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蜂蜜と毒。
181話
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数分後、トレンチにコーヒーカップを乗せたユリアーネが、ララの元へ歩み寄る。
「おまたせしました、こちら——」
「ねぇ、写真撮ってもいい?」
テーブルに置かれるや否や、興奮気味にララは許可を得ようとする。
さっきと違い、ラテアートなどはやっていないがいいのかな、と悩みつつもユリアーネは特に問題ない。
「えぇ、どうぞ。お撮りしますか?」
「ううん、ほら、一緒に。ユリアーネちゃんも」
と、諸手を広げて迎え入れる準備のララ。せっかくなので、記念に。
背中に冷や汗の流れるユリアーネ。
「……私も、ですか?」
頭の中に、ミッションインポッシブルのBGMが流れる。トム・クルーズが吊るされて床ギリギリまで落とされる映像付き。
そんなことは露知らず、目を星のようにキラキラさせてララは肯定する。
「うん、こんなに可愛いんだし! 秘密にしておくのもったいない」
「……秘密、と言われましても……」
正直、写真には写りたくないユリアーネ。ただただ恥ずかしい。しかも一緒ということは、ララ・ロイヴェリクと。こんな綺麗な人と。その隣に。
「? どうしたの?」
俯いたユリアーネの顔を覗き込むように、ララは体を前傾する。悪気などなにもない。むしろ『可愛いウェイトレスさん紹介』くらいしか考えていない。
間接照明だけで、少し薄暗い中ですら、ララという女性は光り輝く。恋が上手くいってないって嘘だとしか思えない。男女関係なく、眩く直視できないだろう。アニーさんならきっと、喜んで肩を組んだりして、なんてこともユリアーネの頭によぎる。
「……私なんて——」
と言ったところで、図書館でシシーに言われたことを思い出す。
《キミは『悲観的だね』》
「…………」
ここが分水嶺なのかもしれない。シシーさんは褒めてくれたけど。それでもアニーさんのように、私は——。
「……少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか、すぐに戻ってきます」
本当はすごく恥ずかしい。逃げ出したい。だが、このお店が話題になるかもしれない。
覚悟のようなものを感じ取り、ララはキョロキョロと目が泳ぐ。
「え、うん。なんか……ごめん、それとせっかく淹れてきてくれたコレも」
軽く出してみた案だったが、予想以上に重く受け止められているようで、申し訳なくなってきた。
どちらにせよ、コーヒーは少し冷ましてから飲むものだったので都合がいい、とユリアーネは前向きに捉えた。
「そのままで大丈夫です。三分、いや、二分ほどお待ちください」
と、返事を聞く前に退散する。気持ちが逸る。それでいて億劫にもなる。恥ずかしい。でも変わりたい。バックルーム飛び込むと、そのまま更衣室へ。ハンガーにかかった一着を手にする。
「おまたせしました、こちら——」
「ねぇ、写真撮ってもいい?」
テーブルに置かれるや否や、興奮気味にララは許可を得ようとする。
さっきと違い、ラテアートなどはやっていないがいいのかな、と悩みつつもユリアーネは特に問題ない。
「えぇ、どうぞ。お撮りしますか?」
「ううん、ほら、一緒に。ユリアーネちゃんも」
と、諸手を広げて迎え入れる準備のララ。せっかくなので、記念に。
背中に冷や汗の流れるユリアーネ。
「……私も、ですか?」
頭の中に、ミッションインポッシブルのBGMが流れる。トム・クルーズが吊るされて床ギリギリまで落とされる映像付き。
そんなことは露知らず、目を星のようにキラキラさせてララは肯定する。
「うん、こんなに可愛いんだし! 秘密にしておくのもったいない」
「……秘密、と言われましても……」
正直、写真には写りたくないユリアーネ。ただただ恥ずかしい。しかも一緒ということは、ララ・ロイヴェリクと。こんな綺麗な人と。その隣に。
「? どうしたの?」
俯いたユリアーネの顔を覗き込むように、ララは体を前傾する。悪気などなにもない。むしろ『可愛いウェイトレスさん紹介』くらいしか考えていない。
間接照明だけで、少し薄暗い中ですら、ララという女性は光り輝く。恋が上手くいってないって嘘だとしか思えない。男女関係なく、眩く直視できないだろう。アニーさんならきっと、喜んで肩を組んだりして、なんてこともユリアーネの頭によぎる。
「……私なんて——」
と言ったところで、図書館でシシーに言われたことを思い出す。
《キミは『悲観的だね』》
「…………」
ここが分水嶺なのかもしれない。シシーさんは褒めてくれたけど。それでもアニーさんのように、私は——。
「……少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか、すぐに戻ってきます」
本当はすごく恥ずかしい。逃げ出したい。だが、このお店が話題になるかもしれない。
覚悟のようなものを感じ取り、ララはキョロキョロと目が泳ぐ。
「え、うん。なんか……ごめん、それとせっかく淹れてきてくれたコレも」
軽く出してみた案だったが、予想以上に重く受け止められているようで、申し訳なくなってきた。
どちらにせよ、コーヒーは少し冷ましてから飲むものだったので都合がいい、とユリアーネは前向きに捉えた。
「そのままで大丈夫です。三分、いや、二分ほどお待ちください」
と、返事を聞く前に退散する。気持ちが逸る。それでいて億劫にもなる。恥ずかしい。でも変わりたい。バックルーム飛び込むと、そのまま更衣室へ。ハンガーにかかった一着を手にする。
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