上 下
188 / 202
第9章

ビーフカレーの幸せ

しおりを挟む
窓の外がオレンジ色の世界になってきました。
ずっとシームレスハイウエストタイツ姿で抱き合い、幸せを満喫していた二人ですが、そろそろ夕食の準備の時間です。
「恵子、もう夕方よ。だんだん暗くなってきたわ」
「菜乃花、私には食事より菜乃花よ。私は菜乃花が欲しいのよ」
恵子は体を起こすと、菜乃花のタイツ脚を掴んで持ち上げて折り返し、両膝が菜乃花の頭の横に着くようにして、まんぐり返しの姿勢にしました。

「恵子‥」
菜乃花は恵子に求められて嬉しい反面、恵子の様子がいつもと違うことがずっと気になっていました。
(こんなに激しく私を求めるなんて、恵子、一体どうしたの?)
詩絵美と何かあったのか?いや、詩絵美には会えないはず‥
菜乃花には皆目見当がつきません。

少し困惑している菜乃花の表情を気にすることなく、恵子は菜乃花のクリトリスをタイツの上から舐め始めます。
「うあっ、恵子、ああっ、恵子、気持ちいい、ああっ」
恵子を気にしていた菜乃花も、恵子の攻めが始まると、快楽の世界に引っ張り込まれ、あっという間に絶頂を迎えました。
「ああっ、恵子、愛してる、愛してるよ、恵子、愛してる、もうダメ、イッちゃうーーーーッ」
菜乃花の頭の脇のタイツ脚が小刻みに痙攣しながら昇天した菜乃花を見つめながら、恵子は取り憑かれたようにクリトリスを責め続けます。
菜乃花は息つく間もなく、何度も何度も絶叫しながら昇天しました。

部屋の中ももかなり薄暗くなりました。
菜乃花が10回目の絶頂を迎えたところで、菜乃花の体と心が限界を超えました。
「恵子、もう本当にダメ、これ以上はやめて。お願いだから、やめて」
泣きながら懇願する菜乃花の声に、ハッと恵子は我に返りました。
「菜乃花、ごめん、大丈夫?」
恵子は菜乃花のまんぐり返しを解き、優しく抱きしめました。
「恵子、せっかく求めてくれるのにごめんなさい。恵子の責めが凄すぎてこれ以上はもたない。本当にごめんなさい」
菜乃花は激しい息遣いのまま、涙を流して恵子に謝ります。
「菜乃花、泣かないで。私の方こそ無理やり求めてごめん」
「ううん、私、恵子に求められてすごく嬉しいのよ。ただ、これ以上は‥」
「菜乃花、本当に大好きよ。菜乃花は私の菜乃花よ」
恵子は菜乃花の髪や頬を優しく撫でて見つめます。
「恵子、ありがとう。私はいつでも愛してるわ、恵子」
「菜乃花、ありがとう、すごく嬉しいわ」
恵子はそっと菜乃花に唇を重ねます。
(カミーユ、私、心から幸せを感じているわ。これは、私が菜乃花を愛しているってことなの、カミーユ?)

手を繋いで1Fへ降りてきた二人は、キッチンで夕食の準備に取り掛かります。
今日もやはりカレーライスです。
今回は欧風ビーフカレーとたまごサラダです。
「あれ、恵子、二人分にしては多くない?四人分くらいありそうよ。恵子ってカレーになると、ほんと大食いになるのね~」
菜乃花がニヤニヤしながら話しかけます。
「ちょっと、そんなわけないでしょ。貴浩くんの分も作るのよ」
「え?貴浩くん?あ、あの‥」
菜乃花の顔色が曇ります。
「そう、セックスをした貴浩くんよ。今、頼子さんが病気で入院してるから、朝食や夕食の準備を手伝ってるのよ。幼馴染のお隣さんだから、困ったときは助け合わなきゃね」
「そ、そうなのね」
菜乃花は思わず目を背けます。

恵子は気にせず、料理を続けます。
その後は菜乃花も何事もなかったかのように手伝い、すぐに出来上がりました。
ダイニングに用意して、二人はシームレスハイウエストタイツ姿のままで向かい合わせに座ります。
「うわあ、今日のカレーも美味しそう!ほんと、恵子は料理の達人よねえ」
「そんなこと全然ないよ。菜乃花が手伝ってくれたからだよ」
「何言ってんのよ。私は恵子に言われた通りにやっただけよ。さあ、それじゃあ、いただきます!う~ん、美味しい!」
「私もいただきます」
「これ、牛肉がすごく美味しいよ」
「かれーもいつもよりスパイシーだわ。菜乃花、何か特別なスパイスを入れた?」
「ふふ、よく気づいたわね。その刺激、私の「あ・い・じょ・う」よ!」
「そうか、実はそうだったのねえ、菜乃花」
恵子は意味深に笑います。
「え?どういう意味よ、恵子?」
「だってこのカレーライス、明日貴浩くんも食べるんだけど、そこに菜乃花の愛情が入ってるってことは‥」
「うわあ、ちょ、ちょっと、恵子、そんなのイヤよ。私の愛情は恵子だけなんだから、ちゃんと抜いてから渡してよ」
「そんなことできるわけないでしょ!菜乃花の愛情たっぷりのカレーですって渡すわ」
「恵子、絶対イヤよ。恵子が責任持って吸い取ってよ!」
何はともあれ、幸せのビーフカレーです。

夕食を終えると、菜乃花が片付けをしている間に、恵子はビーフカレーをタッパーに入れます。
「菜乃花、これを貴浩くんの家に届けてくるから、15分くらい待っててね」
「え?今から行くの?」
「ええ、そうよ。貴浩くん、今日はハンバーガーショップで食べるって言ってたけど、もう帰ってきてると思うから」
今日中に届けることで、明日の夜は一緒に食事はしないという意思表示でもありました。
「う、うん、分かったわ。気をつけてね」
「ちょっと着替えてくるわ」
恵子は急いで2Fへ上がっていきました。

菜乃花は少し不安です。
(恵子、届けに行くだけだよね。セックスしに行くわけじゃないよね)
恵子が2Fから降りてきました。
「それじゃあ、菜乃花。ちょっと待っててね」
「分かったわ。気をつけ‥え?ちょっと、恵子。全身タイツで行くの?」
恵子はお昼に着ていた全身タイツを着用しています。
「何で貴浩くんに会うのに、全身タイツなのよ?」
菜乃花は明らかに恵子を不審な目で見ています。
「全身タイツが今のありのままの姿だからよ。それに貴浩くんに「セックスはしない」っていうメッセージだからよ」
「恵子、それにしても、全身タイツだなんて‥」
「それじゃあ、行ってくるね」
全身タイツで出ていく恵子を、菜乃花は不安な面持ちで見送りました。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

知らぬはヒロインだけ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:117

オレ様黒王子のフクザツな恋愛事情 〜80億分の1のキセキ〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

捨てられた令嬢、幼なじみに引き取られる。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:204

どうしたって、君と初恋。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:13

傷ついた心を癒すのは大きな愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:51

【R-18有】皇太子の執着と義兄の献身

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:294

貴方なんか興味ありませんわ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:230

処理中です...