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ユリアーネ・クロイツァーと珈琲。

39話

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「なぜ!? 北欧の陶磁器の素晴らしさをご存じありませんか!? ノルウェーのキャサリンホルム、スウェーデンのグスタフスベリ、デンマークのロイヤルコペンハーゲンにフィンランドのアラビア! 他にも素晴らしいメーカーは数えきれないほどあります! もちろんアジアやヨーロッパにももちろん特筆すべきメーカーは多々ありますが、なんといっても個性的でありつつ機能性もあり、老若男女に幅広く愛されるポップさと一度見たら忘れない——」

「あー、その辺にしといてくださいっス。こんな感じで、ウチで働き出したのも、味とか雰囲気とかじゃなくて、テーブルウェアが最初っていうレアな方なんですよ」

 体をねじりながら北欧のテーブルウェアの素晴らしさを熱弁するオリバーだが、当然ユリアーネは引きつった乾いた笑いを浮かべるので精一杯だった。なぜこの店には普通の店員がいない? と、自分の店ながら彼女は小さく震える。先行きが怪しすぎる。

 このままだと数分間は喋り続けるであろうオリバーを制止し、アニーは彼の背中を押しながら、三人とも厨房へ。当然、まわりのお客さん達は、いつものことと気にしていない。安らぎに来てるのだからクレームを言えばいいのに、特にそんな様子もない。

 厨房では、たくさんのテーブルウェアが存在するが、たしかに統一性はない。それもそのはず、大量生産しているものばかりではないため、どうしても違うブランドのもので料理を提供するしかないのだ。まじまじとユリアーネが眺めているが、カラフルで目がチカチカとしてきそうだ。

「ですが、たしかにカフェのテーブルウェアはシンプルなものが多い印象でしたが、ここのお店は個性的なものが大半ですね。例えばこれなんかーー」

 と、ひとつ近場にあったものを手に取る。民族衣装のようなものを着込んだ男女が楽器を持ち、シャンデリアやテーブルなども細かく書き込まれている。ポップな絵柄で、子供が好きそうだ、と感想を持った。

 それを確認し、オリバーが目を光らせて拍手をする。

「こちらはノルウェーの大手メーカーのフィッギオです! さすがオーナー、お目が高い! 六〇年代は絵本のような、それでいてヴィンテージを感じる絵柄で、人気デザイナーのチューリ・グリムスタッド・オリバーが描いておりました! 僕と一緒の名前……!」

 三人目のオリバーが出てきて、ユリアーネは反応に困る。もう一生ぶんのオリバーに出会った。

「その中でもこれは、ロッテという可愛らしい男女が描かれてる人気シリーズなんですよ。産地直送デス」

 傍観していたアニーも参戦してきた。元々、北欧のテーブルウェアを揃え出したのは彼女だ。当然好き。厄介なのが二人に増える。

 これ以上好き放題に喋らせると終わりが見えないため、ユリアーネは厳しい言葉を投げかける。

「こだわりがあるのはいいのですが、オーナーとして、売り上げを見なければいけませんからね。もし繋がっていないとなると、見直さなければいけない点でもあります」

 腕を組み、威厳を示そうとする。ただでさえ一番の若い自分が、この店では上に立たなくてはいけない。決断も実行も意志を持ってせねば、と気合を入れる。
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