天の求婚

紅林

文字の大きさ
上 下
16 / 26
本編

懺悔

しおりを挟む
わたくしたちは一体どこから道を踏み外したのだろうか」

一族の矜恃を踏みにじられた時?

祖国が滅ぼされた時?

自らの誇りを捨てた時?

「……いいえ、取り戻すのよ。私たちは祖国も、誇りも、矜恃も、文化も、何もかもは既に遠い過去に失った」

女は壁に立てかけられた肖像画に問いかけた

「曾祖父様、私たちは貴方様の築き上げた平和の礎を壊します。どうか、ご容赦ください。必ずや私たちは敵を打ち砕き、この負の連鎖を断ち切ってみせます。不浄の浄化は数年前から着々と準備を進め、今日完遂する予定です。我らが繁栄する未来はすぐそこまで迫っております」

女は肖像画に向けて祈るように手をにぎりしめた

「どうか私たちの未来と、貴方様の愛する祖国と民のために、お力をお貸しください。偉大なる狼蘭王よ……」

太平天帝国は侵略と略奪の歴史から今の国際的地位を確立したため、帝政エルバとも呼ばれ恐れられている国家だ。帝国の前身たる天之大安国に滅ぼされた国は八カ国存在するのだ。

「失った誇りを取り戻すときがきたのです」

女はもう一度力ずよく手を握り肖像画へと祈りを捧げた

「……」

その様子を後ろで見守っていた小さな少年は目に涙を浮かべていた

(今日で終わるんだ。幸せな、僕の生活が。ぜんぶ、ぜんぶ!)

少年は祈りを捧げる女の背中を悲しそうにただただ見つめ続けるのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

琥珀いろの夏 〜偽装レンアイはじめました〜

桐山アリヲ
BL
 大学2年生の玉根千年は、同じ高校出身の葛西麟太郎に3年越しの片想いをしている。麟太郎は筋金入りの女好き。同性の自分に望みはないと、千年は、半ばあきらめの境地で小説家の深山悟との関係を深めていく。そんなある日、麟太郎から「女よけのために恋人のふりをしてほしい」と頼まれた千年は、断りきれず、周囲をあざむく日々を送る羽目に。不満を募らせた千年は、初めて麟太郎と大喧嘩してしまい、それをきっかけに、2人の関係は思わぬ方向へ転がりはじめる。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

処理中です...