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志しを共にするもの
7☆大物な李流
しおりを挟む「榊さんちゃんと、説明してあげたんですか?」
臣はジトと榊を見つめる。
太刀の者達は榊のちょっと抜けている性格を知っている。
そして、太刀の者達は二十年前に皇太子殿下からの命令で大妖狐の薫の母である葛葉子を討伐のために皇居に現れたあやかしの城に攻め入った。
恋人であやかしになった葛葉子のもとにいち早く駆けつけて妖狐を退治したのは薫の父の瑠香だった。
退治したというのは少し語弊があるが……
その時の不思議な体験はそれぞれ語り草になっていて、太刀の者達の子供に昔話のように教えているものもいる。
榊家も例に漏れなかったようだ。だが、ちゃんと伝えてないと臣は感じて詰め寄った。
「いやーちゃんと伝えたんだけどね。
『ちゃんと退治してないなら、またあくじをはたらくじゃないか!僕は見つけたら容赦しない!』
とか言っていてね。一度決めちゃうと人の話を聞かないんだよ。……妻に似ちゃったみたいだねぇ……冷静になれば聞き分けはいいんだけどね。」
息子可愛い榊誠はそう言った。
そして、榊木から力を奪われた我が子を抱っこして立たせて、「めっ!」
と言って頭を軽くゲンコツで叩いた。
(我が子が可愛いのわかるけど、それじゃ、つけあがるだけだろ。)
と薫は榊親子を見てそう思った。
父親の瑠香と比較してしまう
父はしつこかったな……とおもう。
「薫、篁くん二人ともここに直ってください。」
李流は床に正座して薫にも榊くんにも敬語で命令した。
李流は表情がなく目が冷たい。
しかも有無を言わさない雰囲気を漂わせる。
それは妖力のオーラ以上なものだとあやかし達は思う。
二人はおずおずと李流の目の前に正座して座る。
李流は二人の後頭部をおさえるとゴツン!と容赦なく頭をぶつけた。
「いたいい!」
「いってぇぇ!何するんだよ!」
突然衝撃に薫と篁は悲鳴を挙げるが、李流も自ら二人のおでこにゴツンと当てて、
「これで、お相子、喧嘩もおしまいにしてくださいね……」
言葉が敬語で声にドスが聞いていて二人は怖がる。
怖いのは李流が喧嘩した二人に呆れて友達、後輩を解消とか言い出しそうだ。
李流は下を向いて大きくため息をはいて、もう一度二人に視線を合わせて、
「……鬼でも妖狐でも人間でも、陛下を、日和を大切に思うのならば、陛下のために心を合わせてくれ、それが宮中に務めるものの責務だろ……いがみ合うのはダメだ」
李流は心に思っていたことを二人に伝える。
そして、薫と篁の手を握らせてその上に李流の手を乗っける。
「オレたち三人しか若い伝統衛士はいないんだから……仲良くしよう。」
真摯に言われて薫と篁は自然にごめんなさい……をして李流にも謝った。
そんな様子を見ていた大人達は
「李流君は大物になるな……」
と感心をするのだった。
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