女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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初めての馬車旅 33

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 ペーター君の期待に満ちた視線もあり、ディエゴも「少しの時間なら大丈夫だから是非に」と言うので、ここで店を開くことにした。

 商品は【クリーン】と食品のみだけど、ペーター君親子以外の人たちも楽しそうにメニュー表を見ている。

 ……イザックまでもが真剣にメニュー表を見ているのは不思議だけど。 

 盗賊たちの装備とハーピー、それと食料品でアイテムボックスがパンパンだって言ってなかった? 

 ああ、私が座っていたスペースに傷まないものを出すの? で、空いた所に何を入れるつもりなのかなぁ?

 みんなの様子を見ながらテーブルを出したり、計算用の安い紙を出したりしていると、ふとこちらを向いた商人さんがびっくりしたような顔で固まった。

 どうしたのかと思って見ていると、震える指でテーブルを指差す。

「?」

 テーブルの上にはメニューと計算用紙。 食料はまだ出していないし、特別おかしなところはみあたらない。

「どうしたの?」

「それは、商業ギルドの公認看板では!?」

 商人さんはテーブルの端に立てかけておいた看板に気が付いたようだ。  

「それが何か?」

<商人>なら、商業ギルドの公認看板なんて珍しくはないだろうに、何をそんなに驚いているのか。 不思議に思いながら次の言葉を待っていると、

「お嬢さんはその看板の意味を知っていますか? そんなに無造作に扱うものではないですし、屋台でその看板を掲げているのを見るのは初めてです!」

 目を丸くしたまま「しかも2種類……」と呟く商人さんが言うには、商業ギルドの公認看板を所持しているのは大きな商店や飲食店。『店舗』を複数所持している商売人がほとんどだそうだ。 

 私のように手持ちの商品だけで小さく商いをする人間に与えられることは本来ならあり得ないことらしい。

「お嬢さんはどちらの店の…?」

 だから私の実力ではなく、家から預かっている物だと思われても仕方がないようだ。 ……面倒だから訂正しないでいいや。

 質問には答えずに、にっこりと笑って、

「何にします?」

 と聞けば、商人さんは何かを言いたそうな顔をしながら、

「……少し考えます」

 メニュー表を持ったまま少し離れてくれた。

「…3流だな。見た目だけで判断して、今まで食った飯の価値に気が付かないのか?」

 口元を隠しながら小さく呟いたイザックの声は、真横にいた私にしか聞こえていないと信じたい。 ……看板に刻印されている私の名前をどう解釈しているのかは、私も気になるんだけどね?





 ペーター君とおしゃべりをしている間に、皆さんの買いたいものが決まったようだ。

 それぞれが今夜のごはんや明日の分のスープや果物とクッキーを一袋だけ買ってくれる中、商人さんだけは2~3日では食べきれない量を注文する。

「当店は小売の店なので、仕入れはお断りしております」

 転売目的としか思えなかったのでお断りしても、「同業のよしみで…」と食い下がってくる。 でも、

「アリスはこれから森へ行くんだ。 もうすぐ街へ着く俺たちよりも、食料が必要だってわかるだろ?」
「お客さん、そんなに買ってどこに置く気だ? 馬車の中で食い物が腐るのは困るぞ」

 イザックとディエゴが止めてくれた。

 今回渡したメニューには、クッキー以外日持ちしないものばかりを載せていたんだけどね。まさか大量に買おうとするとは思わなかったよ。 商業ギルドの看板のブランド力に感心するばかりだ。

 仕入れを諦めて今夜と明日の分だけを買ってくれた商人さんを最後に、飲食店の看板をしまう。

 サルとビビアナは【クリーン】だけを購入して、ごはんは買わなかった。 イザックが言った❝危機管理❞を守っているようだ。 

 ……街に着くまでの間、3人がうまくいくことを祈ろう。






 メニューを真剣な顔で見ていたのに私を気遣って買おうとはしなかったイザックには、生キャラメルとドライアップルをこっそりと押し付けた。

「街まで、気を付けてね!」

「ああ。アリスこそ気を付けろよ!  
 ……食いもんありがとうな。大丈夫か?」

 ジャスパーで私が手に入れた大量の食料や一緒に作った料理の量を見ていたのに、それでも心配をしてくれるイザックに感謝の微笑みを浮かべる。

「大丈夫だよ。これから食料を手に入れに行くんだから! イザックが手伝ってくれたおかげで、作り置きもいっぱいあるしね!」

 商人さん達には聞こえないように、こっそりと言って笑い合う。

「本当に、いろいろとありがとう!」

「俺の方こそ世話になった。 食いもんも、奴らへの見舞いも……。 この感謝は忘れない。ありがとうな!!」

「それは忘れていいよ~。 ……じゃあ、行くね? 
 ハク、ライム、おいで!」

 イザックの肩の上でお別れの愛想を振りまいていた2匹に声をかけて1歩下がると、

「にゃん!」
「ぷきゃ!」

 可愛らしい鳴き声と同時に、私の腕の中に飛び込んでくる。

 名残を惜しんでいるときりがないので、そろそろ行かないと。

「じゃあ、行くね!」

「ああ、元気でな!」

 イザックに別れを告げ、みんなとも別れの挨拶を交わす。

「飯、美味かったぞ~! ありがとうな~!」
「お姉ちゃん! けがしないでね!」
「気を付けてな~!! ちゃんと街に来いよ!」

「みんなも気を付けてね! また、どこかで!」

 手を振って背中を向けると、

「アリス! …悪かったな!」

 最後にサルの声が聞こえた。

 思わず振り返ると、気まずそうにしながらも、きちんとこちらを見ているサルと目が合う。

「……街に着くまでの間、イザックからのお説教を真面目に聞いたら許してあげる! イザック、厳しいのをお願いしてもいい?」

「ああ、任せろ!
 サル、おまえがアリスを呼び捨てにするな!! アリスだ。アリス!」

 早速始まった私の代理の憂さ晴らしおせっきょうを背中に、今度こそ歩き出す。

 さて、久しぶりの3人(?)旅だ。 気を引き締めて行かないとね!
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