インターセプト

レイラ

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第2部 5幕

インターハイ開幕15

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 俺は市村からボールを奪う、スティールをした。

 三ツ谷高校は、誰もがディフェンスに戻れていない状態。

 俺は、そのまま、走り抜け、ボールをリングに置いてくるレインアップシュートを放つ。

 勢い余って、着地した時にバランスを崩して、転びそうになったが、なんとか耐えた。

 そのため、ボールがどうなったのか見てなかった。でも、慧が拳を突き上げて、俺に訴えていて、今のレインアップシュートは、入ったのだと理解した。

「スティール、うまいな」

 市村はひとり呟く。自分のミスもあってか、ため息をついた。

 今日は調子が悪いようだ。

 三ツ谷高校と対戦する前に、三ツ谷高校の試合を何試合か見て、分析していたときも、今の試合のように、市村はミスを多くするような選手ではない。

 むしろ、ミスがあまりにもなさすぎて、どうやって、対策するか悩ませていた。

 この試合も当然、ミスは少ないだろうと予測を立て、試合展開を確認していた。

 ところが、市村に何があったのか、ミスが多くなっている。それもイージーミス。

 市村も自信を持ってプレーをしているはずだ。だが、イージーミスが多くて気を落としている。

「気にするな。そういうときもある。バスケはチーム戦だ。お前の分は必ずカバーする。だから、もっとチームを信じろ」

 吉村は市村の肩を叩き、はっきりとした口調で言った。吉村の言葉は力強かった。

 市村も吉村の言葉に励まされたのだろう。軽く笑みを浮かべた。

「ありがとうな」

 市村は吉村の背中をポンッと叩いた。

 三ツ谷高校のオフェンス。

 吉村の言葉が効いたのか、ここから、市村は別人のようにプレーが変わっていく。

 俺が市村についていけず、スーッと脇の下をくぐり抜けていく。本当に一瞬。

 どんな動きをするか読めず、俺は呆然とした。

 すぐに、灯がフォローに入り、市村を止めようとしていた。

 だが、市村は空中でボールを左手から右手に持ち替え、少し体を縮めて、灯という壁を壊した。

 そして、市村はシュートまで持ち込んだ。

 ダブルクラッチだ。

「やられた」

 灯は思わず口に出てしまった。すごく悔しい。

「悪い、ディフェンス甘かった」

 俺は灯に謝った。

「気にするな、何のために仲間がいると思ってるんだよ」

 灯は、ニッと笑う。

 俺は灯につられて、笑みが溢れた。

 そう、これがバスケ。仲間に励まされて頑張れる。


 俺はフーッと息を長く吐いて、気持ちを切り替える。

 城伯高校のオフェンス。

 俺は市村に1対1を仕掛けることにした。市村を抜くためには。

 市村は、俺が少し動作をするだけでも、足が僅かに動いてしまう。その僅かに動いた時がチャンス。

 ズレが生じて、ボールを動かしやすくなる。

 俺はパスをする素振りを見せる。

 狙い通り。市村の足が僅かに動く。

 ゴール下まで、ドリブルで切り込む。

 これがドライブ。

 市村は、しっかりついてくる。

 シュートはできそうにもないか。

 俺は智樹にパスを出そうとした、その時だった。

 パスすることを読んでいた。

 吉村がボールをカットした。

「しまった! スティール!」

 俺は失敗して、舌を出した。

 市村が既にゴール下まで走っている。

 吉村はロングパスを出して、市村へとパス。

 市村はそのまま、ジャンプシュートを決めた。

「ナイススティール!」

 市村は吉村に声をかけた。
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