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必要と不要。

80話

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 操られていることに気づいてるのかわからないが、オリバーの未来をアニーは不安視する。

「……絶対、尻に敷かれるタイプっス。というか、目的はなんなんですか?」

 さっきからジャスミンティーを飲めたり、さらにまたなにか持ってきてくれたりと、至れり尽くせりではあるが、現在店は営業中。ここに三人いていいのか、と少しソワソワしてくる。

「全部終わったら教えよう。それよりさ、ジャスミンティーは美味い? ジャスミン最高? ジャスミンのためならなんでもできる?」

 どう考えても含みのある言い方をするカッチャだが、意図の読めないアニーとしてはその誘いに乗るしかない。足を踏み入れる。

「ジャスミンは当然最高です。味も香りも、コーヒーとは比較になりません」

 正確にいうと、ジャスミンティーはフレーバーティーの一種で、茶葉の味そのものを楽しむ紅茶とは若干違う。しかし、これはこれで好き。イギリスではあまり認められていないというが、もったいない話だ。

 そのアニーの気丈な振る舞いを、カッチャは不敵に嘲笑する。

「頑固だねぇ。ま、今のうちに言っときな」

「?」

 少し、怖くなってくる気持ちを抑えつつ、アニーはただ待つ。本当は今すぐユリアーネを探しに行きたいが、その前に立ちはだかるラスボスをなんとかせねば。太腿を指で叩き、落ち着きのなさが滲み出る。

「お待たせしました」

 そこへ、またもトレーにコーヒーカップとソーサーを乗せたオリバーが入室してくる。カッチャが指定した『例のもの』を携えて。

 しかし、先ほどと違う点。コーヒーから漂う香りに、アニーはハッとする。

「……これって……!」

 微かに混ざる、嗅ぎ慣れた香り。それがコーヒーから。深く考え込む。なにを? 考えるまでもない、これは、あの花だ。

 衝撃を受けたような表情でフリーズするアニーに気づき、カッチャは種明かしをする。

「気づいた? そう、これはコーヒーの中でもエチオピア産の——」

「お気づきになりましたか!? そう! これは同じく『イッタラ』のタイカというシリーズで、デザイナーのクラウス・ハーパニエミが様々な動物達をイメージして——」

「いや、いいから」

 ここも先ほどと一緒。そのままにしておくと、いつまでもカップについて語っているだろう。

「失礼」

 そう言って鹿やハリネズミ、木々や葉の描かれたコーヒーカップを置き、そしてもうひとつ、花柄のミルクピッチャーを置いてオリバーは一歩下がる。

「フィンランドのブランド、『アラビア』のリュパレというシリーズのミルクピッチャーです。ふふ……!」
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