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あやかしと幽霊の恋愛事情
9☆薫の過去の夢その五☆ 心のダークホースから恋の高鳴り
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薫は二日後、こっそり様子を見に行ったら、中山はいじめられていなくて、クラスに机ぽつんと一人の座っていた。
中山の半径の机一個分に空間ができてだれも中山に近づかないようだった。
それもそれで問題はあると思うが、暴行されているよりマシだと思う……
ゆっくりと、自分の教室に行く間に様子を眺めていると、中山と目が合い睨まれた。
中山は、トトトっと薫に近づき、クラスから離れた廊下まで薫を連れていき、
「殴られなくなったけど…でも、迷惑だ…」
と言った。
「はぁ?」
薫は意味がわからなかった。
心を、考えを覗こうとした前に、中山はハッキリとした声で薫を睨み言う。
「僕はイジメられても…クラスでの繋がりがほしかったんだ……」
中山は怒りに震えて声を絞り出すようにいう。
「僕を一切構ってもらえなくなってしまった…。佐伯君も話しかけてこなくなってしまった…こんなことになるなら……イジメられていたほうがマシだった…!」
中山はそう言い切った。
言わされてるのではなく本心だった。
薫はムッと憤る。
イジメられている心は辛いのは確かでそれが分かっていたので考えていることまでテレパシーで覗くのを無意識に避けていた。
(せっかく助けたのに、迷惑って……)
薫は掴まれている手を乱暴に払い除けて、
「はっきりモノを言えるようになってよかったな。今度は自分でどうにかできるよな。」
と、満面の笑顔でいってやった。
感謝されたくて助けたわけではないが逆恨みされるとは思わなかった。
(どうにでもなれ馬鹿野郎……)
と、呪いの言葉を心に飲み込んで見守るのをやめた。
結局、中山は佐伯とどこか似ていて気が合っていたから形だけでも友達として保っていたかったということか…と結論づけた。
気がつけば、この事件で人の心を覗くことをコントロールすることができるきっかけにもなったと思えば良いかと前向きにかんがえようとした。
だけど、このモヤモヤは久々に心を蝕むほど苦しかった……。
☆
薫は放課後、屋上で一人まだ青い空を見ていた。
いつも忙しい母が来てくれたらこのなんとも言えない気持ちを吐き出したい。聞いてもらいたいと思っていた。
縁結びの神様の使いをしている母はいつも現れるとは限らないけど…甘えたかった……
フェンスをぎゅっと握って苦しさを紛らわせようとしたとき、
「薫くん、どうしたの?こんなところで…屋上は立入禁止よ?」
「まゆセンセ……」
まゆ先生は薫が屋上に上がるのが気になってついてきたようだ。
「俺、まちがってたのかな……」
薫は少し泣きそうな顔を向けて、まゆ先生にそうつぶやいた。
母じゃなくてもいい…この気持ちを聞いて貰えれば誰だって……。
いや、まゆ先生だからこそ話せる…
「アイツを助けてやったのに迷惑かられた…なんか悔しいというか、よくわかんないんだ……」
まゆ先生は、薫の言葉を理解した。
中山がイジメられていたのを見ていたし、そのことで事件を薫は起こしてイジメをなくしてやったら迷惑と言われたと…
まゆ先生は、ふたたび空を見上げる薫の隣に並んで、
「あの子はあの子なりの考えがあったのよ、人間腹黒くなきゃ生きていけないしね。」
「うん……」
たしかに、あいつにも考えがあったはずだった。
イジメられることは自分にとっての最善策でわざとやられていた可能性もある。
それならすごく、腹黒い。
その黒さを薫は無意識に避けていたと素直に反省する。
あの佐伯より黒いものを持っていたのかもしれない。
その黒さは自衛本能でもあった。イジメられても一人になるくらいならマシという……
それを取っぱらった薫は憎まれて当然かもしれない。
「イジメられっぱなしがいいなら、もう助けるのやめようかな…」
今後、余計な助けをしないほうがいいのかもしれないと思ったことを空を見上げてつぶやく。
まゆ先生は薫の少し泣きそうな顔を見つめて、
「でも、私はイジメられてたら助けてほしかったよ」
まゆ先生は昔の事を思い出して複雑に微笑んだ。
「センセ、イジメられてたのか?明るい性格でみんなに好かれそうなのに……」
「あの頃は中山くんと雰囲気似てたわ。自分を押し隠して暗い性格してた。私に父親はいないし、この容姿だしね。色々噂たったしね」
ハーフで父親は生まれる前にコメリカに帰って自分の存在を知らないらしい。
「そうなのか…先生も辛いことあったんだな」
「ふふ、君より八歳年上よあたりまえじゃない。この笑顔の裏にはダークフォースが渦巻いているのよ。みえないだろうけどね。」
心を覗いてやろうか?と薫は思ったが辞めた。
ホントに、ダークホースが渦巻いていたら、本格的に人間不信になりそうだからだ。
「知りたくないな、先生の腹黒いところなんて……」
「フフ。知らなければいいのよ。
でも、もし、知ってしまったら忘れてしまえばいいのよ……他人の心も自分の心も……自分の心は自分だけのものなんだから…」
その言葉はまゆ先生の辛かった気持ちに語りかけているようだ。
「正義だろうが悪だろうがその心を持つのは自分次第。
お友達と家族が分かってくれたらそれだけでも幸せなのよ」
まゆ先生もフェンスに手をかけて空を見上げ遠い所を見つめていた。
「そうだな…だけど俺には友達いないし…」
今の自分の家族は複雑なので、家族のことは語らなかった。
「あ、もし、お友達が欲しければ私がお友達になってあげるわよ?」
まゆ先生は自分に指を指してニパッ!と、花が咲いたように笑った。
(うっわ!笑顔がチョーかわいい!)
薫はドキドキと胸がなる。
同い年の女子にも感じたことのない可愛いという素直な気持ちをまゆ先生をみると沸き起こる。
それは出会った時から…
「あはは、センセは、友達というより……俺の恋人になってほしい……なぁ…………」
と、つい口に出してしまって、
「はっ⁉」
として、口を抑える。
(俺、なにいってんだ!?
先生に……!)
恐る恐る先生の顔を見ると真っ赤になっていた。
(薫くんが、私と恋人に⁉
いやいやいやいや、実習生といえど今は、先生と生徒だし!
しかも相手は中学生だしっ!
でもでも!薫くんカッコイイし!
でも、冗談よね⁉本気にしちゃだめよ!)
と、戸惑うけれど、嬉しい気持ちが伝わってきて薫も恥ずかしくなる。
「い、今のナシ。忘れてくれ!」
薫は照れてあわてて逃げてしまった。
胸の動機とふわふわする幸せ感が収まらない。
薫は高鳴る胸を抑える。
(ドキドキする!なんか、恥ずかしくて、まともに顔見られない!先生可愛すぎる!これって恋ってやつか!?)
と薫も心がせわしなかった。
中山の半径の机一個分に空間ができてだれも中山に近づかないようだった。
それもそれで問題はあると思うが、暴行されているよりマシだと思う……
ゆっくりと、自分の教室に行く間に様子を眺めていると、中山と目が合い睨まれた。
中山は、トトトっと薫に近づき、クラスから離れた廊下まで薫を連れていき、
「殴られなくなったけど…でも、迷惑だ…」
と言った。
「はぁ?」
薫は意味がわからなかった。
心を、考えを覗こうとした前に、中山はハッキリとした声で薫を睨み言う。
「僕はイジメられても…クラスでの繋がりがほしかったんだ……」
中山は怒りに震えて声を絞り出すようにいう。
「僕を一切構ってもらえなくなってしまった…。佐伯君も話しかけてこなくなってしまった…こんなことになるなら……イジメられていたほうがマシだった…!」
中山はそう言い切った。
言わされてるのではなく本心だった。
薫はムッと憤る。
イジメられている心は辛いのは確かでそれが分かっていたので考えていることまでテレパシーで覗くのを無意識に避けていた。
(せっかく助けたのに、迷惑って……)
薫は掴まれている手を乱暴に払い除けて、
「はっきりモノを言えるようになってよかったな。今度は自分でどうにかできるよな。」
と、満面の笑顔でいってやった。
感謝されたくて助けたわけではないが逆恨みされるとは思わなかった。
(どうにでもなれ馬鹿野郎……)
と、呪いの言葉を心に飲み込んで見守るのをやめた。
結局、中山は佐伯とどこか似ていて気が合っていたから形だけでも友達として保っていたかったということか…と結論づけた。
気がつけば、この事件で人の心を覗くことをコントロールすることができるきっかけにもなったと思えば良いかと前向きにかんがえようとした。
だけど、このモヤモヤは久々に心を蝕むほど苦しかった……。
☆
薫は放課後、屋上で一人まだ青い空を見ていた。
いつも忙しい母が来てくれたらこのなんとも言えない気持ちを吐き出したい。聞いてもらいたいと思っていた。
縁結びの神様の使いをしている母はいつも現れるとは限らないけど…甘えたかった……
フェンスをぎゅっと握って苦しさを紛らわせようとしたとき、
「薫くん、どうしたの?こんなところで…屋上は立入禁止よ?」
「まゆセンセ……」
まゆ先生は薫が屋上に上がるのが気になってついてきたようだ。
「俺、まちがってたのかな……」
薫は少し泣きそうな顔を向けて、まゆ先生にそうつぶやいた。
母じゃなくてもいい…この気持ちを聞いて貰えれば誰だって……。
いや、まゆ先生だからこそ話せる…
「アイツを助けてやったのに迷惑かられた…なんか悔しいというか、よくわかんないんだ……」
まゆ先生は、薫の言葉を理解した。
中山がイジメられていたのを見ていたし、そのことで事件を薫は起こしてイジメをなくしてやったら迷惑と言われたと…
まゆ先生は、ふたたび空を見上げる薫の隣に並んで、
「あの子はあの子なりの考えがあったのよ、人間腹黒くなきゃ生きていけないしね。」
「うん……」
たしかに、あいつにも考えがあったはずだった。
イジメられることは自分にとっての最善策でわざとやられていた可能性もある。
それならすごく、腹黒い。
その黒さを薫は無意識に避けていたと素直に反省する。
あの佐伯より黒いものを持っていたのかもしれない。
その黒さは自衛本能でもあった。イジメられても一人になるくらいならマシという……
それを取っぱらった薫は憎まれて当然かもしれない。
「イジメられっぱなしがいいなら、もう助けるのやめようかな…」
今後、余計な助けをしないほうがいいのかもしれないと思ったことを空を見上げてつぶやく。
まゆ先生は薫の少し泣きそうな顔を見つめて、
「でも、私はイジメられてたら助けてほしかったよ」
まゆ先生は昔の事を思い出して複雑に微笑んだ。
「センセ、イジメられてたのか?明るい性格でみんなに好かれそうなのに……」
「あの頃は中山くんと雰囲気似てたわ。自分を押し隠して暗い性格してた。私に父親はいないし、この容姿だしね。色々噂たったしね」
ハーフで父親は生まれる前にコメリカに帰って自分の存在を知らないらしい。
「そうなのか…先生も辛いことあったんだな」
「ふふ、君より八歳年上よあたりまえじゃない。この笑顔の裏にはダークフォースが渦巻いているのよ。みえないだろうけどね。」
心を覗いてやろうか?と薫は思ったが辞めた。
ホントに、ダークホースが渦巻いていたら、本格的に人間不信になりそうだからだ。
「知りたくないな、先生の腹黒いところなんて……」
「フフ。知らなければいいのよ。
でも、もし、知ってしまったら忘れてしまえばいいのよ……他人の心も自分の心も……自分の心は自分だけのものなんだから…」
その言葉はまゆ先生の辛かった気持ちに語りかけているようだ。
「正義だろうが悪だろうがその心を持つのは自分次第。
お友達と家族が分かってくれたらそれだけでも幸せなのよ」
まゆ先生もフェンスに手をかけて空を見上げ遠い所を見つめていた。
「そうだな…だけど俺には友達いないし…」
今の自分の家族は複雑なので、家族のことは語らなかった。
「あ、もし、お友達が欲しければ私がお友達になってあげるわよ?」
まゆ先生は自分に指を指してニパッ!と、花が咲いたように笑った。
(うっわ!笑顔がチョーかわいい!)
薫はドキドキと胸がなる。
同い年の女子にも感じたことのない可愛いという素直な気持ちをまゆ先生をみると沸き起こる。
それは出会った時から…
「あはは、センセは、友達というより……俺の恋人になってほしい……なぁ…………」
と、つい口に出してしまって、
「はっ⁉」
として、口を抑える。
(俺、なにいってんだ!?
先生に……!)
恐る恐る先生の顔を見ると真っ赤になっていた。
(薫くんが、私と恋人に⁉
いやいやいやいや、実習生といえど今は、先生と生徒だし!
しかも相手は中学生だしっ!
でもでも!薫くんカッコイイし!
でも、冗談よね⁉本気にしちゃだめよ!)
と、戸惑うけれど、嬉しい気持ちが伝わってきて薫も恥ずかしくなる。
「い、今のナシ。忘れてくれ!」
薫は照れてあわてて逃げてしまった。
胸の動機とふわふわする幸せ感が収まらない。
薫は高鳴る胸を抑える。
(ドキドキする!なんか、恥ずかしくて、まともに顔見られない!先生可愛すぎる!これって恋ってやつか!?)
と薫も心がせわしなかった。
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