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パリとベトナム。

217話

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 なるほどねぇ、とリディアとしてもその考えは尊重したい。わかるわかる。

「恋愛絡みだろうからね。男、って言ってるし。時季的にもそんな感じだし」

 フランスでは、ショコラーデが大きく売れる時期は二つ。四月のイースター、そして一二月のノエル。店によっては売り上げの大半をこの時期に記録することも。燃やした灰が魔除けになる、という言い伝えから、薪を横にした形のブッシュ・ド・ノエルは定番のケーキ。

 しかし、オペラ座やオスマン建築といった、パリの街並みをモチーフにしたケーキの売り上げも成長著しい。〈WXY〉では、様々なブッシュ・ド・ノエルを先んじてカフェでも食べることができるので、この時期はいつも大盛況となる。

 ドイツといえばシュトーレンだが、プレッツヒェンやレープクーヘン、エンゼルスアウゲンといったクッキーも欠かせない。一一月半ばあたりから準備を始めるところもあるが、新年までに食べきれないほど焼くのも珍しくない。なので、少しパリのショコラトリーに物足りなさも感じる。

「そういった方々に対して、売れているメニューをお伝えする程度にして、色々と吟味してもらうのもいいかと。そうすればお店の利益にもなるわけですし」

 まだまだノエルのイベントは今後もある。今日だけで満足してもらわないように、アニーは奥の手として。それがユリアーネの策略。ということにしておく。

 だいたいノエルは新年とセットでフランスでは考えられている。間も一週間ほどしかないため、色々と仕込んだものをしまうなら全部終わってから、という考えから。なので新年を迎えても赤白緑の模様替えが終わっていない店もちらほら。

 したたかだね、とリディアは敬服。

「色々と考えてる。経営者視点。そんでもって、その女性もお店の常連に今後なってくれるかもだし」

 何度も何度もリピートしてもらう。それだけの味はあるということ。さすがM.O.F。難しい、食という分野の国家憲章を取得しただけあるのだろう。

 言いたいことは言われてしまった。果たして効果はあるのか、はわからない。が、ユリアーネはひとまず対応としては間違っていないと信じたい。

「さしでがましいかもしれませんが。しかし男性となると、なにが正しかったのかと今になって」

 答えはないけど色々と考えてみたい。この時季、ドイツのテュービンゲンではドイツ最大のショコラーデのフェスティバルがある。世界各地から様々な露店がマルクト広場に集合。特殊なものも多いらしいし、行ってみようか。全てが勉強。
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