138 / 180
第138話 ダメでした
しおりを挟む
双方の放った技が同時に発動する。炎をまとった巨大な岩と、紫の雷が天から降ってきてお互いに相殺し合う。
その衝突で炎と雷を伴った旋風が巻き起こり、遺跡周辺にある全てのものを吹き飛ばしていく。
お互いの技が拮抗していると思われたその矢先……。俺の放った迦具土はウィルの放った霹靂神に粉々に粉砕される。
巨大な岩を貫いた紫の雷はそのまま止まることなく俺に直撃する。
全身に焼けるような痛みと痺れが同時に走り、喉の奥から悲鳴を上げる。
「ぐっ! はあ!」
俺はなんとか倒れるの堪え、剣を杖にして体を支える。
後ろからリネット達の声が聞こえるが、吹き荒れる風の影響で何を言ってるのか耳に入ってこない。
瀕死の俺を見たウィルが剣を納めて歩み寄ってくる。
「結果は前と変わらなかったようだな。お前の負けだ。素直に敗北を認めろ」
「はぁはぁ……。何勝手に剣を納めてるんだ? 勝負はこれからだぞ」
「今のがお互い出せる最高の技のはず。それが私に通じなかった以上、お前に勝ちは無い」
「実はな……あのときには使わなかったけど、俺にはまだ取って置きがあるんだ」
「……なんだと?」
俺は地面から抜いた剣に魔力を吹き込む。
「【燠火・終焉】」
赤く染まっていた黒い剣が更に熱を帯びて、白色に変化していく。
その様子にウィルは僅かに動揺して剣を再度抜く。
「それはバダードの……習得していたのか?」
「ああ、魔力が減って不安はあったけど、技そのものは出るようだ」
「どうして前は使わなかった?」
「迷いがあったからだ……。バダード達の遺言を守りたいという気持ちと、ラティエを殺した帝国に復讐をしたいという気持ちの両方あった」
「お前が我々の復讐を止めようとして、私と一騎討ちをしたとき、そんな心情があったのか……」
「俺だけじゃない。あそこにいる三人だって本当は敵を取りたかったはずだ。でも、俺達はバダードの意志を継ぐことにしたんだよ」
「だが、仮にあのとき私達が復讐を果たさず、お前達が世界の調和を保とうとしたところで、結果は変わらなかったはずだ」
「確かにそうかもしれない。でもな、それはもう終わったことだし、今更そんなことを言っても仕方ないだろう。俺達の戦いはもう終わったんだ……ウィル」
「まだ終わってなどいない! それに、そのような台詞は私に勝ってから言ってもらおうか!」
ウィルの剣に再び紫の雷が帯電し始める。
「ああ、お前に憑いた過去の怨念は俺が払ってやる!」
俺は白く輝く剣をウィルに向け、最後の技を使う。
「これで最後だ! 【灰儘神楽】!」
俺の周囲に炎が激しく舞い上がり、その炎を剣で絡めとるように薙ぎ払う。
剣に全ての炎が集まって白炎となり、ウィルに飛んでいく。
「受けて立とう! 【霹靂神】!」
空から音鳴り響き、紫の雷が白炎にぶつかる。しかし、白炎の勢いは止まることなく、ウィルとその周辺を呑み込んでいく。
ウィルが立っていた場所を中心にして爆発が起こり、その衝撃で少し離れてあった遺跡の形が更に変わる。
遺跡を囲んであった木が燃えだし、辺りに焦げ臭い煙が立ち込める。
力を使い果たした俺は、剣を鞘に戻してウィルが立っていた場所を見据える。
そのとき、煙の中からこっちに向かって人が歩いてくる。
「ま、まだだ……私はここで負けるわけにはいかないのだ……」
「その体では無理だウィル……」
ウィルがよろめきながらも剣を構えて戦おうとする。
「お前の負けだよジュラール」
煙の中からガレインさんが現れて、よろめくウィルに肩を貸す。
「負けを認めたくないのは分かるが、これ以上やったら死ぬぜ?」
「止めるなガレインよ。私はまだ戦える……」
「バカが! 勝負はもう着いたんだよ! 自分の剣を見てみろ」
そう言われ、ウィルは自分の剣が折れていることに初めて気付く。
「……そうか……私の負けか……」
そう呟いた直後、戦いの終わりを告げるかのように雨が降りだす。
「これでお前はもうウィルじゃない。お前はジュラールで俺はアカツキソウタだ。これからは過去のことを忘れて今を生きろ」
「今を……だと?」
「そうだ。こんな世直しみたいなことする前にディアナの気持ちに答えてやれ。ラティエの復讐はともかく、あいつはそれ以外のことは望んでいないはずだ」
「そんなことお前に言われるまでもない。ディアナのことはちゃんと考えている」
「お前の周りには沢山慕ってくれるやつがいるんだから、そっちにもちゃんと目を向けて大事にしろよな」
「お前に言われずとも分かっているさ……だが、負けた私には何も残らないだろう……」
「アークの連中はお前の力だけに惚れ込んで付いてきたわけじゃないだろう? それとアナスタシアがお前のこと心配してたぞ。帰って顔くらい見せてやれよ」
それを聞いたガレインさんが何かを閃き、俺の後に続く。
「良いことを思い付いたぞ! 俺がここに来ることは姫には内緒にしてるんだがな。このままお前を連れて帰れば、姫もさぞお喜びになるに違いない!」
「勝手に決められては困るが、まだ私のことを気にかけてくれていたとはな……」
雨で火と煙が収まり、リネット達とアークの人間が集まってくる。
「勝ったのねソウタ!」
リネットがタオルを持って駆け寄ってくる。
「なんとかな。でもまだ、全て片付いたとは言えない」
受け取ったタオルで頭を拭きながら、ディアナ達の方を見る。
ディアナは何も言わずウィルに肩を貸し、ファクルは下を向いたまま拳を握りしめる。
「そんな……ジュラール様が負けるなんて……。これからというときになんということだ!」
ガレインさんが打ちひしがれたファクル達にウィルが負けたことをはっきりと告げる。
「アークよ! よく聞け! この勝負ジュラールの負けだ! 俺は立会人として中立の立場でこの勝負を見届けた。それでも納得がいかないやつがいるなら俺が相手になってやる!」
「ガレイン団長……」
「いい勝負だったなファクル。ジュラールは勝負に負けたがアークは自由だ。お前達の好きにするといい」
ガレインさんの後ろからアリエルが出てきて俺とウィルの肩を叩く。
「うむ、確かにどっちが勝ってもおかしくない、良い勝負だった。二人ともよくやった!」
「実はもう魔力がすっからかんだから、あれでダメだったら負けてたよ。それからディアナ……悪いけど約束は守ってもらうぞ」
俺は少し後ろめたい気持ちでディアナに確認を取る。
「ああ、約束は守ろう」
ディアナは俺にそう言った後、悲しみと安堵が入り交じった複雑な表情で、静かに一人言を呟く。
「いや……これで良かったのかもしれん……」
その衝突で炎と雷を伴った旋風が巻き起こり、遺跡周辺にある全てのものを吹き飛ばしていく。
お互いの技が拮抗していると思われたその矢先……。俺の放った迦具土はウィルの放った霹靂神に粉々に粉砕される。
巨大な岩を貫いた紫の雷はそのまま止まることなく俺に直撃する。
全身に焼けるような痛みと痺れが同時に走り、喉の奥から悲鳴を上げる。
「ぐっ! はあ!」
俺はなんとか倒れるの堪え、剣を杖にして体を支える。
後ろからリネット達の声が聞こえるが、吹き荒れる風の影響で何を言ってるのか耳に入ってこない。
瀕死の俺を見たウィルが剣を納めて歩み寄ってくる。
「結果は前と変わらなかったようだな。お前の負けだ。素直に敗北を認めろ」
「はぁはぁ……。何勝手に剣を納めてるんだ? 勝負はこれからだぞ」
「今のがお互い出せる最高の技のはず。それが私に通じなかった以上、お前に勝ちは無い」
「実はな……あのときには使わなかったけど、俺にはまだ取って置きがあるんだ」
「……なんだと?」
俺は地面から抜いた剣に魔力を吹き込む。
「【燠火・終焉】」
赤く染まっていた黒い剣が更に熱を帯びて、白色に変化していく。
その様子にウィルは僅かに動揺して剣を再度抜く。
「それはバダードの……習得していたのか?」
「ああ、魔力が減って不安はあったけど、技そのものは出るようだ」
「どうして前は使わなかった?」
「迷いがあったからだ……。バダード達の遺言を守りたいという気持ちと、ラティエを殺した帝国に復讐をしたいという気持ちの両方あった」
「お前が我々の復讐を止めようとして、私と一騎討ちをしたとき、そんな心情があったのか……」
「俺だけじゃない。あそこにいる三人だって本当は敵を取りたかったはずだ。でも、俺達はバダードの意志を継ぐことにしたんだよ」
「だが、仮にあのとき私達が復讐を果たさず、お前達が世界の調和を保とうとしたところで、結果は変わらなかったはずだ」
「確かにそうかもしれない。でもな、それはもう終わったことだし、今更そんなことを言っても仕方ないだろう。俺達の戦いはもう終わったんだ……ウィル」
「まだ終わってなどいない! それに、そのような台詞は私に勝ってから言ってもらおうか!」
ウィルの剣に再び紫の雷が帯電し始める。
「ああ、お前に憑いた過去の怨念は俺が払ってやる!」
俺は白く輝く剣をウィルに向け、最後の技を使う。
「これで最後だ! 【灰儘神楽】!」
俺の周囲に炎が激しく舞い上がり、その炎を剣で絡めとるように薙ぎ払う。
剣に全ての炎が集まって白炎となり、ウィルに飛んでいく。
「受けて立とう! 【霹靂神】!」
空から音鳴り響き、紫の雷が白炎にぶつかる。しかし、白炎の勢いは止まることなく、ウィルとその周辺を呑み込んでいく。
ウィルが立っていた場所を中心にして爆発が起こり、その衝撃で少し離れてあった遺跡の形が更に変わる。
遺跡を囲んであった木が燃えだし、辺りに焦げ臭い煙が立ち込める。
力を使い果たした俺は、剣を鞘に戻してウィルが立っていた場所を見据える。
そのとき、煙の中からこっちに向かって人が歩いてくる。
「ま、まだだ……私はここで負けるわけにはいかないのだ……」
「その体では無理だウィル……」
ウィルがよろめきながらも剣を構えて戦おうとする。
「お前の負けだよジュラール」
煙の中からガレインさんが現れて、よろめくウィルに肩を貸す。
「負けを認めたくないのは分かるが、これ以上やったら死ぬぜ?」
「止めるなガレインよ。私はまだ戦える……」
「バカが! 勝負はもう着いたんだよ! 自分の剣を見てみろ」
そう言われ、ウィルは自分の剣が折れていることに初めて気付く。
「……そうか……私の負けか……」
そう呟いた直後、戦いの終わりを告げるかのように雨が降りだす。
「これでお前はもうウィルじゃない。お前はジュラールで俺はアカツキソウタだ。これからは過去のことを忘れて今を生きろ」
「今を……だと?」
「そうだ。こんな世直しみたいなことする前にディアナの気持ちに答えてやれ。ラティエの復讐はともかく、あいつはそれ以外のことは望んでいないはずだ」
「そんなことお前に言われるまでもない。ディアナのことはちゃんと考えている」
「お前の周りには沢山慕ってくれるやつがいるんだから、そっちにもちゃんと目を向けて大事にしろよな」
「お前に言われずとも分かっているさ……だが、負けた私には何も残らないだろう……」
「アークの連中はお前の力だけに惚れ込んで付いてきたわけじゃないだろう? それとアナスタシアがお前のこと心配してたぞ。帰って顔くらい見せてやれよ」
それを聞いたガレインさんが何かを閃き、俺の後に続く。
「良いことを思い付いたぞ! 俺がここに来ることは姫には内緒にしてるんだがな。このままお前を連れて帰れば、姫もさぞお喜びになるに違いない!」
「勝手に決められては困るが、まだ私のことを気にかけてくれていたとはな……」
雨で火と煙が収まり、リネット達とアークの人間が集まってくる。
「勝ったのねソウタ!」
リネットがタオルを持って駆け寄ってくる。
「なんとかな。でもまだ、全て片付いたとは言えない」
受け取ったタオルで頭を拭きながら、ディアナ達の方を見る。
ディアナは何も言わずウィルに肩を貸し、ファクルは下を向いたまま拳を握りしめる。
「そんな……ジュラール様が負けるなんて……。これからというときになんということだ!」
ガレインさんが打ちひしがれたファクル達にウィルが負けたことをはっきりと告げる。
「アークよ! よく聞け! この勝負ジュラールの負けだ! 俺は立会人として中立の立場でこの勝負を見届けた。それでも納得がいかないやつがいるなら俺が相手になってやる!」
「ガレイン団長……」
「いい勝負だったなファクル。ジュラールは勝負に負けたがアークは自由だ。お前達の好きにするといい」
ガレインさんの後ろからアリエルが出てきて俺とウィルの肩を叩く。
「うむ、確かにどっちが勝ってもおかしくない、良い勝負だった。二人ともよくやった!」
「実はもう魔力がすっからかんだから、あれでダメだったら負けてたよ。それからディアナ……悪いけど約束は守ってもらうぞ」
俺は少し後ろめたい気持ちでディアナに確認を取る。
「ああ、約束は守ろう」
ディアナは俺にそう言った後、悲しみと安堵が入り交じった複雑な表情で、静かに一人言を呟く。
「いや……これで良かったのかもしれん……」
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
勇者の後物語
波動砲
ファンタジー
表面上とはいえこの世界は平和になった。至って平穏無事で退屈な日常を人々は送れるようになった。そんな平和が来たゆえに、一つの疑問が持ち上がってしまった。
今の世界に『勇者』は必要か否か
勇者とは
曰く。魔王を打ち倒す者
曰く。人類の希望
曰く。救世主
曰く。曰く。曰く
しかし、悲しいかな。魔王が死に世界が平和になって数十年。勇者に対する敬意も感謝の気持ちも人々にはなくなり始めていた。平和な世界に勇者はもはや不必要な存在となっていた。この世界に魔王はいない。故にこの世界に絶望はなく。だから希望も必要なく。救世主も必要とされないのだ
そして勇者は一通の書き置きと共に忽然と姿を消した
『旅に出ます。探さないでください by勇者』
これは役目を終えた勇者のお話。
※この作品は筆者が学生の頃に書いた作品です。折角なので投稿しました
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる