陰陽師と伝統衛士

あやかしと幽霊の恋愛事情

1☆あやかしの息子と神様の父

「とーさんは反魂香作れるのか？」
　陰陽寮の入力の仕事が一区切りした小休憩中、学校帰りの為制服で癖っ気でキリリとした眉毛が男らしさとやんちゃっぽい雰囲気のある高校二年生の薫は思い出したように父である瑠香に尋ねた。
　いつもなら親友の桜庭李流にじゃれついているが、李流は伝統衛士の任に着いて陰陽寮のシフトは入っていない。
　それに、香道の師範でお香に詳しい父親に聞きたかった事をふと思い出し話題にしたのだ。
「よく、反魂香のことを知ってるな。とーさんはまだ教えてないのに……」
　と、ストレートの少し青く輝く黒髪を後ろで見このように縛り陰陽寮の職員コスチュームの狩衣を着こなすが、まだ三十八歳の神のよう美しくキリリとした眉に男の色気ある瑠香は息子の言葉に意外な表情をした。
　自分の跡を継ぐ気のない息子二人に陰陽道も香道も教えずに育てた。
　孫か親戚の誰かにいずれ、瑠香に劣らずの似たような力を持つ者に跡を継がせるのが習わしだ。
　長男の桂は呪術に関して、ズバ抜けた知識と能力を持っていたが、お香をつかって記憶を操る能力を持っていなかった。
　瑠香のこの能力は代々香茂家に遺伝に繫がる宮中を守る力。
　日和国を統べる両陛下、皇族に危害を加える者たちを制裁するための力で、神の化身の候補にもなり得るものが生まれながらに授かる力だ。
　瑠香は生まれながらに宿命に定められていたためにお香を操る力を持ち神の化身にもなり得たのだ。

　薫は阿倍野の血の方が濃く出たためにいまや母と同じあやかしの白狐の仕事もしている。
　毎晩守護する事が難しくなったので、たぬきのあやかしのポン太と交互に守護を交代しいずれはポン太一匹に任す予定だ。
　なぜなら、将来は親友の桜庭李流とともに陛下、皇族殿下方をお守りする宮廷警察の宮中近衛警備職につきたいと思っている。
　　そのため、陰陽寮の仕事と勉強の他に香道の勉強を父親である瑠香に習っていた。
　なので、お香について薫は興味津々だった。