96 / 754
1番嫌いな魔物、お気に入りへ昇格
しおりを挟む「にゃおん♪(オークにゃ♪)」
「オークだな」
「ぷ!(おーく!)」
「オークですねぇ」
オーク対ボアの干し肉勝負は、審査員満場一致でオーク肉の勝利だった。
オーク肉で作る干し肉は、ボア肉の干し肉より1段上の旨みがある。飲み込むのが少しだけ惜しく感じたほどだ。
このままだと、私を含めた肉好きに食べ尽くされるかも!?と危惧して、残りの干し肉をインベントリに放り込んだ。
「嬢ちゃん、もう一枚!」
「にゃにゃ~ん!!(おかわりにゃ~!)」
「きゅう~♪(おかわり~♪)」
目の前から無くなっても諦めずにおねだりをしているが、ここで負けたら明日の分が無くなる!
聞こえない振り、見えない振りを続けた。
ハク、ライム、オスカーさんのおねだりの声で起きてしまった男性陣の視線なんて、私は何も感じていないんだ…!!
ボアバラ大根にも味が染みたので、お鍋を始め、出していたものを全てインベントリに収納して振り返る。
何かを訴えているような視線は全てスルーして、
「では、私たちはそろそろ休もうと思います。 皆さん、後はよろしくお願いしますね! おやすみなさい♪」
「あ、ああ。おやすみ…」
「おやすみ、嬢ちゃん」
にっこり笑って、少し離れた所に寝床を用意する。 拗ねている2匹もちゃんと付いて来たので、
(偉いね~! また明日、美味しく食べよう?)
力いっぱいモフりながら説得したらしぶしぶ納得してくれ、それぞれに【クリーン】とおやすみのキスをしたら、やっと機嫌を直してくれた。
やれやれ。おやすみ…^^
「避けてみなっ!」
「ギャッ…!!」
騒がしさに目を開けると、ハーピーが倒されたところだった。
(おはよう、起きたのにゃ?)
(うん、おはよ…)
(ありす、おはよ!)
うん、2匹とも無事だな。 よかった。
「嬢ちゃん、起こしちまったか? すまんな!」
オスカーさんがハーピーを仕留めた所から大声で謝ってくれたけど、焚き火の周りではまだ寝ている人もいるから、大きく手を振って挨拶にしておく。
「アリスさん、ごめんな。まだ夜明けまで少し時間はあるけど…」
「大丈夫です。もう十分に眠れたので」
焚き火の側にいたオースティンさんも謝ってくれたが、何の問題もない。 眠りすぎて、少し頭の働きが悪いくらいだ。
寝起きの【クリーン】を掛けながら従魔2匹を抱っこしてくつろいでいると、徐々に空の色が明るくなってきた。
今日も綺麗だな~。
暢気に景色に見入っていると、
「朝だ! 野郎共起きやがれっ! 来るぞっ!!」
オスカーさんの怒鳴り声が辺りに響いた。
(アリス!)
(うん。【ウインドカッタ~】)
寝起きのせいか、軌道がずれて胴体を切断してしまったが、まあ、問題ないな。素材部分に傷はないはずだ。
マップの赤ポイントはあと6つ。その内5つがハーピーで残り1つがスライムだ。
「あ、やられた?」
スライムのポイントにハーピーが1羽近づいて行き、スライムのポイントが消えた。 どうやら狩られてしまったらしい。
(アリス! から揚げにゃ! から揚げをいっぱい狩るのにゃ!)
ハクの中ではハーピー=から揚げになったようだ。 照り焼きとかも美味しいよ?
「ハク、ライムを守ってて!」
のんびりしていてハーピーを逃がしたら、から揚げを気に入ったハクから叱られそうだ。本気で狩りに行こう。
<鴉>を抜きながら、1番近くのハーピーに【ウインドカッター】を飛ばす。後はハクが受け止めてくれることを確信しながら、次のハーピーに狙いを定める。
「っ!」
視線が合ったと思った瞬間に、風の刃が飛んで来るのを感じたので、とっさに<鴉>で断ち切った。
(魔法まで切れた!?)
<鴉>の性能に驚いたのは一瞬で、すぐさま私からも【ウインドカッター】をお返しする。 今度はきっちり首を刈り取った!
マップから一番遠くの赤ポイントが2つ消えたので、消えた方角を見てみると、オスカーさんが仕留めていた。
『おじちゃん』達はバラバラに散って警戒をしている。攻撃が目撃じゃなくて、回避を意識しているらしい。
「【ウインドカッター】!」
魔力の膨らみを感じた方へウインドカッターを飛ばしたが、発動準備の整っていたハーピーの魔法と相殺されてしまった。
最後に残ったハーピーは、空中で動きを止めるのは不利だと悟ったのか無軌道に飛んで私に向かって来たが、ただそれだけだ。 <鴉>の一振りで胴体が斜めにずれた。
【マップ】にはもう魔物のポイントはない。ライムとハクの無事を確認してから、ハーピーの回収に向かった。
145
お気に入りに追加
7,544
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!
akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。
そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。
※コメディ寄りです。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる