【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ

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教室に戻ろうと廊下を歩いていると、慶也のクラスで慶也が男友達数人に囲まれて話していた。慶也は女子だけでなく、男子からも人気がある。頼り甲斐があって、人を問わず分け隔てなく優しい。モテすぎるが故、妬まれることはあるが、冗談半分のようなものだ。慶也の人格から深く恨まれるようなことはない。

琥珀は慶也の2人の男友達の間に手を差し込み、頭を割り込ませ腕と腕の間からスポンと顔を出す。その隙間に体を無理に割り込ませ、椅子に座る慶也の目の前のポジションを取る。


「こはたん
俺たち今話してたんだけど?邪魔していいんだっけ?」


そのうちの1人、井上楓いのうえかえでが琥珀の首元に腕を回し引き寄せると、琥珀の頰を指で摘んで引っ張る。
慶也の周りには似たもの同士が集まるとでも言うのだろうか友人も顔がいい。

特に楓だけは別格で、慶也ほどとは言えないが容姿端麗でよくモテる。
180センチ以上の身長に滑らかで透明感のある肌。アーモンド型の大きく魅力的な垂れ目。高く通った鼻筋とシャープな顎のラインとうっすらと色づいたピンク色の唇。そんな容姿から一部の女子たちの間では王子と呼ばれていることに本人は気づいていない。

女子にしょっちゅう呼び出しをくらうが、彼女はまだいらないといって断るスタンスだ。
理由は友人間では明かされていなかったが、ただ単にに彼女という存在がめんどくさいのだろうというのが周りが考える彼女を作らない理由だった。


「うるせえ、俺の特等席取るな」

「相変わらずわがまま自己中だね
そんなことしてると慶也に嫌われちゃうよ~」


楓は琥珀の頭を荒っぽく撫でると、琥珀はそれを嫌がり手を払う。


「そう嫌がんないでよ
俺、泣いちゃうよ?」

「お前みたいな腹黒は泣くどころか見下してんだろ」

「あーあ、悲しいな
もっと優しい言葉かけてよ」

「なあ、慶也!今日一緒に帰ろ!」 


楓の言葉を無視して、琥珀は机に両肘を乗せ、前のめりになって慶也に問いかける。琥珀は昨日のことなどすっかり忘れていつもの様子を見せているところに慶也は仕方ないといいたげな顔で微笑みを浮かべる。


「琥珀、楓にあんま意地悪しちゃだめだろ?
俺の大事な友達なんだから」

「大事な友達?本当に???
それより今日一緒に帰ろうぜ!」

「ごめん、今日も美沙と帰る予定なんだ
それに琥珀は部活入ってないから帰り遅いじゃん
あと、何回も言うけど琥珀は俺の彼女なの?」


慶也は琥珀のふわふわの頭を撫でる。
琥珀は頰をぷくっと膨らませる。その途端、昨日のことまで思い出した。


「そうかよ!友達の俺より彼女優先かよ!!
じゃあいいよ!!俺は楓と帰るから!」


琥珀は隣にいた楓の腕を取り手を巻き付ける。
手を巻き付けると、ふんわりといい香りが楓から漂い、楓の制服へと鼻を近づけた。


「なんか楓いい匂いすんな」

「ちょっと!こは??」


胸元や腕へと鼻を寄せる。あまりの近さに楓は動揺していると、額と目元を手のひらで覆われ、腰に腕を回された。そして、そのまま引き寄せられる。
座っていた慶也の膝の間に勢いよく尻をついてしまった。


「慶也、なんだよ!危ないだろうが!」

文句を言おうと、後ろを振り向くと慶也の顔が間近にあって琥珀は頰を赤らめる。


「琥珀、近すぎ
楓が困ってる」

「嘘だ!楓困ってねえよな?」

「こはが可愛くてこまったかも」


慶也の足の間に座りながら、楓が片手で口元を塞ぎ、驚いたように目を見開く。
琥珀は可愛いというワードを聞いて楓のみぞおちに1発打ち込んだ。


「あ、そういやさ、慶也
今日体育ある?」

「体育?なんで?」

「ジャージ忘れた!」


琥珀が無邪気な笑顔で答えると慶也は深いため息をついた。


「お前、それ何回目なの?
わざとやってるの?」

「わざとじゃねえって!!
本当に忘れてんの!」

「たまには他のやつから借りてみれば?
例えば、楓とか?」

「えー楓ー」


あからさまに嫌な顔をすれば、楓に再び頰を引っ張られた。

慶也は琥珀に対して呆れつつもジャージを取り出し、琥珀に渡す。決してわざと忘れているわけではないが好きな人のジャージを着れるというのは憧れと言っても過言ではないだろう。

以前、ジャージを貸してもらった琥珀を見て、自分もジャージを貸してもらおうと慶也に申し出をした女子がいたが、その場にいた琥珀が"慶也のジャージが汚れるだろ!どうせ見せつけたいだけのくせに!!"といったところ口論に発展したため慶也のストレスがまた蓄積されたのは間違いない。

結局、慶也からジャージを借りることに成功した琥珀は上機嫌で着替える。

体格差があるため、ブカブカだが琥珀はそれを気にする様子もない。男子たちがちらちらと琥珀に視線を移して頰を赤らめる。

性格や口調は男ぽいが見た目が美女であることは変わりない。そのため男子たちは口に出さないものの"可愛い"、"美人"などの言葉を頭の中に浮かべている。
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