547 / 1,360
螺旋編 五章:螺旋の戦争
上位者の存在
しおりを挟む
到達者である『神』を圧倒する聖人ユグナリスは、上空で凄まじい戦いを繰り広げる。
それは確かに『神』を追い詰めていたが、しかし都市全体の状況を覆す事は叶っていない。
ユグナリスの推察通りなら、『神』は有限の不死によってその肉体を瞬く間に修復している。
しかし、それは何万という死を迎えなければ終わらない事もユグナリスは推察していた。
『神』を殺し至る為に、どの程度の時間が掛かるのか。
少なくとも数分に一度、ユグナリスは『神』の心臓を始めとして致命傷を与えている。
しかし都市内部で黒い人形達に襲われている者達が持ち堪えられるのは、目算でも一時間程度。
それすら希望的観測の目算であり、『神』を殺し至るまでに彼等が生き残れる可能性は極めて低い。
そうした状況を斬り貫かれ肉体を修復しながら、『神』は悟り微笑んだ。
「――……フッ、アハハッ!!」
「何を笑って……!」
「どれだけ強くなっても、馬鹿は変わってないわね!」
「!」
「認めてあげるわ。確かに『神』としての私の命は有限よ。――……でも私を殺し至るまでに、都市の連中が耐えられるかしら?」
「……ッ!!」
神はそう告げた瞬間、攻撃の為に展開していた光球を全て消失させ、自身の周囲に膨大な量の結界を生み出す。
幾層にも重厚さと分厚さが目に見えて分かる結界は、攻撃を行いながら張っていた数枚の結界とは比べ物にならず、それが目に見える限り百枚以上も展開されていた。
「お前……!!」
「さぁ、どんどん攻撃しなさい。お強い皇子様。……私はアンタや都市の連中が力尽きるまで、耐えるだけにするわ」
「クッ!!」
ユグナリスは防御に徹する『神』に対して舌打ちを鳴らし、その身を赤い閃光として飛翔させながら分厚い結界層に剣で斬り貫く。
それによって幾層かの結界は破壊する事が出来ながらも、すぐに結界は修復し『神』を揺るがすモノではなくなった。
それでもユグナリスは結界を破壊しながら、『神』を殺す為に武器を振るう。
しかし数回それを繰り返す中で、『神』は再び微笑んだ。
「――……フッ」
「な……!?」
ユグナリスは突如として虚脱感に襲われ、飛翔する速度と高度が一気に落ちる。
それに気付いたユグナリスは後退し、一気に飛び退き『神』との距離を開けた。
その様子を見た『神』は、再び喉の奥から響くような高笑いを上げる。
「アハハハッ!! ……はぁ、おかしい。まるで道化ね」
「お前、何をした……!?」
「むしろ、何もしてないとでも思ったの?」
「!」
「結界の中に接触したアンタの生命力と扱ってる魔力を吸わせてるのよ。なんで結界が修復されてるのかも、理解できないのかしら?」
「……まさか、その結界が修復しているのは、俺の生命力と魔力で……!」
ユグナリスは『神』が張った結界の罠を理解し、閃光のように飛翔した攻撃の手が止まる。
それを見て深い微笑みを浮かべた『神』は、愉快そうに話を続けた。
「あら、どうしたの? 攻撃の手が止まってるわよ。私を殺すんでしょ?」
「……ッ」
「それとも、都市の連中が殺されるまで私と一緒に見物するのかしら? いいわよ、同席を許してあげても」
「フザけるなぁああッ!!」
ユグナリスは『神』に煽り挑発され、空中を飛翔しながら留まり身構える。
そして宝剣に集約した高い生命力《オーラ》に『赤』と『緑』の魔力を混ぜ合わせ、再び一つの赤い閃光となって『神』の結界を突き破る事を試みた。
その突撃は今までの比ではなく、数十層という結界を突き破る事に成功する。
しかし途中でユグナリスの突撃は止まり、結界に阻まれながら身体や剣に纏っていた生命力と魔力が一気に消失し、飛翔できずその場で落下を始めた。
「……ク、ソッ……!!」
「――……結局アンタは、戻って来ても何も出来ない無能なのよ。……死になさい」
落下するユグナリスを目にしながら、『神』は結界を解除しながらその魔力を全て右手に持つ杖に集める。
そして持ち手の黒い魔石をユグナリスに向け、そこから巨大な黒い魔力の閃光を撃ち放った。
その黒い閃光を避けられず、ユグナリスは落下しながらそれを浴びる。
そして都市の中央部から僅かに逸れる位置に黒い閃光が貫き、都市に大穴を開けた。
そして黒い閃光が消失した後を見る『神』は、下を見下ろしながら呟く。
「……馬鹿な男。私に勝てると思い上がるなんてね」
『神』はそう呟き、ユグナリスの死を見届けた後に再び都市の状況を見渡す。
やはり状況は変わらず、黒い人形達がそれぞれの布陣に攻め込み、対抗できている者達の疲弊を大きくしていた。
それを見て赤い夜空を見上げた『神』は、勝利を確信する。
「――……やっと、静かな暮らしが出来る。誰にも邪魔されない、誰にも束縛されない、私だけの自由な暮らしが……」
そう微笑みながら述べる『神』は、背に存在する六枚の黒い翼を羽ばたかせ、自身が住んでいた中央で赤く光る巨大な黒い塔に戻ろうとする。
しかしその途中で『神』は目を見開き、小さな黒い塔で起きた変化に気付いた。
「……なに……? なんで、止まってるのよ……」
その変化とは、黒い塔から出現していた黒い人形達が生み出されていない光景。
しかし黒い人形達はまだ動いており、止まっているのは黒い塔だけだった。
「……!」
しかし次の変化にも、『神』は気付く。
黒い塔から新しく生産された人形達の動きが滞り始め、ついに停止する。
そうして生み出される順が遅い人形達が次々と停止し、数千という数だった黒い人形が波が止まるように徐々に停止していく光景を『神』は見下ろしていた。
「……まさか、まさか……!!」
『神』はその光景を見て、何かに気付き、飛翔速度を高めて中央の黒い塔を目指す。
そして黒い塔の表面に右手に持つ杖を触れさせ、驚愕の声を漏らした。
「――……まさか、そんなことあり得ない……! 管理者である私以外の誰かが、防衛機能に介入している……!!」
その事実に驚いた『神』は、再び制御を取り戻そうと両手の平を黒い塔に付ける。
しかし防衛機能の一部である黒い人形達の停止は止められず、『神』は焦りながら声を荒げた。
「なんで、私の制御と命令を無視してるのよ……!? 私は管理者よ!」
『――……そう。君は所詮、箱庭の管理人に過ぎない』
「!?」
『神』は突如として黒い塔から響き聞こえる声に驚き、両手を離して身構える。
しかしその声は止まず、『神』に告げるように述べた。
『君が解除信号を使い休眠状態だった箱庭の防衛機能を稼働させてくれたおかげで、やっと接触が出来たよ』
「……な、なに……!? お前は誰なの!? どうして箱庭の制御を――……」
『単純な話さ。ただ箱庭のパスワードを設定して利用してるだけの管理人よりも、創造主である私の方が箱庭の構造や使い方に詳しいだけだよ』
「創造主……何を言ってるのよ……! お前はいったい……!?」
『君が知らないのも無理はない。私が創造主の片割れだと知ってるのは、今の人間大陸には少ししか残ってない。彼のおかげ……いや、彼のせいかな?』
「……まさか創造主って、創造神のこと……!? じゃあ、アンタはまさか……!!」
『初めまして、それとも久し振りかな? アルトリア=ユースシス=フォン=ローゼン。――……私は創造神の片割れであり、古い親友さ』
そう告げる声の持ち主により箱庭の防衛機能は制御され、次々と黒い人形達が停止していく。
それを見て再び黒い塔の外壁へ手を付けた『神』は、必死に箱庭の制御を取り戻そうとした。
しかしそれは止められず、生み出されていた数千体以上の黒い人形が全て停止して倒れる。
それは『神』に強い動揺と困惑を与え、各地で死闘を繰り広げていた者達を驚愕させた。
それは確かに『神』を追い詰めていたが、しかし都市全体の状況を覆す事は叶っていない。
ユグナリスの推察通りなら、『神』は有限の不死によってその肉体を瞬く間に修復している。
しかし、それは何万という死を迎えなければ終わらない事もユグナリスは推察していた。
『神』を殺し至る為に、どの程度の時間が掛かるのか。
少なくとも数分に一度、ユグナリスは『神』の心臓を始めとして致命傷を与えている。
しかし都市内部で黒い人形達に襲われている者達が持ち堪えられるのは、目算でも一時間程度。
それすら希望的観測の目算であり、『神』を殺し至るまでに彼等が生き残れる可能性は極めて低い。
そうした状況を斬り貫かれ肉体を修復しながら、『神』は悟り微笑んだ。
「――……フッ、アハハッ!!」
「何を笑って……!」
「どれだけ強くなっても、馬鹿は変わってないわね!」
「!」
「認めてあげるわ。確かに『神』としての私の命は有限よ。――……でも私を殺し至るまでに、都市の連中が耐えられるかしら?」
「……ッ!!」
神はそう告げた瞬間、攻撃の為に展開していた光球を全て消失させ、自身の周囲に膨大な量の結界を生み出す。
幾層にも重厚さと分厚さが目に見えて分かる結界は、攻撃を行いながら張っていた数枚の結界とは比べ物にならず、それが目に見える限り百枚以上も展開されていた。
「お前……!!」
「さぁ、どんどん攻撃しなさい。お強い皇子様。……私はアンタや都市の連中が力尽きるまで、耐えるだけにするわ」
「クッ!!」
ユグナリスは防御に徹する『神』に対して舌打ちを鳴らし、その身を赤い閃光として飛翔させながら分厚い結界層に剣で斬り貫く。
それによって幾層かの結界は破壊する事が出来ながらも、すぐに結界は修復し『神』を揺るがすモノではなくなった。
それでもユグナリスは結界を破壊しながら、『神』を殺す為に武器を振るう。
しかし数回それを繰り返す中で、『神』は再び微笑んだ。
「――……フッ」
「な……!?」
ユグナリスは突如として虚脱感に襲われ、飛翔する速度と高度が一気に落ちる。
それに気付いたユグナリスは後退し、一気に飛び退き『神』との距離を開けた。
その様子を見た『神』は、再び喉の奥から響くような高笑いを上げる。
「アハハハッ!! ……はぁ、おかしい。まるで道化ね」
「お前、何をした……!?」
「むしろ、何もしてないとでも思ったの?」
「!」
「結界の中に接触したアンタの生命力と扱ってる魔力を吸わせてるのよ。なんで結界が修復されてるのかも、理解できないのかしら?」
「……まさか、その結界が修復しているのは、俺の生命力と魔力で……!」
ユグナリスは『神』が張った結界の罠を理解し、閃光のように飛翔した攻撃の手が止まる。
それを見て深い微笑みを浮かべた『神』は、愉快そうに話を続けた。
「あら、どうしたの? 攻撃の手が止まってるわよ。私を殺すんでしょ?」
「……ッ」
「それとも、都市の連中が殺されるまで私と一緒に見物するのかしら? いいわよ、同席を許してあげても」
「フザけるなぁああッ!!」
ユグナリスは『神』に煽り挑発され、空中を飛翔しながら留まり身構える。
そして宝剣に集約した高い生命力《オーラ》に『赤』と『緑』の魔力を混ぜ合わせ、再び一つの赤い閃光となって『神』の結界を突き破る事を試みた。
その突撃は今までの比ではなく、数十層という結界を突き破る事に成功する。
しかし途中でユグナリスの突撃は止まり、結界に阻まれながら身体や剣に纏っていた生命力と魔力が一気に消失し、飛翔できずその場で落下を始めた。
「……ク、ソッ……!!」
「――……結局アンタは、戻って来ても何も出来ない無能なのよ。……死になさい」
落下するユグナリスを目にしながら、『神』は結界を解除しながらその魔力を全て右手に持つ杖に集める。
そして持ち手の黒い魔石をユグナリスに向け、そこから巨大な黒い魔力の閃光を撃ち放った。
その黒い閃光を避けられず、ユグナリスは落下しながらそれを浴びる。
そして都市の中央部から僅かに逸れる位置に黒い閃光が貫き、都市に大穴を開けた。
そして黒い閃光が消失した後を見る『神』は、下を見下ろしながら呟く。
「……馬鹿な男。私に勝てると思い上がるなんてね」
『神』はそう呟き、ユグナリスの死を見届けた後に再び都市の状況を見渡す。
やはり状況は変わらず、黒い人形達がそれぞれの布陣に攻め込み、対抗できている者達の疲弊を大きくしていた。
それを見て赤い夜空を見上げた『神』は、勝利を確信する。
「――……やっと、静かな暮らしが出来る。誰にも邪魔されない、誰にも束縛されない、私だけの自由な暮らしが……」
そう微笑みながら述べる『神』は、背に存在する六枚の黒い翼を羽ばたかせ、自身が住んでいた中央で赤く光る巨大な黒い塔に戻ろうとする。
しかしその途中で『神』は目を見開き、小さな黒い塔で起きた変化に気付いた。
「……なに……? なんで、止まってるのよ……」
その変化とは、黒い塔から出現していた黒い人形達が生み出されていない光景。
しかし黒い人形達はまだ動いており、止まっているのは黒い塔だけだった。
「……!」
しかし次の変化にも、『神』は気付く。
黒い塔から新しく生産された人形達の動きが滞り始め、ついに停止する。
そうして生み出される順が遅い人形達が次々と停止し、数千という数だった黒い人形が波が止まるように徐々に停止していく光景を『神』は見下ろしていた。
「……まさか、まさか……!!」
『神』はその光景を見て、何かに気付き、飛翔速度を高めて中央の黒い塔を目指す。
そして黒い塔の表面に右手に持つ杖を触れさせ、驚愕の声を漏らした。
「――……まさか、そんなことあり得ない……! 管理者である私以外の誰かが、防衛機能に介入している……!!」
その事実に驚いた『神』は、再び制御を取り戻そうと両手の平を黒い塔に付ける。
しかし防衛機能の一部である黒い人形達の停止は止められず、『神』は焦りながら声を荒げた。
「なんで、私の制御と命令を無視してるのよ……!? 私は管理者よ!」
『――……そう。君は所詮、箱庭の管理人に過ぎない』
「!?」
『神』は突如として黒い塔から響き聞こえる声に驚き、両手を離して身構える。
しかしその声は止まず、『神』に告げるように述べた。
『君が解除信号を使い休眠状態だった箱庭の防衛機能を稼働させてくれたおかげで、やっと接触が出来たよ』
「……な、なに……!? お前は誰なの!? どうして箱庭の制御を――……」
『単純な話さ。ただ箱庭のパスワードを設定して利用してるだけの管理人よりも、創造主である私の方が箱庭の構造や使い方に詳しいだけだよ』
「創造主……何を言ってるのよ……! お前はいったい……!?」
『君が知らないのも無理はない。私が創造主の片割れだと知ってるのは、今の人間大陸には少ししか残ってない。彼のおかげ……いや、彼のせいかな?』
「……まさか創造主って、創造神のこと……!? じゃあ、アンタはまさか……!!」
『初めまして、それとも久し振りかな? アルトリア=ユースシス=フォン=ローゼン。――……私は創造神の片割れであり、古い親友さ』
そう告げる声の持ち主により箱庭の防衛機能は制御され、次々と黒い人形達が停止していく。
それを見て再び黒い塔の外壁へ手を付けた『神』は、必死に箱庭の制御を取り戻そうとした。
しかしそれは止められず、生み出されていた数千体以上の黒い人形が全て停止して倒れる。
それは『神』に強い動揺と困惑を与え、各地で死闘を繰り広げていた者達を驚愕させた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
379
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる