とある小さな村のチートな鍛冶屋さん

夜船 紡

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トランキル帝国編

魔物と少年

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ーご主人様?

フローの声かけで我にかえる。

「だ、大丈夫なのかな?」
ー怪我はちゃんと癒しておるぞ?放っておいてよかろう。

セラフィはもうすっかり彼に対して興味を失ったようだ。

「でも、あの子、また魔物を倒しに・・・」
ー本人が大丈夫だと判断したからでしょ~。放っておいていいと思うよぉ~

ラリマーも同意している。

「いいんじゃないって、ちっとも良くない!」
ーそうなの~?
ーそうかのう。

この2匹は、私とその他に対しての反応が違いすぎる!
どうしようと悩んだけれど、あの少年が魔物を倒せるかもしれない可能性も否定出来ないので、オパールとオニキスに頼んで、少年の影から見守ることにした。
いざとなったら少年を引き込んで助けよう。

走っているのか、景色がドンドン変わっていく。
速い。一瞬で離れたあの跳躍力といい、脚力が凄いんだろうなぁ。
どれぐらいの距離を進んだのか、もう私にはわからないけれど突然、景色がピタリと止まった。
魔物を発見したのだろうか?

「見つけた!」

少年が小さく呟く声が聞こえた。
視界が浮遊する少年の姿を捉える。
彼が相手にしていた魔物は思っていたよりも小さかった。
その姿はネズミに良く似ているように思った。
けれども少年の攻撃を躱し、大きな声で威嚇するように鳴き、両腕を伸ばす姿は、まるでモモンガのようだ。
先程の印象とは全く違う。
鋭い眼差しにその額には真紅の宝石が煌めく。
次の瞬間、魔物が木に素早く登りはじめる。

「っまて!!」

少年がナイフでその前に切りつけようとする。
しかし、それは失敗に終わった。
魔物の額・・・宝石が光り輝くとまるで鏡のようなものが魔物を守る。

カンッ

「っ!」

ナイフがその鏡に触れる。
その瞬間、影から見える少年の腕に傷がついた。
少年が息を飲むのがわかった。
鏡にナイフが当たる度に少年の傷が増えていく。
あの時の傷はこうしてできたものなのか。
魔物が木の枝へと移動し、少年を見据える。
額の宝石の輝きがより深まると魔物が鳴いた。

「びぃいいいいいい!!!」

魔物がいる枝以外の枝が、葉が、激しく揺れる。
次の瞬間、少年が倒れていた。
魔物は少年に近づくことなくその場を去っていった。
私は影から少年を家へと連れてくるとまたセラフィに手当てを頼む。
しかし、さっきのは何だったんだろ?

「今の魔物は・・・?」
ー珍しいね~カーバンクルじゃないかな~
「カーバンクル?」



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