっていても不思議はなかった。
「誤解、解かないと面倒なことになりそうだな」
と裕也。
「それは俺も同感だけれど。悪い噂って、具体的にどんなのがあるんだ?」
人の噂には尾ひれがつくもの。
奏斗の噂が流れ始めた発端は高等部時代にある。自分に告白をしてきた女子生徒を振ったことで、あることないこと悪意を持ってバラまかれたということらしい。
「俺も断片しか知らないからな。今度情報集めてみるか」
と彼。
「それがいいね」
優紀も特に異論はない。
その噂がどんなものか知るまでは、簡単に誤解が解かれるものと思っていたのだった。
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