64 / 78
トランキル帝国編
魔物と少年
しおりを挟む
ーご主人様?
フローの声かけで我にかえる。
「だ、大丈夫なのかな?」
ー怪我はちゃんと癒しておるぞ?放っておいてよかろう。
セラフィはもうすっかり彼に対して興味を失ったようだ。
「でも、あの子、また魔物を倒しに・・・」
ー本人が大丈夫だと判断したからでしょ~。放っておいていいと思うよぉ~
ラリマーも同意している。
「いいんじゃないって、ちっとも良くない!」
ーそうなの~?
ーそうかのう。
この2匹は、私とその他に対しての反応が違いすぎる!
どうしようと悩んだけれど、あの少年が魔物を倒せるかもしれない可能性も否定出来ないので、オパールとオニキスに頼んで、少年の影から見守ることにした。
いざとなったら少年を引き込んで助けよう。
走っているのか、景色がドンドン変わっていく。
速い。一瞬で離れたあの跳躍力といい、脚力が凄いんだろうなぁ。
どれぐらいの距離を進んだのか、もう私にはわからないけれど突然、景色がピタリと止まった。
魔物を発見したのだろうか?
「見つけた!」
少年が小さく呟く声が聞こえた。
視界が浮遊する少年の姿を捉える。
彼が相手にしていた魔物は思っていたよりも小さかった。
その姿はネズミに良く似ているように思った。
けれども少年の攻撃を躱し、大きな声で威嚇するように鳴き、両腕を伸ばす姿は、まるでモモンガのようだ。
先程の印象とは全く違う。
鋭い眼差しにその額には真紅の宝石が煌めく。
次の瞬間、魔物が木に素早く登りはじめる。
「っまて!!」
少年がナイフでその前に切りつけようとする。
しかし、それは失敗に終わった。
魔物の額・・・宝石が光り輝くとまるで鏡のようなものが魔物を守る。
カンッ
「っ!」
ナイフがその鏡に触れる。
その瞬間、影から見える少年の腕に傷がついた。
少年が息を飲むのがわかった。
鏡にナイフが当たる度に少年の傷が増えていく。
あの時の傷はこうしてできたものなのか。
魔物が木の枝へと移動し、少年を見据える。
額の宝石の輝きがより深まると魔物が鳴いた。
「びぃいいいいいい!!!」
魔物がいる枝以外の枝が、葉が、激しく揺れる。
次の瞬間、少年が倒れていた。
魔物は少年に近づくことなくその場を去っていった。
私は影から少年を家へと連れてくるとまたセラフィに手当てを頼む。
しかし、さっきのは何だったんだろ?
「今の魔物は・・・?」
ー珍しいね~カーバンクルじゃないかな~
「カーバンクル?」
フローの声かけで我にかえる。
「だ、大丈夫なのかな?」
ー怪我はちゃんと癒しておるぞ?放っておいてよかろう。
セラフィはもうすっかり彼に対して興味を失ったようだ。
「でも、あの子、また魔物を倒しに・・・」
ー本人が大丈夫だと判断したからでしょ~。放っておいていいと思うよぉ~
ラリマーも同意している。
「いいんじゃないって、ちっとも良くない!」
ーそうなの~?
ーそうかのう。
この2匹は、私とその他に対しての反応が違いすぎる!
どうしようと悩んだけれど、あの少年が魔物を倒せるかもしれない可能性も否定出来ないので、オパールとオニキスに頼んで、少年の影から見守ることにした。
いざとなったら少年を引き込んで助けよう。
走っているのか、景色がドンドン変わっていく。
速い。一瞬で離れたあの跳躍力といい、脚力が凄いんだろうなぁ。
どれぐらいの距離を進んだのか、もう私にはわからないけれど突然、景色がピタリと止まった。
魔物を発見したのだろうか?
「見つけた!」
少年が小さく呟く声が聞こえた。
視界が浮遊する少年の姿を捉える。
彼が相手にしていた魔物は思っていたよりも小さかった。
その姿はネズミに良く似ているように思った。
けれども少年の攻撃を躱し、大きな声で威嚇するように鳴き、両腕を伸ばす姿は、まるでモモンガのようだ。
先程の印象とは全く違う。
鋭い眼差しにその額には真紅の宝石が煌めく。
次の瞬間、魔物が木に素早く登りはじめる。
「っまて!!」
少年がナイフでその前に切りつけようとする。
しかし、それは失敗に終わった。
魔物の額・・・宝石が光り輝くとまるで鏡のようなものが魔物を守る。
カンッ
「っ!」
ナイフがその鏡に触れる。
その瞬間、影から見える少年の腕に傷がついた。
少年が息を飲むのがわかった。
鏡にナイフが当たる度に少年の傷が増えていく。
あの時の傷はこうしてできたものなのか。
魔物が木の枝へと移動し、少年を見据える。
額の宝石の輝きがより深まると魔物が鳴いた。
「びぃいいいいいい!!!」
魔物がいる枝以外の枝が、葉が、激しく揺れる。
次の瞬間、少年が倒れていた。
魔物は少年に近づくことなくその場を去っていった。
私は影から少年を家へと連れてくるとまたセラフィに手当てを頼む。
しかし、さっきのは何だったんだろ?
「今の魔物は・・・?」
ー珍しいね~カーバンクルじゃないかな~
「カーバンクル?」
38
お気に入りに追加
8,863
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。