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護衛旅 野営2 3

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 調理途中だったオウルベアくま汁とオウルベアの赤ワイン煮込みの鍋をインベントリから取り出し、竃の火にかけていると、

「味見係はいりませんか~?」

 いつの間にかテントから顔を出していたオデッタが声を掛けてきた。

「ふぎゃ!(いらないにゃ!)」
「ぷきゃ!(いらないの!)」

「……間に合ってるみたい」

 が、ハクとライムがけんもほろろに断わりを入れる。自分たちの分がなくなると思っているのかな?

「そんなに嫌がらないで、ね? ちょっとだけ」

「にゃ!(ダメにゃ!)」
「ぷ!(ダメ!)」

「そんなぁ……」

 ハクとライムは鳴き声しか出していないのに、しっかりと会話になっているが面白くてつい笑ってしまうと、

「あ、アリスは良いって!」

「みぎゃ!(言っていないにゃ!)」
「ぷきゅ!(いってないの!)」

 OKを出していると思われたので、一応お断りをしておこうかな?

「味見係は十分いるからこれ以上はいらないし、早く寝ないと明日が辛いわよ? 旅の間は何が起こるかわからないんだから、寝られる時に寝ておかないと」

「え~、だって、気になる……」

「オデッタ、アリスさんが困っているよ? アリスさが作ろうとしている料理が新作だったら、君の前では作れない事情も分かるだろう?」

 そろそろ睡魔に襲われ始めているのか、駄々っ子モードになっているオデッタをアルフォンソ(だんな)さんが迎えに来てくれた。けど、

「アリスさんの料理が気になるのは私も一緒だけどね」

 この一言はいらなかったみたい。

「え? うそ! やだ、どうして!?」

 夫妻の参入を嫌がったハクが、2人を結界の中に閉じ込めてしまった。

 いつもの結界なら私たちを閉じ込める形なのに、夫妻を閉じ込める形なのは、2人を護衛する立場だからかな?

 ちゃんと考えてくれていることに感心しながら、夫妻には今から作るものは明日の朝に出すと約束をして、さっさと寝るように伝える。 しぶしぶとテントに戻った夫妻だけど、

「えっ!? アリス!? ちゃんとそこにいるわよね!?」

「え? いるでしょ?」

 振り返ったオデッタが困惑の声をあげた。アルフォンソさんも少し戸惑っているらしく、目線があちこちに泳いでいる。

 どうしたのかと思ったら、

(向こうからはこっちが見えないのにゃ! あと十秒で音と香りも遮断するのにゃ!)

 ハクの仕業だった。

 調理の音や香りが睡眠の妨げになりそうだから、気を利かせてくれたみたいだね。

 急いでハクの言葉を伝えると、2人は残念そうな表情を浮かべながらも素直にテントに入ってくれた。

 それにしても、ハク? 依頼人が相手でも手加減ないね? 頼もしいけど!











 料理の仕上げと言ってもそれほど面倒な過程はない。両方とも下処理は終わっているからね!

 だから熊汁は野菜を入れてぐつぐつ煮込んでから調味料で味を調えるだけだし、赤ワイン煮込みはつけ汁から取り出した肉をローストして野菜をしっかりと炒めてから後はひたすらぐつぐつと煮込むだけ。

 途中で灰汁をとる必要はあるけど、基本は竃と炎が頑張ってくれる。

 途中で眠ってしまったライムをスレイとニールに預けて、私はのんびりとハクとおしゃべりしながらたまに鍋を覗き込む簡単なお仕事。たまにはハクと2人で夜更かしするのも悪くないな、と思っていたのに、

「45分くらい経ったら起こすから、さっさと寝るのにゃ!」

 保護者モードに入ったハクにテントに追いやられてしまう。

 ハクだけを起こしておくなんてできないと言っても、「普段の夜番と同じにゃ」と言われては何も言い返せなくて、渋々とテントに入り、布団代わりの毛皮に包まった。






 自分で思っていた以上に私は疲れていたようで、毛皮に包まった後の記憶はほとんどない。目を閉じた次の瞬間にはハクに起こしてもらった感じだ。

 鍋の中を確認して、今度こそ!と目を擦っても、ハクにテントに追いやられてはすぐに眠りに落ちてしまい……。

 熊鍋と赤ワイン煮込みが無事に完成したのは、偏にハクのお陰です!

 最後は竃ごとインベントリに収納し、テントに戻るもの面倒でその場でおやすみなさいと転がると、朝には両側にニールとスレイのぬくぬくの体温、体の下にはライムのぷるぷるボディ、首元にはふわふわぬくぬくのハクの体という、最高のおふとんでの目覚めとなった。

 うちの従魔たちって頼りになる上に、本当に優しいよね?

 朝ごはん、いっぱいいっぱい出しちゃうぞ!
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