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第99話 この常識非常識
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テヘルさんが取りに行ってる間マリィの考えを聞いてみる。
「なあマリィ、もしかして失踪した人達を探すつもりなのか?」
「せっかくここまで来たんだ、それで協力してもらえるかもしれないんだったら、やってみる価値はあるだろう」
「やっぱりか。俺も同じことを考えていたからそうだと思ったよ」
「ダメなら別の手を考えるだけだ。しかし、それとは関係なく人が失踪するというのは気になってな」
話をしていたらテヘルさんが戻ってきて紐を見せてくれる。
ただの紐かと思いきや、長くて赤い紐の先には二つの穴が開いた布が付いている。
「これって……」
この人達には珍しいかもしれないが、俺からしたらどう見ても犬とかを散歩させるリードと胴輪にしか見えない。
「ええ、珍しいでしょう。特にその紐なんかはどんな素材を使ってるのかも、どうやったらそんなに頑丈に編み込めるのかも分からないんです」
「これは……犬とかを散歩させるのに使ったりするやつじゃないんですか?」
「犬を……? はっはっはっ! そんなわけないでしょう。紐だけならともかくその変な布の説明がつきませんよ」
「多分ですけどこの二つ穴に前足を通して、体を包みこむように装着するタイプのやつだと思うんですけどね」
俺は犬が目の前に居ると仮定して取り付け方の説明をする。
「あっはっはっはっはっはっ! 犬は首に紐を巻いて繋いでおくものですよ。それにそんな小さい犬なんていませんって」
テヘルさんは俺の説明に肩を盛大に揺らせて大笑いをする。
「ああ! それか猫を散歩するためのやつかもしれませんね」
「ねねね、猫!? いーひっひひ!」
テヘルさんは腹を抱えて薄気味の悪い笑い方をする。
「こんなときに冗談はやめてくれ! 猫を散歩なんてさせるやつなんてどこの世界に居るというんだね。発想は面白いがそれはきっと別の用途に使われる物だよ」
ダメだ……全然信じてもらえない。まさかこんな形で異世界との壁を感じるとは思わなかったな。
「いや、ソウタの言うこともあながち間違いではないかもしれんぞ」
「だよな? マリィ達の世界でもこういうの売ってるのか?」
「ああ、これはペット用の物だろう」
マリィが神妙な面持ちで紐を見つめて頷くと、テヘルさんは何を言っているんだといった感じで目をパチクリさせる。
「まさか君達の国には本当にこんな物があるのか? 君もなにやら珍しい格好をしてるみたいだが……」
「ええ、私達の世界の物かもしれませんね。すみませんが、すぐに返しますので少しの間これを貸していただけませんか?」
「ちゃんと返してくれるのであれば問題無いがそんなものを何に使うんだ?」
「ちょっと試してみたいことがあります。汚したりはしませんので安心して下さい」
マリィは袋の中に紐と布を入れて懐にしまう。
「じゃあ紹介状の方はどうするね? もし必要なら海賊のことも含めて書いておくよ」
「それは是非ともお願いします! ダメ元で相談にだけは行ってみたいと思います」
後日紹介状を取りに来るよう言われて俺達はミェスターを後にする。
ゼダックさんは一度船に戻るとらしいのでここで別れることに。
「紹介状も書いてくれるみたいだし、まあ良かったとするしかねえなボウズ」
「ちょっと厳しそうではありますけど、収穫があっただけでも良かったですよ」
「今日のところはうめえもんでも食べて元気出せ! 港町だけあって色んな魚が食えるから食ってくるといい」
「そうですね! この町に来たばかりだし、そうしましょうか」
「俺達も今日は宴会だからお前達もそうしろ。俺は海賊の件でしばらくこの町に居るから、暇なときにでも顔を出せ。じゃあな!」
港に戻っていくゼダックさんを見送り、俺達はレグルスさんに宿屋までに案内してもらう。
「宿屋まで案内してもらってすみません。おかげで助かりました」
「いやいや、君達の手伝いをする条件で俺達は免罪にしてもらったんだから気にしないでくれ」
「そういえばアンドラさんや他の人はどうなったんですか?」
「今頃みんな家に帰ってるはずだ。騒がせてすまなかったな」
そう言ってレグルスさんは俺に一枚の紙を渡す。
「そこに俺やみんなの家がある場所を書いてあるから、いつでも俺達を呼んでくれていい」
「ゼダックさんに言われたとはいえ、そこまでしてもらうわけにはいきませんよ」
「事情は詳しく知らないが君達も大変なようだから遠慮はしないでほしい。微力ながら俺も手伝わせてもらうよ」
「分かりました。じゃあそのときはお願いしますね」
レグルスさんはそれに満足したのか、笑顔で家に帰っていく。
「何もしてないけどもう疲れちゃったわね。早く飲み物でも飲みに行きましょう」
「そうしようか。どっちしろ今日はもう出来ることは無いし、急いでもいい結果にはならないだろう」
リネットに急かされ、俺達は宿屋に荷物を置いて遅めの昼食を取りに行くことにする。
町を散策していたらオープンテラスのお店が見つかったのでそこで食事をすることに決める。
「変な時間だから客がほとんど居ないみたいだな」
「貸切状態でいいじゃない。のんびり食事が楽しめるわ」
「なんでも魚がうまいって言ってたからな。なんにするかな……」
「ねえ! このマジカルフィッシュのレインボー揚げなんていいんじゃない?」
「へえ、そんなのあるのか。名前からどんな料理かまったく想像出来ないな」
「私はこの帝王イカのステーキってやつが食べたいよ!」
リネットとフィオが他にも食べたいもの次々と言い出し、サーシャがそれをやんわり止める。
「珍しい料理が並んでるから注文したくなるのは分かるけど、二人ともそんなに頼んでも食べきれないでしょ? マリィは何を頼むのかしら?」
「私はサーシャと同じものを頼んでおいてくれ」
そう答えたマリィはメニューも見ずに、先程借りてきた紐と布を取り出して眺めている。
「それってやっぱり異世界から持ち込まれたものじゃないのか?」
「それは間違いないだろうが、問題はなぜこれがこの国に落ちていたのかということだな」
「異世界から来た人間は限られてるからな。可能性があるとすればフレッド達なんだろうけど、もしかしてこの国で何かやってるのか?」
「断定は出来ないが、もしこれが失踪者に関係してるかもしれないなら、調べてみないといけないだろう」
「奴等なら放っておくわけにはいかないしこの国の人達を助けないとな」
マリィは周囲を見渡し、人が居ないのを確認してから「来いガルム」と手に向かって呼び掛ける。
すると手首辺りから光が漏れ出てきて、その光が徐々に犬の形となっていく。
光の粒子が集まって出現した真っ黒な犬が静かに口を開く。
「お呼びですか? マリィ様」
「なあマリィ、もしかして失踪した人達を探すつもりなのか?」
「せっかくここまで来たんだ、それで協力してもらえるかもしれないんだったら、やってみる価値はあるだろう」
「やっぱりか。俺も同じことを考えていたからそうだと思ったよ」
「ダメなら別の手を考えるだけだ。しかし、それとは関係なく人が失踪するというのは気になってな」
話をしていたらテヘルさんが戻ってきて紐を見せてくれる。
ただの紐かと思いきや、長くて赤い紐の先には二つの穴が開いた布が付いている。
「これって……」
この人達には珍しいかもしれないが、俺からしたらどう見ても犬とかを散歩させるリードと胴輪にしか見えない。
「ええ、珍しいでしょう。特にその紐なんかはどんな素材を使ってるのかも、どうやったらそんなに頑丈に編み込めるのかも分からないんです」
「これは……犬とかを散歩させるのに使ったりするやつじゃないんですか?」
「犬を……? はっはっはっ! そんなわけないでしょう。紐だけならともかくその変な布の説明がつきませんよ」
「多分ですけどこの二つ穴に前足を通して、体を包みこむように装着するタイプのやつだと思うんですけどね」
俺は犬が目の前に居ると仮定して取り付け方の説明をする。
「あっはっはっはっはっはっ! 犬は首に紐を巻いて繋いでおくものですよ。それにそんな小さい犬なんていませんって」
テヘルさんは俺の説明に肩を盛大に揺らせて大笑いをする。
「ああ! それか猫を散歩するためのやつかもしれませんね」
「ねねね、猫!? いーひっひひ!」
テヘルさんは腹を抱えて薄気味の悪い笑い方をする。
「こんなときに冗談はやめてくれ! 猫を散歩なんてさせるやつなんてどこの世界に居るというんだね。発想は面白いがそれはきっと別の用途に使われる物だよ」
ダメだ……全然信じてもらえない。まさかこんな形で異世界との壁を感じるとは思わなかったな。
「いや、ソウタの言うこともあながち間違いではないかもしれんぞ」
「だよな? マリィ達の世界でもこういうの売ってるのか?」
「ああ、これはペット用の物だろう」
マリィが神妙な面持ちで紐を見つめて頷くと、テヘルさんは何を言っているんだといった感じで目をパチクリさせる。
「まさか君達の国には本当にこんな物があるのか? 君もなにやら珍しい格好をしてるみたいだが……」
「ええ、私達の世界の物かもしれませんね。すみませんが、すぐに返しますので少しの間これを貸していただけませんか?」
「ちゃんと返してくれるのであれば問題無いがそんなものを何に使うんだ?」
「ちょっと試してみたいことがあります。汚したりはしませんので安心して下さい」
マリィは袋の中に紐と布を入れて懐にしまう。
「じゃあ紹介状の方はどうするね? もし必要なら海賊のことも含めて書いておくよ」
「それは是非ともお願いします! ダメ元で相談にだけは行ってみたいと思います」
後日紹介状を取りに来るよう言われて俺達はミェスターを後にする。
ゼダックさんは一度船に戻るとらしいのでここで別れることに。
「紹介状も書いてくれるみたいだし、まあ良かったとするしかねえなボウズ」
「ちょっと厳しそうではありますけど、収穫があっただけでも良かったですよ」
「今日のところはうめえもんでも食べて元気出せ! 港町だけあって色んな魚が食えるから食ってくるといい」
「そうですね! この町に来たばかりだし、そうしましょうか」
「俺達も今日は宴会だからお前達もそうしろ。俺は海賊の件でしばらくこの町に居るから、暇なときにでも顔を出せ。じゃあな!」
港に戻っていくゼダックさんを見送り、俺達はレグルスさんに宿屋までに案内してもらう。
「宿屋まで案内してもらってすみません。おかげで助かりました」
「いやいや、君達の手伝いをする条件で俺達は免罪にしてもらったんだから気にしないでくれ」
「そういえばアンドラさんや他の人はどうなったんですか?」
「今頃みんな家に帰ってるはずだ。騒がせてすまなかったな」
そう言ってレグルスさんは俺に一枚の紙を渡す。
「そこに俺やみんなの家がある場所を書いてあるから、いつでも俺達を呼んでくれていい」
「ゼダックさんに言われたとはいえ、そこまでしてもらうわけにはいきませんよ」
「事情は詳しく知らないが君達も大変なようだから遠慮はしないでほしい。微力ながら俺も手伝わせてもらうよ」
「分かりました。じゃあそのときはお願いしますね」
レグルスさんはそれに満足したのか、笑顔で家に帰っていく。
「何もしてないけどもう疲れちゃったわね。早く飲み物でも飲みに行きましょう」
「そうしようか。どっちしろ今日はもう出来ることは無いし、急いでもいい結果にはならないだろう」
リネットに急かされ、俺達は宿屋に荷物を置いて遅めの昼食を取りに行くことにする。
町を散策していたらオープンテラスのお店が見つかったのでそこで食事をすることに決める。
「変な時間だから客がほとんど居ないみたいだな」
「貸切状態でいいじゃない。のんびり食事が楽しめるわ」
「なんでも魚がうまいって言ってたからな。なんにするかな……」
「ねえ! このマジカルフィッシュのレインボー揚げなんていいんじゃない?」
「へえ、そんなのあるのか。名前からどんな料理かまったく想像出来ないな」
「私はこの帝王イカのステーキってやつが食べたいよ!」
リネットとフィオが他にも食べたいもの次々と言い出し、サーシャがそれをやんわり止める。
「珍しい料理が並んでるから注文したくなるのは分かるけど、二人ともそんなに頼んでも食べきれないでしょ? マリィは何を頼むのかしら?」
「私はサーシャと同じものを頼んでおいてくれ」
そう答えたマリィはメニューも見ずに、先程借りてきた紐と布を取り出して眺めている。
「それってやっぱり異世界から持ち込まれたものじゃないのか?」
「それは間違いないだろうが、問題はなぜこれがこの国に落ちていたのかということだな」
「異世界から来た人間は限られてるからな。可能性があるとすればフレッド達なんだろうけど、もしかしてこの国で何かやってるのか?」
「断定は出来ないが、もしこれが失踪者に関係してるかもしれないなら、調べてみないといけないだろう」
「奴等なら放っておくわけにはいかないしこの国の人達を助けないとな」
マリィは周囲を見渡し、人が居ないのを確認してから「来いガルム」と手に向かって呼び掛ける。
すると手首辺りから光が漏れ出てきて、その光が徐々に犬の形となっていく。
光の粒子が集まって出現した真っ黒な犬が静かに口を開く。
「お呼びですか? マリィ様」
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