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第一章

王太子と私

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珀斗王太子が去ってから、どのくらいの時間が経っただろうか。



私は、泣き疲れ、眠気も強く感じるのに、ただ茫然(ぼうぜん)として、ベッドに横たわったままでいた。


王太子が去った後、すぐに担当官が私の様子を確認しに来たが、最悪の事態は免れたことが分かると、深く追及することもなく、退室していった。






逃げたいのに、逃げられない。また王太子が来て、本当に襲われるかもしれない。


そして、脳裏に焼き付いた、王太子の人間味のない冷め切った表情。


心の底から恐ろしいと感じた。





王太子は、その顔立ちの良さや、日本陸軍の将官としての功績で、日本中の注目を集めてる。


テレビでよく見ていた王太子は、職業柄か、笑顔の印象はなかったものの、特に悪い印象は持っていなかった。



ただ、王太子を目の前にすると、その印象が、空想だったと思い知らされた。





気づけば、朝日が空に登り始め、カーテンの隙間から微かな明かりが差し込んできたのが確認できた。


これから先の人生を私は生きていけるのか、朝が来ることすら、怖くなった。









ベッドサイドに置かれていたアンティークの置き時計は朝の6時を指していた。


私は、もう眠れないと思い、ベッドから出てダイニングチェアに座り、窓越しに外の様子を伺っていた。



すると、1人の男性が歩いており、外からこの建物に入ってくる様子が見えた。





「王子、このお部屋には立ち入れません!」



「国賓級のお客様なんだろ?王子なんだから挨拶ぐらいさせてよ。」



まもなく、私が泊まる部屋のドアの前から、会話が聞こえてきた。


この部屋に入りたがっている様子で、私も身構えた。


王子というからには、この国には2人しかいない。王太子でないということは、第二王子の瑛斗王子かと、推測する。




ただ、外の会話を聞く限りでは、外で待機するSPは入室を拒否しているようだ。



しかし、会話が少し途切れて、しばらくすると、ドアがノックされた。


「嬉野様、瑛斗第二王子がお越しです。ドアをお開けして良いでしょうか。」


あれだけ拒否していたはずなのに、一転して、私に入室して良いかと聞かれた。


一瞬躊躇(ちゅうちょ)したが、二度もお会いしたことがある瑛斗第二王子であり、強く警戒する必要もないと判断した。


ただ、着替えもできていない状態だったので、少し時間をおいて欲しいと頼んだ。


私は、昨日と同じ服に着替え、顔を洗い、歯磨きまで済ませた。


そして約30分後に、瑛斗王子と接見した。






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