見てはいけないものが見えてしまう

原口源太郎

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 やっと安らかに眠れる日々を取り戻した。
 しかし、それはわずか数日のことだった。
 部屋の中を誰かがごそごそと歩き回っている気配に気付き、私は目を覚ました。
 薄ぼんやりと光るその姿をひと目見て、意識を再び眠りの中に強制送還させようとしたが、すでに手遅れだった。
「何をしているのですか?」
 私は身を起こしながら貧乏神様に声をかけた。
「ちょっと報告がてら、寄らせてもらったよ」
「報告?」
「そうじゃ。約束したからの。ここを出てから福の神たちに声をかけてみた」
「福の神たち? 福の神様は何人もいるのですか?」
「もちろん。福の神と言っても色々な神がおる。わしのような貧乏神だってたくさんおる」
「え、そうなのですか」
「わしだけで世界中の貧乏人の面倒を見られると思うか?」
「そう言われてみればそうですね」
「それでじゃ。行き会った福の神たちに声をかけてみたんじゃが、どの神も予約がたくさん入っておってすぐには来られないとのことじゃ」
「神様って、予約制なのですか」
 私は驚いて尋ねた。
「まあ、人気のある神は来てほしいという依頼が数多くある。わしは一件の予約もないが」
「まあ、それはそうでしょうね」
 私はそう言ってしまってから失礼な発言だったと気が付いて慌てた。しかし貧乏神様は全然気にしていないようだ。
「福の神たちは大抵一カ所に五年から十年くらいいる。長い時には数十年ということもある。だからここへ来るように予約を入れても、実際に来られるのは百年以上先になる。だから予約はやめておいた」
「そうですね。私はそんなにこの家にいられないし、第一そんなに生きてもいられない」
「まあ、そういうことじゃな」
 その言葉を聞いたとたんに私は悲しくなってきた。福の神様が来てくれないからじゃない。このまま一生、夜になるたびに頭の潰れた女や、手足のもげた男を相手にしていかなければならないのだ。おまけに訳の分からない神様たちまで。
 私の精神はいつまで正常でいられるのだろう。この先ずっと辛い日々を過ごしていくくらいなら、いっそのこと・・・・
 いけない、いけない。
 私は頭を振った。弱気になってはいけない。せっかくこの素晴らしい棲家を手に入れたのだ。もっと人生を楽しまなければ。
 しかし楽しもうにも夜な夜な・・・・
 私はまた頭をぶるぶると振った。
「どうしたんじゃね?」
 貧乏神様が私を心配そうに見つめていた。
「つくづくこの強すぎる霊感が嫌になりました。このままでは気がおかしくなって死んでしまいそうです」
「それは困ったのう」
 私は思わず頭を抱え込んだ。
 貧乏神様も同じように頭を抱え込んだ。
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