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おまけ

ハッピー♡ウェディング 前

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 挙式を終えてブーケトスをしたら、闇属性の子達は大図書館に帰り、他はそのまま披露宴会場に移動する。緩やかな音楽が流れる中、参加者達に手短な感謝を伝えて乾杯したら、食事開始だ。ビュッフェ形式なので、参加者は好きなものを自由に食べられる。

 俺達はこの時間に挨拶回りをするのだけど、参加者が多いので本当にお世話になった方々のみである。声をかけるとそのグループから1品勧められるので、共に食べるのが風習だ。どれも1口サイズで食べようと思えば一瞬で終わる為、注意しないといけない……なんて、そんなことで文句を言うような人には挨拶しないので、問題無い。

 まずは神ソレイユと女神リュヌ、そして共にいた7神に、参加していただいた礼を告げる。すると逆に、感謝の言葉をいただいてしまった。千年振りに友と再会出来たことが本当に嬉しい、ありがとうと。

 一緒に食べた1品は、ザガンが大好きな赤身肉のステーキ3切れほど。女神リュヌが取ってきてくれたもので、渡されたザガンはだいぶお腹が空いていたらしく、すぐに食べ終えた。美味いと満足そうに頷くザガンが、とても可愛い。

 次は王夫妻や王太子夫妻など、俺の家族のところへ。今までお世話になったことと、式の準備をしてくれたことへの感謝をする。両親はおめでとうと言いながら涙ぐんでいたし、妹なんて完全に泣いてしまったが、みんなでローストビーフを食べた時は笑顔になっていた。

 それからノエル達のところへ向かう。今日は友人としての参加なのでニナは敬語を使わず、ミランダも回りが貴族だらけだろうと気にせず、豪快に笑っていた。そんな彼女の腕に捕まっているソフィー。彼女が闇属性のみんなと帰らずに残ったのは、それだけミランダや、ここにいるメンバーを信用しているからだろう。周囲から悪意を向けられないか心配になるけど、女神リュヌがいるから大丈夫だよね。
 ちなみにエロワも残っているが、彼はシンディ以外どうでもいいタイプなので問題無い。

 べネットが取ってきてくれた料理は、野菜の肉巻きだった。ザガンの好物を入れつつも、栄養バランスをきちんと考えてくれるのが、ベネットらしい。

 友人達との会話が終わる頃には、事前にこっそりお願いしたようにライル先生とオロバスが近くに来てくれていたので、彼らと言葉を交わした。ここで2人と話せるとは思っていなかったらしいザガンは、とても嬉しそうである。

 ライル先生は俺の恩師だから、この順番で話しても何もおかしくない。もちろんザガンがあまりにも母親似なので、気付いてる人間はそれなりにいるだろう。しかし民間人と発表されているザガンをブレイディ家子息と指摘したら、伯爵家を大きくするだけである。だから誰もが気付かないフリをしている。

 むしろ懸念だったのはブレイディ伯爵夫人だったが、彼女は少し離れたところにいて、先程途中で友人達の輪から抜けたノエルと話していた。ザガンに近付いてくる気配が無いことにホッとしつつ、目が合ったので会釈はしておく。

 食事を取ってくるからと、オロバスが今まで何を食べたか聞いてきた。それでも取ってきたのはミニハンバーグだから、つい苦笑してしまう。

「相変わらずオロバスは、ザガンに甘いなぁ」
「? リュカも肉が好きだよな?」
「そうだね、ザガンが大好きなのは、俺も大好きだよ」
「どう考えても殿下が1番甘いですね」
「俺だってシエ……ザガン殿に甘い自覚はあるぞ」
「面倒なので、貴方は張り合わないでください」
「お前はもう少し、俺に甘くなっても良いんじゃないか?」
「え、まだまだ厳しくしてほしいと? 貴方の向上心には脱帽します」
「ははは、7千年も生きてると耳も遠くなるよな」

 相変わらず楽しい会話をする2人である。ザガンも楽しそうだけど、食事を終えたので次へ。

 大臣6人のところでは、改めて2神を救出したことへの感謝をいただいた。実は身近に魔物がいると知った時、真っ先に浮かんだのは彼らだったが、本当にその通りで驚いたな。

 料理は行政大臣が取ってきてくれて、またもや肉料理だった。幼少期から俺を知っている彼らは、俺に食のこだわりが無いことも知っている。だからザガンに合わせて持ってきてくれたのだろう。ザガンの好物は、何故かみんな知っているんだよね。女神が教えたのかな?

 あとは大都市の領主達である4大公爵家と、8大侯爵家に挨拶をしたら、挨拶周りは終了。

 ひとまず定位置に戻ったら、次はウェディングケーキに入刀した。この瞬間は新郎新婦の親しい友人達が前に来るという暗黙の了解があるのだけど、正面を陣取っていたノエルが笑顔でいっぱい拍手してくれて、ザガンがとても嬉しそうだった。カミラがたくさん写真を撮ってくれているので、あとで見させてもらおう。

 ケーキのイチゴをあーんして食べさせたら、ファーストダンスである。今回は本当に2人きりだからか、ザガンから緊張が伝わってきていた。ぎゅっと手を握ってくるのが、とても可愛い。

「大丈夫だよザガン。俺がちゃんとリードするから、君は俺だけを見ていて?」
「……わかった」

 頷くザガンの額にキスをして、流れてきたワルツに合わせてステップを踏んでいく。ザガンは元々しなやかな身体をしていて体幹も鍛えられているので、姿勢が崩れることは絶対無い。それに5月上旬の休暇後からこの1ヶ月半、毎晩30分は必ず練習していたので、ステップを間違えることもない。
 だからか少しするとザガンから緊張が取れたし、とても楽しそうなのが伝わってきた。可愛いなぁ、ザガン本当に可愛い。

 音楽が止まりお辞儀をすれば、たくさんの拍手に囲まれる。ホッと吐息を零すザガンも可愛い。
 これで披露宴のスケジュールは完了したけど、パーティー自体は深夜まで続く。参加者達は自由に踊って構わないし、飲食や歓談も自由。もちろんすぐに帰宅しても良いし、泊まりたい場合は客間が用意されている。

 というわけで、俺達は改めて食事をした。先程は肉ばかり食べていたので、野菜を取るよう促す。
 ザガンは甘すぎるもの以外ならなんでも食べるし、料理が素晴らしければ美味しいと言うので、もっといろいろ持ってきてくれても問題無かったんだけどね。でも共に食べるなら主役の大好物でという気持ちもわかるから、以前ザガンの体調管理をしていたはずのオロバスが肉を持ってきても、苦笑するに留めておいた。

 そのあとはノエル達と談笑したり、改めて神々と話したり。いつもよりお酒の進んだザガンがフワフワしていたところ、女神リュヌが猫になって寄りかからせてくれたり。もふもふに埋もれる姿は可愛かったし、俺も寄りかからせてもらったところ、本当にもふもふしていて気持ち良かった。

 たくさん楽しんだぶん夜には疲れてしまい、まだ残っていた自室で入浴を終えたら、ザガンを抱き締めてすぐに眠った。





 翌日。朝はゆっくり過ごして、午後からパレードだ。王城から大図書館までの道を、音楽隊の演奏やダンスと共に、豪奢なオープン型馬車で向かうことになる。

 事前に国民には告知していて、休日にもなっていたけど、どうなるかという心配はあった。見に来ないだけなら問題無いし、2神も同車して結界を張ってくれるので、もし攻撃されたとしても届きはしない。でも結婚反対の声を出されたり暴動を起こされると、幸せな気持ちが沈んじゃうから止めてほしいな。

 そんな不安は、杞憂で終わってくれた。王城を出てからずっと人波が続いていて、歓声に包まれ続けたし、みんな笑顔で手を振ってくれる。振り返しつつ驚いていたザガンにも促したところ、彼が少し手を挙げただけで、キャー!! と女性達の劈くような奇声が上がった。

 ザガンって寡黙で強くて、しかも綺麗で格好良いから、そういうタイプが好きな女性達にすごく刺さるんだよね。ただし本人は闇属性だからか好かれているなんて思っていなくて、どうやら男同士の恋愛が好きな女性達によるものだと勘違いしているみたい。
 もちろんそういう女性もいるけれど。でもさすがに、ザガン様ステキー!! という声は、別だと気付かないかな?

「……闇属性の差別、少なくなってきた、か?」

 あ、良かった、ちゃんと気付いた。

「神ソレイユが毎日空を駆けて、民衆と交流しているからね。だから王都は、だいぶ薄れたんじゃないかな」
「うむ。リュヌが国を守り続けていたことも、お前達が我らを助けたことも、あちこち降りては民に直接話しているぞ。悪いのは我だからな、これからも地道に払拭していくつもりだ」
「王都はソレイユに任せておけば、問題無い。私達は引き続き、地方を回っていこう」
「……そうだな」

 戸惑いながらも頷いたザガンが、じわじわと喜びを感じて頬を紅潮させていくのが可愛くて、つい頭を引き寄せてこめかみにキスしてしまった。するとまたしてもキャーッと聞こえてきたので、手を振っておく。呆れたように溜息をつくザガンも可愛い。

 大図書館付近になると、闇属性のみんなが道の両脇に並んでいた。そしてここまでの道のりと同じく歓声を上げて、手を振ってくれる。行事に参加して騒ぐことが出来るようになった彼らは、とても楽しそうだ。

 大図書館内に到着したら、パレードは終了。約2時間半、踊りながら音楽を奏でてきた音楽隊のみんな、本当にお疲れ様。

 午後4時すぎ。これから2次会なんだけど、まずは大図書館で待っていたクラージュから、祝福の言葉と可愛らしい花束を貰った。大図書館に植えられている花を摘んだものだそう。

 それからぐちぐち言われながらも案内されたのは、ステージのある会場だった。扉が開いたら拍手で迎えられたんだけど、大図書館で働いている全員がいるのではないかというくらい、人数が多かった。

 先に来ていたノエル達の隣に座ったら、ステージ上で待っていた子供達による演奏が始まる。それぞれ両手にベルを持ち、1音1音丁寧に奏でられる音色。つたないながらも綺麗な響きで、疲れた心が癒されていく。

 数分で演奏が終わると、もっと小さな子供達とも合わせて、おめでとうの言葉とたくさんの花束をくれた。戸惑いながらも、両手いっぱいに花束を抱えるザガンが微笑ましい。屋敷に帰ったら、1つずつ部屋に飾っていこうね。

 そのあとはデザートを食べながら、いくつものパフォーマンスを観覧した。ジャグリングやマジック、ダンスなど、どれも華やかで楽しいものばかり。
 以前ザガンと2次会について話した時、クラージュに頼んだけど結構消極的な雰囲気だったから、まさかこんなに大がかりなショーを開いてくれるなんて思わなかったな。ステージに立つみんなが楽しそうだし、チラリとザガンを見れば、やっぱりすごく嬉しそうだった。

 夕食の時間になったらショーが終わり、食事となる。その時には魔物達が準備してくれて、ゲーム大会まで開いてくれた。景品も用意されていたのだけど、大人向けに高級ワインのボトルが何本か並んでいたので、特に酒好きの人達が白熱していく。俺も1瓶入手出来たから、今度一緒に飲もうね。

 ゲームが終わったら、2次会もお開き。クラージュやみんなに、お礼の品として用意していたタオルセットを全部渡して、大図書館の向かいに建っている屋敷に帰った。







 この2日間、気疲れはしたけど、ずっと楽しかったなぁ。素敵な結婚式を挙げられて、すごく満足してる。帰宅してからザガンと一緒にお風呂に入ったのだけど、ザガンもとても楽しかったと言ってくれたし。

 でもいろいろ話はしたけど、エッチはしてない。触ろうとしたら、出るまで待てとお預けされてしまった。しかも先にベッドに入っていろと言われて脱衣所から追い出された挙句、すでに5分は経過している。

 脱衣所で何かしたいことがあったのかな? 遅いけれど気配に乱れは感じられないので、問題は起こっていないはず。でも心配だから、もうちょっと経っても出てこなければ、何をしているのか確認しよう。

 そんなことを考えながら扉を見ていると、ザガンは何事も無く脱衣所から出てきた。いや、何事はあった。着ているものが、バスローブじゃなかったから。ていうか、え、えっ?

「リュカ、待たせた」

 俺の傍まで来たザガンは、恥ずかしいのかほんのり頬を赤らめている。でも視線はじっと俺を見下ろしてきていて。

 そんな彼の格好は、白いウェディングドレスだった。でも透けているので、ドレスではなくランジェリーなんだろう。ドレス下に見えてるショーツも白だけど、以前穿いてくれた黒ショーツとは違い、ペニスは出ていない。あと喉仏を隠す為か、首にはレースのリボンを巻いていて、何より頭にヴェールを付けていた。

 もしかしなくても俺の為に、エッチな花嫁衣裳を着てくれたんだよね? 可愛すぎるんだけど? 俺のザガンが可愛すぎるんだけど!?

「……お前が気に入ってくれたようで、良かった」

 あまりの尊さに直視出来無くなり、両手で顔を覆って天井を仰ぐと、ザガンがポツリと呟いた。それがまた可愛くて、グゥッと喉が鳴ってしまう。俺の伴侶が可愛すぎて、どうにかなっちゃいそう。

 身悶えるのを止めてザガンに手を伸ばすと、大人しく引き寄せられて上に乗ってくれたので、そのまま一緒にベッドに倒れた。そしてぎゅっと抱き締めれば、腰に腕を回して抱き返してくれる。

「もうホント可愛い。俺のお嫁さんが、すっごく可愛い。大好き。愛してる」
「そうか。俺もリュカを愛している」

 俺の腕の中に収まり、すりっと頬を擦り寄せてくる、この温もりが愛しくて堪らない。想いが溢れるまま黒髪にいっぱいキスして、最後に額にもキスしたあと、抱き締めていた腕を緩める。

「可愛い花嫁衣装、もっとじっくり見ても良い?」
「お前の為に用意したものだし、今夜限りの姿だから、好きにすると良い」
「……ドレス着てほしいなぁって思ってたの、バレちゃってた?」

 そう聞いてみると、ザガンはコクリと頷いた。そっか、気付かれちゃってたか。

 1ヶ月ほど前、一緒に結婚式の衣装を購入しにいった時、店内に綺麗なウェディングドレスがいくつも展示されていたのだ。あれらをザガンが着たら可愛いだろうなぁとか、でもザガンのドレス姿を俺以外に見せるなんて絶対嫌だとか、そもそも本人が嫌がるよねとか、いろいろ考えた。

 ただ考えていただけで言葉にはしなかったし、気付かれないようになるべくドレスを見ないようにしていたんだけど……それでもザガンには、気付いたんだね。それで俺に内緒でウェディングランジェリーを用意するんだから、ホント可愛くて仕方無い。

 身体を起こして、ベッドに横になったままのザガンを改めて観察する。立っていた時はわからなかったけど、長いスカートの前部分が開いていて、生足が出ていた。着たままでもエッチ出来る仕様だなんて、製作者のこだわりを感じる。胸部分から背中にかけての刺繍もすごい。
 サイズが明らかにザガンにピッタリだし、ショーツからペニスがはみ出ていないことを含めて完全に男性用なので、特注品だと思われる。

「すごくエッチで、そそられるよ。これ、どこで買ったの?」

 ドレスのスリットから手を入れて、ショーツ上からペニスをふにふに揉みながら、官能を刺激するように囁いてみる。するとザガンは顔を赤らめ、赤い双眸を潤ませながらも、俺を見つめ返してきた。

「前回、ランジェリーを買ったところだ。ノエルやべネットに、お前が俺の花嫁姿を見たがっていることを相談したら、いつの間にか女神リュヌも加わっていて。気付けばあの都市に向かっていた」

 なるほど、女神も関わっていたのか。彼女に運んでもらったなら片道1時間も掛からないから、毎日王城で仕事している俺が気付かないのも当然である。しかも店に何度か通って、みんなでデザインを考えたらしい。

「ドレスやショーツは難しいからと、ん……そこの店主が手掛けたんだが、ヴェールと首のリボンは、ノエルが作ってくれたんだ。刺繍、すごいだろう?」

 言われるままヴェール縁を確認すると、確かにドレスほどではないが、綺麗に刺繍が施されている。首に巻かれているリボンのレースにも。ノエル、ザガンの為に頑張ったんだなぁ。

「うん、すごく綺麗だね。これを付けてるザガンも、すごく綺麗だよ」
「……そうか。あと……ぁん、……ショーツの、下……」
「ショーツの下?」

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