上 下
63 / 107
2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第47話 奇妙で野暮な忍び女子 → こんな若くて可愛らしい女性に、俺は(沙織)

しおりを挟む
ー バガン ゲーム召喚中 シーン名称:ポッパサバイバル クリア率0.001% ー

 与えられた装備:サタンのかね
 カメラアプリミッション:夢売草ゆめうりぐさを認識させよ
 クリア条件:解放される条件は、食べ物ゲットと、カメラアプリミッションクリアの二つを満たすこと


「帝国の命運めいうんがかかっている。」 
 ナディアが向ける銃口に物ともせず、帝は静かに言った。
「もちろん全てを話そう。」

「帝」
「沙織」

 私たちは見つめあった。
 できれば、私はこの瞬間に帝の胸に飛び込みたい気持ちでいっぱいになってしまった。帝のお気持ちは分からなかったけれども。私は銃口を突きつけられている状況では、帝をおしたい申し上げているという気持ちであふれた。
 帝の眼差まなざしはうっとりするほどこの上なく優しかった。


「た、大変申し訳ございませんでした!」 
 突然、颯介が大袈裟おおげさに両手をあげてひれ伏した。そのまま土下座どげざしている。

 私と帝は甘美かんびな雰囲気から一転した。ぎょっとして、断崖絶壁だんがいぜっぺきの間近で土下座をしている颯介を見た。

「これまでプテラが人とは知らず、数々のご無礼ぶれいをしてしまいました。中の人がこんな可愛い若い女性だったなんて。」

 颯介が土下座どげざしたまま頭を下げている。
 ナディアは銃口を向けたまま、微動びどうだにしない。

「颯介、妙なまねはやめなさい。」
「姉さん、プテラが人だと知っていたら、俺、あんなにプテラに無理をさせなかった!」
「こんなに可愛らしくて素敵な女性じゃないですかっ!」
「こんな若くて可愛らしい女性に、俺は、時には何人も彼女に乗せてしまった。かなりの時間、空を飛ばせてしまっていたのです!」

 颯介はここまで一気に言うと、私に向かって平身低頭へいしんていとうの姿勢で謝った。

「大変申し訳ございませんでした!」

「いえ、大丈夫です。元はと言えば勘違かんちがいから起きたことですし。」
「そもそも私が奇妙で野暮やぼな忍びなので、こういうことが起きてしまったのかと思います。」
 
 私はおずおずと言った。

「いや。沙織は別に奇妙で野暮やぼではないと思う。」
 帝は優しい口調で言った。

「忍びとおっしゃいましたか?でも、お二人は伊賀いがの忍びにも甲賀こうがの忍びにも見えない。」
 颯介が私と帝を不思議そうな様子で見て言った。

伊賀いがとも甲賀こうがとも、流派の違う忍びでございます。」

「待って?」
「え?ちょっと待って?」
「一体、どこから?あなたはどこから私のプテラでした?」

 颯介がまた興奮こうふんしてきたような様子で聞いてきた。

「一番最初に出会ったときからです。あの日私はたまたまむしゃくしゃしていたのです。」
「たまたま仕事終わりに趣味のプテラノドンになりきる術で変身していたら、あなたが現れました。そして、私を本物のプテラノドンと勘違いしたのです。」
 私は颯介の質問に答えた。

「カメラアプリ撮影会さつえいかい?」
「はい。あなたは何かそういうことを話してらっしゃいました。」
「あー、ということは最初の出会いからあなただったんですね。」

 颯介は「わかった」とうなずいたが、「やっばい」と小さく言った。
「ちょっと待って?だって、数億年先の地球は太古たいこの地球と同じくになっていました。そこで私は初めてプテラに会ったんだ!」
「となるとですよ?あなたは、数億年先の地球に住んでいることになりますね?」
「今、あなたはと言った。」
「数億年先の地球は文明があるんですね?そうか、。」
「わーお!」
「あなたは、数億年先の地球で文明を開花させている『忍者のかた』ということですね?だから、伊賀いがとも甲賀こうがとも違うと。」
「なんてこったい!」
 颯介は興奮状態こうふんじょうたいで一人でまくし立てて、一人で納得してまた興奮した。

 そう、このゲームを生き抜けることを実現してしまった人間はこの颯介だ。この颯介だからなしえたことだ。

「その通りです。」
 私も素直に当時のことを思い出しながら認めた。

「私のプテラは2人いるということ?」
 ナディアは鋭い質問をしてきた。そうだ。最初は五右衛門ごえもんさんで、最近は帝がナディアのプテラになった。ナディアはプテラが最近違うことに気づいていたのだ。

「そうです。」
「最近は、私があなたのプテラを担当していました。」
 帝がナディアにうなずいた。

「あんたたちは『未来人』ということですね。」
 颯介が呆然ぼうぜんとしたようにつぶやいた。
「未来の地球は、確かに太古の昔に絶滅したはずの恐竜で溢れていた。」
「そこには忍者もいた。未来の地球は絶滅したはずの恐竜と忍者の国になっていた。そういうふざけたところで(いや、ふざけてと言って失礼)、僕は最初にプテラに会った。」
「未来の地球が太古に絶滅したはずの恐竜となぜか忍者の国になっていた。それを『龍者の国』と僕らはゲームの中で呼んでいたんだ。」

 颯介は同じ話を繰り返した。
そして「気持ち悪くなってきた」と小さくつぶやいた。

「整理すると、未来の地球に一番最初にワープした時、颯介が偶然にも、『あなたを本物のプテラノドンと勘違いをした』わけね。」
 ナディアが言った。
「あなたにとっては本当に意図しない偶然で、いつものように仕事帰りにをしただけでこうなったと。」
 ナディアは続けた。

「そうです。私は、あなたたちが生きる二十一世の地球より遥か未来の地球に住む忍びです。最初は本当に偶然だったのです。」
 私は静かに言った。
「私は、その未来の地球を統治とうちする帝国の帝です。」
 帝も静かに口を開いた。

「み、み、み、みかど?」
「あなた、帝なの?」
 颯介とナディは、二人とも狼狽うろたえた。

「話が大き過ぎて受け止めきれない!」
 颯介は大きく深呼吸して落ち着こうとしたけれども、やはり無理だったようで、困惑こんわくした様子で言った。

「あなたは、本来人間が生き延びることができないはずの禁断のゲームで生き延びたのだ。そして、未来の地球にワープした。」
 帝が淡々たんたんと颯介に言った。

「そこで偶然、若い忍び女子がなりきりる術で趣味のプテラノドンに変身したタイミングで出会ってしまった。そこから勘違いが始まった。」
「本当はその偶然がなければ、沙織があなたのプテラにならなければ、おそらくあなたはゲームをクリアできていないはずだ。あなたがゲームを生き延びたのは、でもある。」
 帝がそこまで言うと、ナディアは銃を下げた。

「で、ゲームの中ではこちらの若くて可愛らしい忍びさんが、颯介と紐づけられてしまった。そのため、颯介がゲームに参加して助けを求めるたびにプテラとして召喚されたというわけね?」
 ナディがにわかには信じがたい話をされていると言った口ぶりで、言った。

「そうなります。」
 帝が言った。


 帝は私を優しくき寄せた。私の顔をのぞきこみ、うなずいた。
「私は沙織を助けて欲しいとお願いしたいのです。」
「私と沙織はねらわれてしまった。あなたたちの助けが必要だ。」

 帝はナディアと颯介にそう言って頭を下げた。

  断崖絶壁だんがいぜっぺきの上で、命をけた取引が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

Betrayed Heroes -裏切られし勇者の末裔は腐敗世界を破壊し叛く-

砂糖かえで
ファンタジー
これは救ったはずの世界に裏切られた勇者達の物語。 かつて異世界より来訪した者達が魔族による大災厄から世界を救ったという。 彼らは勇者と呼ばれ、比類なき圧倒的な力を有していた。 民から大いに崇め奉られた彼らだが、たった1つの言葉でそれは儚くも崩れ去ることになる。 世界を恐怖に陥れた大災厄の主が実は勇者達と同じ異世界から来訪したというのだ。 その事実により勇者とその一族は救ったはずの民から迫害を受けて追放されてしまった。 それから数百年の時を経て、とある小さな町に少女が訪れた。 その少女はかつて勇者の一族を苦しめた大いなる渦の中心にいた大国の王女。 彼女はその町に住むという勇者の一族の末裔を訪ねてきたのだ。 そして出会った末裔に向かってなんとこう言った。「もう一度世界を救ってほしい」と。 裏切った側から差し出された身勝手な頼みに、末裔は憎悪に満ちた目を返した。 過去の血塗られた因縁。裏切った者と裏切られた者。 歴史の痕跡を辿りながら腐敗した世界を傍若無人に駆け巡り、気に食わない不条理を破壊していく。 異世界からの来訪者が救世した後の世界を描いたダークファンタジー開幕。 ※暴力的な描写が多いので苦手な方はご注意ください。小説家になろうにも掲載しています。

移転した俺は欲しい物が思えば手に入る能力でスローライフするという計画を立てる

みなと劉
ファンタジー
「世界広しといえども転移そうそう池にポチャンと落ちるのは俺くらいなもんよ!」 濡れた身体を池から出してこれからどうしようと思い 「あー、薪があればな」 と思ったら 薪が出てきた。 「はい?……火があればな」 薪に火がついた。 「うわ!?」 どういうことだ? どうやら俺の能力は欲しいと思った事や願ったことが叶う能力の様だった。 これはいいと思い俺はこの能力を使ってスローライフを送る計画を立てるのであった。

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

猪本夜
ファンタジー
2024/2/29……3巻刊行記念 番外編SS更新しました 2023/4/26……2巻刊行記念 番外編SS更新しました ※1巻 & 2巻 & 3巻 販売中です! 殺されたら、前世の記憶を持ったまま末っ子公爵令嬢の赤ちゃんに異世界転生したミリディアナ(愛称ミリィ)は、兄たちの末っ子妹への溺愛が止まらず、すくすく成長していく。 前世で殺された悪夢を見ているうちに、現世でも命が狙われていることに気づいてしまう。 ミリィを狙う相手はどこにいるのか。現世では死を回避できるのか。 兄が増えたり、誘拐されたり、両親に愛されたり、恋愛したり、ストーカーしたり、学園に通ったり、求婚されたり、兄の恋愛に絡んだりしつつ、多種多様な兄たちに甘えながら大人になっていくお話。 幼少期から惚れっぽく恋愛に積極的で人とはズレた恋愛観を持つミリィに兄たちは動揺し、知らぬうちに恋心の相手を兄たちに潰されているのも気づかず今日もミリィはのほほんと兄に甘えるのだ。 今では当たり前のものがない時代、前世の知識を駆使し兄に頼んでいろんなものを開発中。 甘えたいブラコン妹と甘やかしたいシスコン兄たちの日常。 基本はミリィ(主人公)視点、主人公以外の視点は記載しております。 【完結:211話は本編の最終話、続編は9話が最終話、番外編は3話が最終話です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!】 ※書籍化に伴い、現在本編と続編は全て取り下げとなっておりますので、ご了承くださいませ。

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠
ファンタジー
 最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。  彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。  残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。  最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。  そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。  彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。  人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。  彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。  『カクヨム』  2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。  2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。  『小説家になろう』  2024.9『累計PV1800万回』達成作品。  ※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。  小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/   カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796  ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709  ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655

処理中です...