インターセプト

レイラ

文字の大きさ
上 下
215 / 225
第2部 7幕

インターハイ3回戦ー山城高校ー28

しおりを挟む
 山高のファウルで、俺はフリースロー3本。これから打つというタイミングで、山城高校がタイムアウトをとる。

 山城高校のプレーが乱れていること。選手を少しでも休ませること。通常はそういった意味でタイムアウトをとる。実は、タイムアウトをとる目的は、心理作戦も兼ねている。

 フリースローを打つタイミング。ここで、タイムアウトをとると、自分のリズムを崩されるときがある。これも立派な心理戦。

 山城高校のタイムアウトは、明らかにリズムを崩すため。

 俺はリズムを崩さないように、フリースローの感覚を確かめた。ここのフリースローは大事だ。あとから、ボディーフローのように響いてくる。

 1分のタイムアウトが終了した。

 俺はフリースローの準備をする。

 ゆっくりとした動作で、シュートを放つ。

 1本目、フリースロー成功。

 2本目のフリースローも成功。

 3本目。一度、間を置いて、心を落ち着かせる。

 膝を柔らかく曲げてシュートを放つ。ボールはちょっと高めだが、アーチを描いている。少し、アーチが長くなってしまったか。

 ボールはボードに当たってから、リングの中へ入っていった。

 3本目のフリースローも成功。

 フリースロー3本決められたのは大きい。結局、スリーポイントシュートを放ったことと同じ。

 山城高校はすぐにオフェンスに切り替えていた。思うようなプレーができていないためか、表情は暗い。声も出ていない。精神的にもかなりの影響している。

 山城高校には悪いが、城伯高校からするとチャンスだ。チームとして乱れているから、オフェンスも崩れていく。

 山城高校のオフェンス。

 ボールを持っているのは、三井だ。ゆっくりドリブルをして周囲を見渡す。なかなかパスを出せる雰囲気ではない。

 このまま、走り抜けてゴールまで行きたい。三井の頭の中には、ドライブからのシュートという考えがある。

 三井についている貴も同じことを思う。三井がドライブしてくると読んでいた。

 三井は低く速いドリブルをして、貴を抜いていこうとする。

「負けない」

 三井は貴の体に当てにいくようにして走る。

 貴はすぐに足を動かし、三井を行かせない。さらに慧も三井につく。

 ダブルチームにされてしまい、貴は全く進むことができなかった。半ば強引にターンをして、シュートに踏み切った。

「これは無理だ!」

 鈴野は強引に行く三井を見て、止めようと叫ぶ。

 既に遅かった。三井はシュートを放っていた。

 当然、入るわけがない。

 リバウンドを取ったのは慧だ。

 智樹は、慧のリバウンドを確認した。同時に素早くゴール下まで移動する。手を大きく振って、慧にアピール。

 慧は片手で智樹にパスをする。

 智樹は慧からのパスを受け取ると、レイアップシュートを決めてみせた。

 ボールをリングに置いてくる動作は柔らかなタッチだ。力が入っていない。軽くシュートしているようにも見える。

 4クォーターも残り1分切った。

 速く攻めたい山城高校は、すぐにコートにボールを入れる。

 山高は素早くドリブルで、城伯高校の陣地までボールを運んでいく。山高はゲームを止めることなく、スリーポイントシュートを放つ。

 スリーポイントは決まらなかった。エアーボール。リングに当たることもなく、外れた。

 リバウンドをとったのは、戸倉だ。そのまま、ボールをボードに当ててシュートを決めた。タップシュートだ。

 城伯高校のオフェンス。城伯高校としては、時間を使ってオフェンスをしたい。

 俺はゆっくりとドリブルをして、時間が過ぎるのを待つ。24秒ルールがあるので、24秒ギリギリでプレーをしても構わない。

 あと4秒というところで、慧にパスを出す。

 慧は1秒待ってから、シュートを放つ。ジャンプシュート。ボールは、リングの中へ入ると思わせておいて、嫌われてしまった。

 試合終了まで残り14秒。勝利は、ほぼ決まりだ。

 山城高校も決まったとわかっていて、もう攻撃はしない。戸倉が、ドリブルをゆっくりやっている。足を動かすことはしない。

 ピピ―ッ

 笛の音がする。試合終了。

109-98

 城伯高校の勝利で幕を閉じる。

 山城高校のバスケ部が、ベンチも含めて、全員で城伯高校に拍手を送った。

「楽しい試合だったな。ありがとう」

 山高が俺に手を差し出す。

 俺は握手をして笑顔で返した。

「あぁ、楽しかった。また、勝負したいな」

 城伯高校と山城高校はお互いにお辞儀をして、コートを後にする。

 まだ、対戦相手はわからないが、城伯高校は準々決勝へ駒を進めることになった。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...