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ポーションの空ビン入手♪

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「43本、これで全部だ」

 目の前に並んだ空ビンは、オースティンさんが事故に遭ってから私に会うまでに使ったポーションのビンだ。中級ポーションと初級ポーション併せて53本。これだけの本数を使ってオースティンさんの命を繋いできた。

「上級は持ってなかったんですね?」

 何となく、上級ポーションも持っているものだと思っていたんだけど、

「ああ、手持ちの上級を使い切った後の事故だったんだ」

 ……随分とタイミングが悪かったらしい。悔しかっただろうな。

「中級と初級では、ビンの値段も違うんですか?」

「いや、一緒だ。ビンの質に大した変わりはないからな」

「では、1本いくらで売ってくれますか?」

「こんなモンで金なんか取れるか」

 ただでくれようとするオスカーさんを、『明日の朝ごはんとお弁当のお金を受け取らないぞ!』と説得して、

「1本500メレが53本なので、26,500メレですね」

 全部のビンを買い取らせてもらった。 これで、売り物が増える♪

 喜んでいる私の目の前に薪や木の枝が詰まれて、その上に焼き網が1枚乗せられた。

「これは受け取ってくれ」

 当然“買取り”だ、と気を引き締めると、

「薪は俺たちの飯を作るのに使われた分だ。こういうものは出し合うのが野営の際のルールなんだよ。渡すのが遅くなってすまないな。 これから朝方まで使う分は引いておいた」

 真面目な顔でオスカーさんが言い、後ろでみんなが頷いている。 食事の支度に使った分には多過ぎるけど…。

「あ~、飯で使った分より多いとか思ってるな? たまにはジジイ達の男を立ててくれ! 網は可愛い従魔たちへのプレゼントだとさ」

「んにゃ~ん♪」
「ぷきゅきゅ~♪」

 オスカーさんの説明に私が納得する前に、従魔たちが『おじちゃん』にお礼の挨拶に行ってしまった。

「……随分と賢い従魔たちだな?」

「……ええ、食欲に素直なんです。 皆さん、ありがとうございます! 薪も焼き網もありがたくいただきます♪」

 お礼を言うと、

「明日はちゃんと『ぼったくり飯屋』を開店してくれよ? 商売人に前言撤回はなしだぜ?」

 笑いながら釘をさされた。 鋭いな…。 仕方がないから笑っておいた。

「ええ、明日を楽しみにしていてください? 身包み剥いでやりますから♪」

 さて、何を用意しようかな?





 オスカーさん達は食後のカモミールティーを飲みながら、焚き火の周りで談笑中だ。 お昼に会った時とは違い、寛いだ表情で笑っている。 

 お腹も満ちたし、カモミールティーのリラックス効果で、そろそろ疲れが出る頃だろう。

(オスカーさん達に仮眠を勧めようと思うんだけど、警戒をハクに任せてもいいかな?)

(任せるにゃ!)

 ハクもあっさりと了承してくれたので、オスカーさん達に睡眠を勧めてみた。

 最初は約束を違える気は無いと拒否されたが、私がこれからすることを済ませて、寝る前には必ず起こすと約束をするとやっと頷いてくれる。

 寝ると決めた皆さんの行動は早く、寝ずの番の順番と時間の打ち合わせが済むやすぐに寝入ってしまい、辺りには大きないびきが響いている。

 ……重体のオースティンさんを運ぶのに強行軍だったみたいだし、体も、精神も疲れていて当たり前だ。

 起こさないように、焚き火とは少し離れたところにかまどと解体台さぎょうだいを出した。

「何をするのにゃ?」

「おやつ作り。この周りに【防塵結界】をお願いね?」

「おやつ! わかったにゃ♪」

 まずはお鍋を空けないと…。 大鍋の中身をインベントリに直接入れて鍋を空け、煮オークと煮ボアを作る。同じ鍋で作るから、肉の味で違いが出るかな? ジャーキー向きなのはどっちだろう?

 煮込んでいる間に、以前作っておいた塩むすびの残り4セットを取り出す。1つが2個なので合計8個。今までは2個で1セットにしていたけど、オスカーさん達のお弁当には足りないかもしれない。1人3個として15個。足りない分は大皿のおむすびセットから塩むすびを抜いて足した。

 塩むすびだけだと飽きるから、2個は焼きおむすびにしよう。腐り難くなるし。

 貰った焼き網がさっそく大活躍だ♪

 お弁当用の唐揚げも、今のうちに冷ましておこうか。

 明日の朝ごはんの具入りのおむすびは、今ある大皿1枚分では心もとない。塩むすびを抜いた分を、肉団子むすびを作って足しておく。 

 インベントリにそのまま入れたご飯は入れた時のままの形で出てくるから、次からは考えて入れないとなぁ…。1人反省をしていると、ハクが問題点を教えてくれた。

「それ、全部食べちゃうのにゃ?」

「…やっぱり、全部なくなるよね?」

 今日の残り1回分の複製で、大皿ごとおむすびを複製しておく。先にマルゴさんのパンを複製したかったんだけどなぁ。仕方がない。 

 朝は少し冷えるから温かいスープでもある方が良いかと思い、リクエストを聞くと、

「オークがゴロゴロのスープが食べたいにゃ!」

 やっぱりハクは、“肉”のスープをご希望だった。

「お野菜たくさん入れるね?」

「やさい、おいしい」

 ハクは微妙な顔になったけど、ライムは文句なさそうだったので、オーク肉ゴロゴロの野菜スープを作る。治療の際に貰った野菜がどんどん減っていく。 早くマルゴさんやルベンさんの畑から貰った野菜を複製しないとな…。

「出来ることがなくなった…」

 後はじっくりと火にかけるだけで、味が染みるまで暇になってしまった。何かないかとハクに聞いてみる。

「薬を作るにゃ!」

「そうだねぇ。 ビンも増えたし、販売用の薬をストックしておこうか!」

 初級ポーション、解毒薬、増血薬を作った。 他にはどんな薬があるのかな~?

「ありす、おなべ」

「うん、ありがとう!」

 ライムの指摘で鍋を覗いて見ると、煮オーク&煮ボアの煮汁が半分以下になっていた。 お肉を休ませている間に、もう一品…。 ボアバラ大根でも作ろうかな?

 お肉を鍋からお皿に移して振り返ると、

「美味そうだな」

 腕を組んで立っているオスカーさんがいた。

「………っ!!」

 とっさに自分の口を塞がないと、大声で悲鳴を上げるところだった。 気配はどこに置いて来たの!?

「まだ、寝ないのか?」

「オスカーさんこそ、早起きですね?」

「美味そうな匂いで目が覚めちまったよ」

 ああ、そうか。防塵結界は匂いを通すのか。 ん? 一応結界なのに、埃より大きい人間は通れるの? ハクの結界ってどうなってるの!?  神獣の能力は計り知れないな…。

「あれだけ食べて、まだお腹が空いてますか!?」

 驚きながら聞いてみる。

「いや、腹はいっぱいなんだが、美味そうな匂いがしてなぁ…」

 照れ臭そうに笑う姿は可愛いけど、早い話、オスカーさんも立派な“食いしん坊”ってだけだ。

「つまみ食いをすると、オスカーさんのお弁当はおかず抜きです」

 冷ましていたから揚げを至近距離でみつめていたので、忠告しておく。

「し、してないぞ! つまみ食いなんて、しないぞ!」

 否定をしているが、声を掛けた時に“びくっ”ってしていたのを見逃してはいない。

 お弁当用に冷ましておいたおむすびとから揚げをインベントリにしまうと、とっても残念そうな溜息が3つ聞こえた。

 2つはハクとライム。もう1つは、やっぱりオスカーさんだった。

「味見、しますか?」

 人差し指を唇の前で立てながら声を落として聞いてみると、押し殺していても十分に嬉しそうな返事が3つ聞こえた。

 大根を切りながら様子を見ていると、肉きゅうで口元を押さえているハク、無言で伸び縮みしているライム、こぶしを握り締めたと思ったら、空に向かって突き上げているオスカーさんが見えた。

 どうやら、唐揚げは気に入ってもらえたようだ♪

 おかわりをねだっているような雰囲気には気が付かない振りをしながら、ボアバラ大根の調理に集中した。
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