陰陽師と伝統衛士

あやかしと幽霊の恋愛事情

20☆めぐる縁（エピソード）

　翌朝、薫はまゆにお焼香をしにに行った。
　薫はまゆのお母さんとは仲が良かった。
　将来お婿さんにと約束をしていた。
「薫くんはまゆよりいい子を恋人にしてね。」
　今はまゆより、いい女性なんて正直いないと思うが、時が経ち心が癒えたら考えたい。
　今はとりあえず李流と志を目指すことを考える。
　できる限りまゆの命日には寄らせてもらう約束をした。

　父の瑠香は薫の事情を知って、抱きしめてくれた。
「辛かったな……生きて帰ってくれて良かった……」
「とーさん！俺、とーさんの気持ちすごくわかった……辛い。とても…辛かった……でも、かーさんも、とーさんには死んでほしくなかったんだよ…だから、俺たちは愛する人のぶんも生きなきゃいけないんだよ」
「ああ、そうだな。そうだな…」
　はずかしげもなく父の背に腕を回しぎゅっと抱きしめ甘えて、瑠香も薫の気持ちを思い抱きしめてくれた。

　まゆの墓参りに、李流と共に行き、反魂香を焚いたら、ゆらりとまゆの形をとった煙は天へ上がっていった。
「私の分まで幸せに生きてね。約束よ」
　と、最後のまゆの言葉が聞こえて、涙が溢れて止まらなかった。
　李流は黙って胸を貸して泣かせてくれたことに感謝だ。

　もう、まゆに悲しい思いをさせないように泣かない。
　泣くくらいならば笑っていよう。
　ときたま思い出しては切なくなるけれどそれはそれで甘い幸せに感じるから……
　この切なさが思い出になったとき新たな恋をする。
　きっと……
　そして、また、新たな縁を持って生まれてくるまゆに会える気がする…それは絶対に…確信が持てるんだ……。


　十数年後、第一子は可愛い女の子が生まれて、奥さんにも承諾を得てまゆの名前を逆さにして【ユマ】と名付けるのだった。
　今度こそ長く幸せな人生を生きてもらうために……