念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

文字の大きさ
143 / 180

第143話 こんなことがありまして

しおりを挟む
 「なっ、なんだってー!」

 ジョッキを片手に持ったガレインさんの声が店中に鳴り響く。

 デナントミールに戻った俺達は、話し合いを次の日にすることに決めて、その日は休むことになった。

 そして、一夜開けた今日。

 みんなでガレインさん行きつけの店に行き、俺達のことをガレインさんとファクルに話をしていた。

 俺の話に二人は信じられないといった様子でやや呆然としている。

 「じゃあ何か? お前達は俺達のご先祖様かもしれないってことか?」

 「俺達は子供とかはいなかったですから、それはないですけど。でも、そんなところです」

 「名前が違うのはそういう理由だったのか……」

 ガレインさんは納得しつつも、理解が追い付いていない感じで、ファクルの顔を見る。

 「そう言われても困りますよ。俺だってまだ頭の中が混乱してるんですから」

 「まあ、そうか。しかし、俺は歴史に詳しくないが、この世界に精霊がいたなんて話は聞いたことないけどな」

 「そうですね……。民話とかおとぎ話とかでは聞いたことがありますけど、文献とかは残ってないかもしれませんね」

 ガレインさんは「うーむ……」と唸りながら、ジョッキに注がれた酒を飲む。

 「俺達の存在は歴史から抹消されてるのかもしれません。この世界にとってあまり好ましくない出来事だったでしょうしね」

 「七百年くらいなら色々と残っていても良さそうなもんだけどな。とはいえ、お前達の力を見たら信じざる得ないぜ」 

 「あいつの言うことが本当ならですけどね。ただ、この世界が俺達の世界だったというのはありえますね」

 「あの場所はお前達がいる時代からあったのか?」

 「確証はないですけど、アリエルは何となく気付いていたようですし、ウィルが知らずにあの場所を選んだのは偶然とは思えません」
  
 フィオの隣でジョッキを手にしたアリエルが頷いて、俺の言葉に補足を加える。

 「それとあのオーブだ。あれだけでも、ここが私達の世界だったという拠り所にはなる。あれはいつどこで作られたものかは判明していないらしいからな」

 「オルビルトは精霊が残した遺産と言っていたけど、あながち嘘ではないかもしれないな」

 「精霊の力が宿ってるなら、世界を壊滅させるだけの破壊力はあってもおかしくはない」
 
 ガレインさんはボリボリと頭を掻いて、ジョッキの酒を一気に飲み干す。
 
 「あーもう! お前達が何の話をしてるのかさっぱりだぜ! 俺の知らないところで何があったってんだ!」

 「ははっ、そうでしたね。そこの話はともかくとして、俺達のことが大体分かってくれたらそれで大丈夫です」

 「お前達が大昔の人間だったのは分かったけどよ。昔のこの世界ってのはどんな風だったんだ?」
 
 「俺達がいたときは大気に魔力が溢れていて、今みたいにギフトラベルや魔法石が無くても魔法は使えましたよ」

 「そいつは羨ましいな。あっ! そういや、やつがアイテムとかはお前達の時代のものを使ってる、みたいなことを言ってたから、その辺は残ってるかもしれないぞ」

 「落ち着いたら探しに行ってみようかと思います。知ってるものがあるかもしれませんしね」

 「だがなぜ今の時代に転生なんてしたんだろうなあ。やっぱりオルビルトが関係してるとみていいのか?」

 「そうでしょうね。やつを倒すために生まれ変わったとしか考えられません」

 「精霊とお前達の怒りが時代を越えたのか……。しかし、お前だけ異世界に転生した理由はなんなんだろうな?」

 「そこは不思議なんですけどね。ただ、記憶を取り戻すのが遅れたからこそ、リネット達やガレインさん達に会えました」

 「お前さん達の力があればあの二国を潰すことは簡単だし、オルビルトを倒すのはお前達以外無理だろう」
 
 ガレインさんは空になったジョッキを店員に軽く掲げ、乾燥した豆と干し肉を口に放り投げる。

 「昔の俺達は自分達以外の人間と協力して何かをするなんて、考えたこともありませんでした。きっとそれではオルビルトには勝てないってことなんでしょう」

 「なるほどな、それために力が抑制されてたってことか。神さまか精霊か知らんが、中々粋なことをするもんだ」

 「実際のところは分かりませんけど自分ではそう思ってます」

 「少なくとも俺はお前に感謝している。俺がジュラールの最後を見届けることが出来たのはお前と出会ったおかげだ」

 「力が無くてずっともがいていたけど、今までのことは決して無駄じゃなかったはずです。あの二国との戦い……ガレインさんも協力していただけますか?」

 「当然だ。お前達だけにいいカッコさせるかよ。タバサール王も今頃お前の手紙を読んで、準備してるだろう」

 「それからファクル。ディアナは俺達と帰るけど、後でアークと一緒に行動をしてもらおうと思っている」

 「本当か!? それはありがたい話だ!」

 「いた方が士気が上がるだろう。そもそも、俺にディアナを縛る権利なんてないしな」

 「ベルナデッド様を慕ってる人間は多いからな。正直助かる」

 「でも、あの二国のことが片付くまでだからな! その後は俺達に返してもらうぞ!」

 「お前今、縛る権利はないって自分で言わなかったか?」

 「縛る権利はないけど、ディアナが幸せになるのを見守る権利が俺にはある」

 「どんな権利だ……。よろしいんですかベルナデッド様?」

 「気にするなファクル。そいつは私達のことになるとちょっと人が変わるんだ」

 「はあ……。では、俺達は一度サルブレムに行けばいいのか?」

 ファクルはディアナに気の抜けた返事をした後、俺に聞いてくる。

 「ああ、サルブレム側はちょっと複雑かもしれないけど、ここで和解はしておいた方がいいだろう」

 「受け入れてくれればいいんだが……」

 「幸い被害はほとんどなかったし、ディアナと俺からも言っておくよ」

 「頼んだ。本懐を遂げるためにはお前達の力が必要だからな」

 話も決まったところでファクルは店から出ていこうとする。

 「もう行くのか?」

 「みんなが待ってるからな。このことを早く知らせたい」

 「そうか。まさかお前達と一緒に戦う日が来るとは思わなかったよ」

 「こちらもそうさ。一度は袂を分かったガレイン団長とも一緒に戦えるとは思ってもなかった。よろしくお願いしますよ、ガレイン団長」

 ファクルがガレインさんに頭を下げる。

 「ようやく機が熟した。俺がお前達に少し待てと言った意味が少しは解ったか?」

 「ええ、俺達は急ぎすぎたのかもしれません。今はガレイン団長の言ったことが少しは理解出来ます」

 「それも若さだから悪いとは言わない。だが、急には世界を変えることは出来ん。何事もタイミングってのがある」

 「……今がそのときなんですね」

 「俺だってずっと我慢していたんだ。イセリアの敵を取るぞファクル」

 「イセリア殿は俺達団員の太陽でした。それを奪ったムングスルドを許すことは出来ません。共に討ち取りましょう!」

 「これが終わった後、お前達がどうすのか楽しみにしてるぜ。もしまたバカなことをするようだったら次は容赦なくぶん殴るからな?」

 「ははっ、そうならないように次からは過激なことはやらないようにしますよ」

 そう言ってファクルは店から出ていく。

 俺達は次の日にデナントミールを発つことにして、もう一日ゆっくりと過ごす。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

勇者の後物語

波動砲
ファンタジー
表面上とはいえこの世界は平和になった。至って平穏無事で退屈な日常を人々は送れるようになった。そんな平和が来たゆえに、一つの疑問が持ち上がってしまった。 今の世界に『勇者』は必要か否か 勇者とは 曰く。魔王を打ち倒す者 曰く。人類の希望 曰く。救世主 曰く。曰く。曰く しかし、悲しいかな。魔王が死に世界が平和になって数十年。勇者に対する敬意も感謝の気持ちも人々にはなくなり始めていた。平和な世界に勇者はもはや不必要な存在となっていた。この世界に魔王はいない。故にこの世界に絶望はなく。だから希望も必要なく。救世主も必要とされないのだ そして勇者は一通の書き置きと共に忽然と姿を消した 『旅に出ます。探さないでください by勇者』 これは役目を終えた勇者のお話。 ※この作品は筆者が学生の頃に書いた作品です。折角なので投稿しました

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...