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やさしい殺し方で2
しおりを挟むリュウくんといると、なんだか傷つけたくなってしまう。
弱いくせに、脆いくせに、それでも震える足で立ち続けようとする意志の強さ。
無様なまでに心を砕かれて、それでも俺を愛そうとするしたたかさ。
それが可愛くて、愛しくてたまらない。
そんな綺麗で真っ直ぐな彼を、傷つけて跪かせて、取り返しのつかないほどぶっ壊してしまいたくなる。
「それはどうかな。でもひとつだけ言えることは、俺は、リュウくんを愛してるよ、心から」
「そりゃあ……俺も、愛してますけど」
「じゃあいいんじゃない? 愛する相手になら、殺されたって」
にっこりと笑ってそう言った。それを見て、彼はわずかに眉をひそめる。
俺の言葉には、常に罠が張り巡らされている。
彼はそれをかわすこともあれば、引っかかることももちろんある。
けれどそのどれもが実に面白くて、俺はいつまでたってもこの遊びをやめられそうにない。
いつまでもふざけている俺に対し、リュウくんは瞳にはっきりと怒りの炎を宿らせた。
「それだけは嫌です。黒瀬さんの手にかけられるのだけは、絶っ対に嫌だ」
あまりにも嫌悪感むき出しで言うから、俺は思わず吹き出してしまった。
おかしいな……これじゃあやっぱり、愛されているのか憎まれているのか、よく分からない。
まあ事実上付き合っているんだから、俺たちは相思相愛に違いないんだろう。
だから、正解。と、心の中でつぶやいた。
ここでもしリュウくんが「黒瀬さんになら殺されてもいい」なんてほざいたとしたら。俺はもう彼への興味を失ってしまったかもしれない。
君は、俺のことなんて信じなくていいんだ。
疑って、軽蔑して、恐れて、それでもどうしようもなく好きで……
そんな葛藤の中で生きているリュウくんのことが、俺は愛しいんだから。
だって俺のことを好きな君は、いくら傷つけられても立ち上がって、再び俺を愛そうとするだろう?
「だいたい、なんで殺そうとするんですか。俺、こんなの趣味じゃないし」
「好きすぎてさ、いじわるしたくなっちゃうんだよ。わかんない?」
「だから限度超えてますってそれ!……俺だって、黒瀬さんにもっとやさしく愛されたいのに」
伏し目がちなリュウくんは、やっと本音を言えたみたいだ。
まったく甘えるのが下手だなあ。
それにしても、俺の精一杯の愛は、どうやら届いていないみたい。
俺は傷ついた君が大好きで、だから何度も殺しかけてしまっているというのに。
分かってないんだから。
分かってくれなくてもいいんだけど。
そんな君のことを、俺が愛してあげよう。
いつか本当に殺してしまうようなことがあったとしたら、そのときは、やさしい殺し方で。
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