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第1章 辺獄妄執譚

第69話 涙の果てに

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クリエイターを覗いた煉獄の能力者達は屋敷に転移されると、そこは屋敷の復活場所だった。

クリエイターが二人がそこに向かうだろうと思い飛ばした場所だったが案の定二人はそこにいた。

だが、そこにいたイアソンはメディアを荷物の様に運んでいてメディアは血塗れの服を着て四肢のうち右手のみが残された状態となり、後の手足は無残に切断されていた。それだけでは無く、目があった場所は丸々くり抜かれ、鼻は削がれていたので誰もそれを一目でメディアだとはわからなかった。

可憐な少女の面影はもはや無く、趣味の悪いオブジェと化したメディアを何故彼女と判別出来たかは、一緒に来ていた聖とメイド達がメディアを見て

「うわ~、あれメディアですよ~怖いですね~」

とルムが言い、それを聞いたピキニ・カイカイが

「何!?何故、あんな姿に?」

と驚いた為だ。ピキニ・カイカイの疑問に聖は素っ気ない素振りで

「さあ、よくあるDVじゃないですか?」

と言うと、腕を刀に変えてイアソンを殺そうとした。すると、それを見たビンラディンが慌てて

「待て待て、まだ我々の仲間の居場所がわかっていない!」

と慌てて聖を止めた。すると、聖は仕方なく手を戻しビンラディンがイアソンに近付いていた仲間の居場所を尋ねた。

「貴様!我々の仲間は何処にいる!
今すぐ、言わなければ酷い目を見るぞ!」

とビンラディンが脅すと、イアソンは泣きそうな顔で

「酷い目だと?メディアの姿を見ろ?これ以上酷い目を見れるかッ!」

と怒鳴った。するとビンラディンはイアソンの表情を見て

「いったい、彼女はどうしたんだ?」

と尋ねた。するとイアソンは聖とメイド達の方を見て

「そこにいる女共が、俺の船を襲撃したんだ!そこの女はメディアの障壁をいとも容易く突破して俺の玉座に迫り、魔法を発動しているメディアの足を切り落として拷問した!」

と泣き叫ぶイアソンに煉獄の能力者達は聖を見て鳥肌を立てたが、ビンラディンは

「そんな事はお前がここに来て許される理由にはならない!お前は我々の敵だろう!
どんな目に合わされようと自業自得だ!」

とイアソンを怒鳴った。すると、イアソンは

「確かにそうだ……だが、これならどうだ?
お前達の仲間を解放する変わりにメディアを治せ!お前達はどんな傷を受けても何故か復活する、その能力でメディアを治してくれ!」

泣き叫ぶイアソンにビンラディンは、後ろにいるキング・メイソンを見るとキング・メイソンは

「ここに他人を治療出来る様な能力者はいないし、俺達を治すのはクリエイターの力だ。ここに来てもどうしようも無い」

と言った。すると、イアソンは

「では、クリエイターを呼んでくれ!頼む!」

とイアソンがキング・メイソンに泣き付くと、キング・メイソンは困り果て

「少し待て」

とイアソンに落ち着くよう言うと、他の仲間達と共に話し合った。

「なあ、あれどうすれば良いんだ?
あれを見るとどうしても助けてやりたくなる」

とキング・メイソンが言うと、聖は

「優しいのは良い事ですが、あれは敵ですよ?男も痛め付けて捕虜を解放させましょう」

と言った。すると、ビンラディンは

「それでも良いが彼奴はかなりの大船団を率いて来た、辺獄の状況に詳しいはずだ。情報を得る為にどうにかして要求を飲めないか?」

と言った。すると役小角が

「とは言ってもあんな酷い状態の人間見た事無いぞ?て言うかあれは生きてるのか?」

と言うと、ビンラディンが

「確かに……」

と言うと、役小角がイアソンの方に歩いて行き

「なあ、もし良かったらそいつの脈を測りたいんだけど良いかな?」

と言うと、イアソンは泣きながら

「あ?ああ、構わない」

と言うと、役小角はメディアの右腕にそっと触れて脈を測った。一応、脈はあった。そこで今度は呼吸は確認すると、物凄く弱弱しい声で

「はあ、はあ、イアソン様……」

と言う声が聞こえた。すると、役小角は泣きそうになりながら皆の元に戻り

「彼奴まだ生きてるけど虫の息だ。それなのにイアソン様って言ってた……」

と言うと、続けて

「なあ、ピキニ・カイカイ。お前、生前医者だろ?治してやれよ!」

と言うと、ピキニ・カイカイは

「私は生物学者で医者じゃない!」

と言った。すると、役小角は

「でも改造手術見たいな事したんだろ?大丈夫、お前なら出来るって!」

とピキニ・カイカイを応援した。するとピキニ・カイカイは

「何の信頼だ……それに咲の体を弄った時は注射一本だ」

とピキニ・カイカイが言うと役小角は

「じゃあ、誰か生前医者だった奴はいないのか!」

と必死に言った。すると、皆首を振った。すると、ピキニ・カイカイが

「まあ、どうなっても構わなければ、試す価値がある事が無いでは無いが」

と言うと、役小角は嬉しそうに

「何だよ、あるんじゃ無いか!」

と言うと、ピキニ・カイカイは

「まあ、出来るかはわからないが、私の能力で何でも治せる薬を作れれば治せる可能性がある」

すると、グラスホッパーが

「なんだそれ?そんなもん出来るなら俺達にもくれよ」

と言うと、ピキニ・カイカイは

「そんな薬見た事も聞いた事も無いから出来るかわからない。シェイプシフターや賢者の石を作る時はクリエイターに協力して貰ったから出来たんだ。」

と言うと、役小角が

「良いからやってくれよ!」

と言った。するとピキニ・カイカイは

「わかったわかった。失敗しても私は知らないぞ」

と言うと、能力で薬を生成しアゾット剣の中に入れてメディアの元に向かった。

すると、短剣を持ってメディアに近づくピキニ・カイカイに対してイアソンは

「おい!何をする気だ!やめろ!」

と殴りかかった。するとグラスホッパーが転移してそれを助けにいき、イアソンを止めて

「大丈夫、あれは医療器具だ!」

と言ったが、イアソンは

「何を馬鹿な事を言ってるんだ!
現代社会で瀉血が復活したのか!?」

と恐ろしい物を見るような目でピキニ・カイカイを見た。すると、ピキニ・カイカイは

「何で大昔の人間がそんな事知ってるんだ……まあ良いグラスホッパーしっかり抑えてろ」

と言うと、ピキニ・カイカイはメディアに短剣を突き刺した。

「やめろおおおおおッ!」

とイアソンが叫ぶと、メディアの傷は徐々に塞がっていった。それにイアソンが安心するとメディアの切断された部分から皮が張り、ダルマの状態が元々の姿だった様な再生の仕方をした。するとメディアの意識も回復しメディアが起きると、

「あれ……イアソン様、私……船から転移する様に言われて……」

メディアは暫くぼうっとしていると、徐々に正気に戻って自分の体を見た。すると、自分のおぞましい姿を見て

「きゃあああああああああああッ!」

と絶叫して気絶した。すると、それを見た煉獄の能力者達は皆、絶句しピキニ・カイカイは

「……治したぞ?」

とイアソンに言った。するとイアソンは激高して

「貴様らァッ!ただでは済まさんぞ!」

と暴れ始めた。するとキング・メイソンが

「サイドワインダー、彼奴を縛りあげろ」

とサイドワインダーに指示し

「はあ……了解……」

とイアソンを哀れみながらワイヤーを伸ばしてイアソンを縛り上げた。

イアソンを縛ると、皆は再び話し合い

「どうするんだ!状況が悪化したぞ!」

とピキニ・カイカイが役小角を怒ると、役小角は

「まさか、あんな事になるとは……」

と白い目をしていた。すると、ピキニ・カイカイは

「どうにか、他の手を考えないと」

と言ったその時、普段の体に戻って転移してきたクリエイターが皆の元に現れた。すると、皆期待の眼差しで

「「「「「待ってたぞ!」」」」」

とクリエイターを出迎えた。すると、クリエイターは皆反応を不審に思い

「いったい、何をやらかしたんだ……」

と言うと、ピキニ・カイカイがメディアを指さした。すると、それを見たクリエイターは絶句して

「っ!?
幾ら何でも女の子相手にあんな強行手段に出る事無いだろ!誰がやった?」

とクリエイターが尋ねると、聖が

「ピキニ・カイカイです」

と言うと、クリエイターは

「お前か……まあ、前科持ち出し仕方ないか……」

と死んだ目をして言うと、ピキニ・カイカイは

「待て待て、なんだその目は!諦めた様に私を見るな!私は治療しようとしただけで、元はお前の彼女だ!」

と言うと、クリエイターは聖の方を見た。すると、聖は涙目で

「だって、あの子が旦那様を攻撃すると思って……」

とクリエイターに抱きついた。すると、クリエイターは

「ああ、確かに僕が彼女を止める様に指示したし、君は完璧にその役目を果たしてくれた!君は悪くないよ」

と聖の頭を撫でた。すると、マイスターが

「ああ、あれ程完璧に人間を再起不能にするなんて他人には不可能だ」

と言うと、それを聞いていたスパークルがクリエイターに気付かれない様にマイスターの足を踏んづけた。

「痛ッ!」

マイスターがスパークルを捕まえようとするとスパークルはクリエイターに抱きついて涙目で

「どうして、いつも意地悪するの?」

と言った。すると、クリエイターはため息を付いて

「マイスター、大人になれよ……」

と言った。するとマイスターは

「何でだ!お前が近くにずっといると何しても許されるのか!?」

と言うと、聖とスパークルは舌を出してマイスターを見て、聖はスパークルの頭を撫でた。

クリエイターはそれを見て、

「まあ、確かにあれは哀れだけど、何でそもそも治療しようとしてるんだ?」

と話を切り替えた。するとビンラディンが

「彼女を治す事を条件に我々の捕虜を解放して貰う事になってるんだ」

と言うと、クリエイターは

「それ信用出来るのか?」

と尋ねると、ビンラディンは気絶したメディアを抱いて泣いているイアソンを指さした。

「奴は来た時からずっとあんな調子だ」

ビンラディンにそう言われ、クリエイターは

「まあ、あれなら大丈夫そうだな……」

と言い、続けて

「じゃあ、ちょっと見てみるか智慧ジュウホエは内傷を調べてくれ、僕は外傷を見る」

了解ヤオミンバエ天帝シャンティー!早く治して上げましょう」

智慧ジュウホエも張り切ってメディアの症状を見に行った。

クリエイターはイアソンに事情を話して、メディアの体を機材を使って隅々まで調べた。

暫くして、クリエイターが調べ終わり皆の元に行くと

「なあ、彼女を治療したと言ったが、何をしたんだ?」

と尋ねると、ピキニ・カイカイが

「私の能力で試しに治療薬を作った」

と言った。すると、クリエイターは

「遺伝子的にあの状態が本来の姿って事になってるんだが……」

と言うと、ピキニ・カイカイは

「役小角が強行しろって言ったんだ」

と言った。すると役小角は白い目で

「ああ……俺はなんて事を……」

と上を向いて呟いていた。すると、クリエイターは

「どうするか……マルコ・ポーロ能力でどうにか出来るか?」

とクリエイターが尋ねると

「あれは、どう考えても無理でしょ~」

と言い、次に

「シェヘラザード、能力で何とか出来るか?」

と尋ねると

「すみません……あれは……」

と言った。すると、クリエイターはイアソンの方に行き

「なあ、義手と義足なら用意出来るんだが……」

と言うと、イアソンは

「何故だ!お前の仲間はどんなに傷付いても治療出来るじゃないか!」

と泣き出すと、クリエイターは

「あれは、自殺者しか出来ないんだよ。
悪いけど、これ以上はどうしたって無理だ」

と、イアソンに言った。すると、イアソンは縛られた状態でメディアの顔の横に転がり泣いた。

クリエイターはその間に義手と義足の試作品を作っていると

「んん……イアソン様……」

とメディアが意識を取り戻した。すると、イアソンは立ち上がろうと藻掻いた。それを見たサイドワインダーが哀れに思い、ワイヤーを解くと、イアソンはメディアを先程までとは違いしっかりと抱き締めて

「メディア、すまない……
俺はまた、お前に何もしてやれなかった……」

と悔しそうに言った。するとメディアは

「泣かないで、イアソン様。私は大丈夫ですよ」

と微笑んだ。すると、イアソンはそれを見て更に泣いた。

「メディア、メディアすまない……」

すると、メディアは

「ああ、イアソン様どうか悲しまないでください。私は本当に幸せなんです。貴方にこんなに心配されて……このままずっといたい何て思ったりしますよ?」

と微笑んだ。すると、イアソンは

「ああ、メディア……
こんな目に合えばもう仕方が無い。お前が良ければここで二人……」

イアソンがそう言うと、メディアは

「ふふふ、嬉しい。これで良かったのかもしれませんね。だって、もうこれでずっと一緒に……」

メディアはそう言うと、自分とイアソンの下に魔法陣を展開し、二人の服を炎に変えた。

すると、イアソンはメディアを強く抱き締め、メディアもイアソンを抱きしめた。

「ああ、メディア……」

「イアソン様……」

二人は、炎に包まれあっという間に灰になってしまった。

二人の灰は完全に混ざり合い、最早どちらの物とは判別が付かなかった。二人の意思がお互いを求め合い、自ら混ざりあった様に……

クリエイターは二人が灰になると、消化器を作ってイアソンとメディアの遺灰に粉を吹きかけた。

「おい!何やってんだ!」

クリエイターは、屋敷の中で火を付けられた事を怒りながら、

「おい、イアソン、メディア戻って来い!」

と言って指をパチンと鳴らした。
すると、イアソンとメディアは呆気に取られた状態で復活し

「何が起こったんだ?」

とイアソンがクリエイターに尋ねると

「お前らは焼身自殺したから僕の支配下に入った。よかったな、これで治ったぞ。
さっさとこの焦げた床を片付けろ!」

と怒鳴ると、メディアが魔法で床を治しクリエイターに感謝した。

「ありがとうございます!」

メディアがそう言うと、クリエイターは

「僕はカップルの神様じゃないぞ。お前らを生き返らせたのは慈悲じゃない!さっさと捕虜を解放しろ!」

クリエイターがそう言うと、メディアは

「は、はい!少し待ってくださいね!」

と急いで魔法で聖遺物を取り出して、その能力で捕らえていた捕虜たちをこの場に呼び出した。

すると、それを見たクリエイターが

「その聖遺物の能力は?」

と尋ねるとメディアは

「え?ええと、同意を得た相手を拘束出来る能力です」

と言った。するとクリエイターは

「イアソンも生き返らせたからそれも貰う」

と言った。すると、メディアは

「え!?ええ!どうしましょう!イアソン様」

とイアソンに尋ねた。するとイアソンは

「ぐっ!まあ、良い。現状でその能力が合っても余り効果は無いしな」

と言って渋々クリエイターに聖遺物を渡した。クリエイターがそれを受け取ると聖は

「ねえ、旦那様。その聖遺物私に頂けませんか?」

と言ってきた。すると、クリエイターは

「ん?珍しいね。まあ、君が持っていても僕は能力を使えるし別に良いよ」

と言って聖に聖遺物を渡した。すると聖は

「ありがとうございます!では、旦那様私に拘束される事に同意してください!」

と嬉しそうに言った。クリエイターは渡した事を後悔しながら

「あ、ああ、同意するよ」

と言った。すると、聖は喜んで

「やったー!これで何時でも一緒ですね!」

と言った。クリエイターは仕方なく聖の聖遺物の中に体を一つ入れて聖を満足させた。

聖が満足すると、クリエイターは

「では今出てきた能力者とイアソン、メディアも含めてこれからの事を話し合おう。」

と捕らえていた能力者の方を良く見た。すると、クリエイターは車椅子に乗ったある能力者を見て驚いた。

「スティーブン・ホーキング博士!?」

と感激した様に言ったクリエイターにホーキングは

「ああ、その通りだ。まさか、煉獄の神に知られているとはね。光栄だよ」

と応えると、クリエイターは

「喋れるんですか!?それに此方こそ光栄です!」

と嬉しそうに言った。するとホーキングは

「ああ、死後喋れる様になった。と言うか歩けもするが長年座っていると歩くのが面倒でね。辺獄で作った高性能の車椅子を使っている。」

と応えた。すると、そのまま一生話続けそうなクリエイターを制止してビンラディンが

「ああ、すまないがその話は後にしてくれ。取り敢えず、今後の方針を話したい」

と言った。するとクリエイターはハッとして

「すまない、ではビンラディン話してくれ」

と言った。すると、ビンラディンは

「では、今後の方針を話そう」

と言い、皆はそれに注目した。
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