172 / 202
第9章
詩絵美の想い、真由の想い
しおりを挟む
バーガーショップのそばでバスを降りて、いつもの道を恵子はゆっくりと歩いて帰ります。
しばらく歩いていると、スマホの通知音が鳴りました。
詩絵美からのメッセージです。
「詩絵美、ようやく元気になったんだ!」
詩絵美の家のすぐ近くまで来ていたので、家の前まで行ってLINE通話をかけました。
「あ、詩絵美、元気になったのね!今、家の前にいるよ」
2Fを見上げるとカーテンが開き、パジャマ姿の詩絵美が顔を見せて、手を振ってくれます。
「恵子、心配かけてごめんね。メッセージありがとう。まだ隔離期間だから恵子に会えないし、恵子を抱きしめられないのよ」
「詩絵美の顔を見れたら安心したから大丈夫よ」
お互い満面の笑みです。
「恵子、今日はどうしたの?」
「朝、貴浩くんに食事を届けがてら、頼子さんの着替えなどをそろえて、市立S病院へ届けたのよ」
詩絵美の顔が少し曇ります。
「え?貴浩くんに食事届けたの?」
(まあ、詩絵美の心配は頼子さんじゃなくて貴浩くんよね)
「昨夜は私の家で食べてもらったけど、毎回そういう訳にもいかないから、今朝はタッパーに入れて届けたわ。頼子さんが退院するまでは貴浩くん、食事に困るだろうから、少しでも協力するつもりよ」
詩絵美はどんどん不安になります。
「昨夜は恵子の家に貴浩くんを呼んだの?」
「え?貴浩くん、お礼に来たのよ。一応私が救急車を呼んだからね。そのついでにカレーライスを食べていってもらったのよ。詩絵美も外に出られるようになったら、協力してくれると貴浩くんも喜ぶと思うわ」
「え?私も料理するの?」
(そんな‥恵子と比べられてアウトだよ‥ハードルが高すぎるよ‥)
「私、まだビーフストロガノフは作ってないわよ。詩絵美に任せるわ!」
「え!う、うん、いや、あの‥」
詩絵美にとってリスクが大きすぎるチャンスです。
「詩絵美、今、お母さんはいらっしゃる?」
「うん、いるわよ。どうしたの?」
「昨日、頼子さんの件で助けてもらったからお礼を言いたくて」
「ああ、そうだったわね。頼子さんは様子はどうなの?」
「まだ目が開けられないみたい。食事も摂れなくて辛そうだったわ。脳ではなくて、耳の病気だから命に別状はないのは一安心よ」
「そうなのね。外に出られるようになったら、私もお見舞いに行こうかな」
正直、詩絵美は頼子が少し苦手です。
でも頼子は貴浩の姉なので、少しでもいい印象を持ってもらいたいのが本音です。
「詩絵美が元気になってからでいいと思うわ」
「恵子、私が外に出られるようになったら、セックスしようね」
「詩絵美、嬉しいわ!それじゃあ、お母さんに挨拶していくから、またね」
「うん、またね」
恵子は通話を終えるとインターホンを押し、詩絵美の母にお礼を伝えて、そのまま家に向かいました。
通話を終えると詩絵美は何か寂寥感を感じていました。
「何か恵子、少し冷めてるような気がする‥もしかして菜乃花?でも「詩絵美、愛してる」って言葉は、本当よね?私、貴浩くんを愛してるけど、恵子も‥恵子も愛して‥‥」
しかし、どうしても最後まで言い切ることはできません。
「恵子‥やっぱり恵子を菜乃花に取られたくない‥恵子とセックスしたい‥」
詩絵美はベッドに倒れ込み、目から涙が溢れてきました。
恵子は家に帰る途中でいつものベーカリーカフェに立ち寄りました。
「今日は、坂上さん」
「おっ、恵子ちゃんかい?頼子ちゃんが居なくても寄ってくれるのは嬉しいね!」
「今、ちょうど頼子さんに着替えを届けに行ったんですよ」
「頼子ちゃん、どうだい?」
やはり、坂上も心配です。
GWの繁忙期に頼子が抜けるのはかなり痛いですし、いつ頃復帰できるかが気がかりです。
もちろん、それ以上に頼子の様子は気になります。
「まだ目を開けられないって言ってました。症状が治るのに2,3日かかるようです。耳の病気で、脳には影響がないそうです」
「命に別状がないのは安心だけど、症状が治ったらすぐ普通に暮らせるかっていうのは分からないよなあ。まあ、あれこれ言ってても仕方ないか。頼子ちゃんが元気に戻ってくるのを待っていよう」
「そうですね。あ、たまごサンドを持ち帰りでお願いしますね!」
「OK!ついでにプリンの特盛もどうかな?」
「それは結構です!もう、プンプンですよ!」
「おっとっと、こわいこわい」
坂上は笑いながらたまごサンドを作り始めました。
たまごサンドを受け取って家に帰ると、シームレスハイウエストタイツに着替えます。
本当は早く全身タイツを着用したいのですが、食事があるので、お気に入りのハイウエストタイツです。
こちらもお気に入りのシンガポールの紅茶を用意していると、スマホの通知が鳴りました。
今度は真由からです。
「あ、真由も元気になったのね。よかった!」
さっそく真由にTELします。
「恵子、やっと熱が下がったよ。メッセージ、ありがとうね」
「真由、元気そうになってよかった!でも、真由に伝えたいことがあるの」
「え?何?あまりいい話じゃなさそうね」
恵子は真由に頼子の入院の話をしました。
「え、頼子さん、大丈夫よね。死んだりしないよね。イヤよ、そんなの。絶対元気になるよね、そうよね、恵子」
「耳の病気だから命に別状はないわ、安心して。ただ、少し入院が必要みたい。外に出られるようになったら、真由もお見舞いに行ってあげて。頼子さん、喜ぶと思うわ」
「うん、行く、絶対行く。その時、恵子も一緒にね」
「え?」
「恵子と一緒って言わないと、お見舞いに行けないのよ」
真由は少し小声です。
「OK、分かったわ」
「それにしても恵子はすごいよね。救急車呼んだりして、その後もちゃんと対応してるし。私だったら、頼子さんが倒れたのを見たらパニックになるだけだわ」
「詩絵美のお母さんにも助けてもらったりしたのよ。あ、そうそう、頼子さん、まだ目を開けられないからメッセージ送っても既読にならないから、心配しないようにね」
「いや、それ聞いたら余計に心配になっちゃうよ。でも早くよくなるようにお祈りするわ」
「また、病院へ行ったら、様子を伝えるね」
「恵子、お願いね。それじゃあ、またね」
真由は大きなショックを受けましたが、恵子を信頼して、少し様子を見てみようと思いました。
しばらく歩いていると、スマホの通知音が鳴りました。
詩絵美からのメッセージです。
「詩絵美、ようやく元気になったんだ!」
詩絵美の家のすぐ近くまで来ていたので、家の前まで行ってLINE通話をかけました。
「あ、詩絵美、元気になったのね!今、家の前にいるよ」
2Fを見上げるとカーテンが開き、パジャマ姿の詩絵美が顔を見せて、手を振ってくれます。
「恵子、心配かけてごめんね。メッセージありがとう。まだ隔離期間だから恵子に会えないし、恵子を抱きしめられないのよ」
「詩絵美の顔を見れたら安心したから大丈夫よ」
お互い満面の笑みです。
「恵子、今日はどうしたの?」
「朝、貴浩くんに食事を届けがてら、頼子さんの着替えなどをそろえて、市立S病院へ届けたのよ」
詩絵美の顔が少し曇ります。
「え?貴浩くんに食事届けたの?」
(まあ、詩絵美の心配は頼子さんじゃなくて貴浩くんよね)
「昨夜は私の家で食べてもらったけど、毎回そういう訳にもいかないから、今朝はタッパーに入れて届けたわ。頼子さんが退院するまでは貴浩くん、食事に困るだろうから、少しでも協力するつもりよ」
詩絵美はどんどん不安になります。
「昨夜は恵子の家に貴浩くんを呼んだの?」
「え?貴浩くん、お礼に来たのよ。一応私が救急車を呼んだからね。そのついでにカレーライスを食べていってもらったのよ。詩絵美も外に出られるようになったら、協力してくれると貴浩くんも喜ぶと思うわ」
「え?私も料理するの?」
(そんな‥恵子と比べられてアウトだよ‥ハードルが高すぎるよ‥)
「私、まだビーフストロガノフは作ってないわよ。詩絵美に任せるわ!」
「え!う、うん、いや、あの‥」
詩絵美にとってリスクが大きすぎるチャンスです。
「詩絵美、今、お母さんはいらっしゃる?」
「うん、いるわよ。どうしたの?」
「昨日、頼子さんの件で助けてもらったからお礼を言いたくて」
「ああ、そうだったわね。頼子さんは様子はどうなの?」
「まだ目が開けられないみたい。食事も摂れなくて辛そうだったわ。脳ではなくて、耳の病気だから命に別状はないのは一安心よ」
「そうなのね。外に出られるようになったら、私もお見舞いに行こうかな」
正直、詩絵美は頼子が少し苦手です。
でも頼子は貴浩の姉なので、少しでもいい印象を持ってもらいたいのが本音です。
「詩絵美が元気になってからでいいと思うわ」
「恵子、私が外に出られるようになったら、セックスしようね」
「詩絵美、嬉しいわ!それじゃあ、お母さんに挨拶していくから、またね」
「うん、またね」
恵子は通話を終えるとインターホンを押し、詩絵美の母にお礼を伝えて、そのまま家に向かいました。
通話を終えると詩絵美は何か寂寥感を感じていました。
「何か恵子、少し冷めてるような気がする‥もしかして菜乃花?でも「詩絵美、愛してる」って言葉は、本当よね?私、貴浩くんを愛してるけど、恵子も‥恵子も愛して‥‥」
しかし、どうしても最後まで言い切ることはできません。
「恵子‥やっぱり恵子を菜乃花に取られたくない‥恵子とセックスしたい‥」
詩絵美はベッドに倒れ込み、目から涙が溢れてきました。
恵子は家に帰る途中でいつものベーカリーカフェに立ち寄りました。
「今日は、坂上さん」
「おっ、恵子ちゃんかい?頼子ちゃんが居なくても寄ってくれるのは嬉しいね!」
「今、ちょうど頼子さんに着替えを届けに行ったんですよ」
「頼子ちゃん、どうだい?」
やはり、坂上も心配です。
GWの繁忙期に頼子が抜けるのはかなり痛いですし、いつ頃復帰できるかが気がかりです。
もちろん、それ以上に頼子の様子は気になります。
「まだ目を開けられないって言ってました。症状が治るのに2,3日かかるようです。耳の病気で、脳には影響がないそうです」
「命に別状がないのは安心だけど、症状が治ったらすぐ普通に暮らせるかっていうのは分からないよなあ。まあ、あれこれ言ってても仕方ないか。頼子ちゃんが元気に戻ってくるのを待っていよう」
「そうですね。あ、たまごサンドを持ち帰りでお願いしますね!」
「OK!ついでにプリンの特盛もどうかな?」
「それは結構です!もう、プンプンですよ!」
「おっとっと、こわいこわい」
坂上は笑いながらたまごサンドを作り始めました。
たまごサンドを受け取って家に帰ると、シームレスハイウエストタイツに着替えます。
本当は早く全身タイツを着用したいのですが、食事があるので、お気に入りのハイウエストタイツです。
こちらもお気に入りのシンガポールの紅茶を用意していると、スマホの通知が鳴りました。
今度は真由からです。
「あ、真由も元気になったのね。よかった!」
さっそく真由にTELします。
「恵子、やっと熱が下がったよ。メッセージ、ありがとうね」
「真由、元気そうになってよかった!でも、真由に伝えたいことがあるの」
「え?何?あまりいい話じゃなさそうね」
恵子は真由に頼子の入院の話をしました。
「え、頼子さん、大丈夫よね。死んだりしないよね。イヤよ、そんなの。絶対元気になるよね、そうよね、恵子」
「耳の病気だから命に別状はないわ、安心して。ただ、少し入院が必要みたい。外に出られるようになったら、真由もお見舞いに行ってあげて。頼子さん、喜ぶと思うわ」
「うん、行く、絶対行く。その時、恵子も一緒にね」
「え?」
「恵子と一緒って言わないと、お見舞いに行けないのよ」
真由は少し小声です。
「OK、分かったわ」
「それにしても恵子はすごいよね。救急車呼んだりして、その後もちゃんと対応してるし。私だったら、頼子さんが倒れたのを見たらパニックになるだけだわ」
「詩絵美のお母さんにも助けてもらったりしたのよ。あ、そうそう、頼子さん、まだ目を開けられないからメッセージ送っても既読にならないから、心配しないようにね」
「いや、それ聞いたら余計に心配になっちゃうよ。でも早くよくなるようにお祈りするわ」
「また、病院へ行ったら、様子を伝えるね」
「恵子、お願いね。それじゃあ、またね」
真由は大きなショックを受けましたが、恵子を信頼して、少し様子を見てみようと思いました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる