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黎編
20話過去②
しおりを挟む太一とよく遊ぶようになった。
おれの───大切な友達だ。
大切な…友達。もう、二度となくしたくはない。もう…傷つけないと決めた。
だからおれは太一がいじめられていたら全力で守った。
太一のことが───大切だったから。
ある日、太一がおれを呼び出した。
「どうした?太一。」
「ううん、ただ…黎と話がしたかっただけ。」
太一はそういうとにこっと笑顔を見せた。
待ち合わせ場所はプールだった。
この時期は冬でプールの水が端の方だけ凍っていた。
「みて、ここの景色。綺麗じゃない?」
太一がそういってプールサイドから見える景色を見せてくれた。
そのときは夕方で太陽がオレンジ色に輝いていた。
オレンジ色の太陽がプールにも反射していてキラキラと波をうっていた。
まるで二つの太陽に囲まれているようで…不思議な気持ちになった。
「とても…綺麗だな。」
「でしょ?」
太一はそう笑った。
そのあと、色んな話をした。担任の先生の話とか授業の話。家の話。
とても────楽しかった。
今まで生きていた中で一番。
太一は話しているとふと、こんなことを聞いてきた。
「ねぇ────なんで、黎はいじめられてるんだと思う?」
「え…?」
いきなりの質問におれは戸惑いを隠せなかった。
「それは…。」
「…わからないよね?」
太一はそういっておれに答えてくれた。
「…優等生、だかららしいよ。あんなの、ただの妬みだよ。」
「そうか…。」
優等生…。それはおれがいいこだからなのか。
おれが、いいこをやめたらいじめを止めてくれるんだろうか。そう考えた。
「じゃあさ───なんで僕はいじめられてるか、わかる?」
太一はそう、問いかけた。
「…え?」
おれは…太一がいきなりそんなことを聞いてきたため動揺していた。
太一が────いじめられてる理由?
なんだ、それ。
「わからない。」
「…だよね。」
太一はそういうとすっと立ち上がった。
オレンジ色の太陽が太一をオレンジに移していた。目が光でチカチカする。
眩しい。
「─────────ボソッ黎君のせいだよ。」
そう聞こえた、その瞬間───
ドンっ。
身体を────思いっきり押された。
おれはその拍子に、そのまま───
バシャッ!!
プールに落ちた。
一瞬のことでわからなかった。
けど───おれを落としたときの太一の顔が見えた。
─────鋭い目。赤い、瞳がおれを睨みつけるように見ていた。
「お前の────せいだっ!!!」
太一の声が聞こえる。
太一の─────苦しむ声が。
「僕がどうしていじめられてるか…お前にはわかんねぇだろ!!
知ってるか!?
お前の───友達だからだって…!!
お前はおれのこと、物みたいに捨てたくせにっ…!!
友達じゃないのに…お前と一緒にいたからっていうただそれだけの理由でいじめられて…!!
お前に────おれの気持ちがわかるか!?
お前のせいで…おれの学校生活は最悪だっ!!
毎日、毎日ビクビクしながら生活して…!
おれのせいじゃないのにっ!!
おれが悪くないのにっ───!!
てめぇのせいで!!
てめぇが────おれの人生をぐちゃぐちゃにしたんだ!!
お前なんか、出会わなければよかった!!
友達なんかに───ならなきゃよかった!!
お前たちなんか───溺れて死んじゃえ!!
この────裏切り者!!」
声が───聞こえた。太一の…本音。
知らなかった。太一がどうしていじめられていたのか…。
そうか…。
おれの─────せいだったのか。
おれが…太一を傷つけた。知らず知らずの間に…。
おれは、また、太一と友達になれたと喜んでいた。
けど──それはおれの勘違いだった。
それどころか───おれは。
太一を巻き込んでしまった。
おれなんて────。おれなんか──
いなくて、よかったんだ。
誰にも望まれてはいない。おれは…最低だ…。
───────バカだった。
人の気持ちを考えず、自分の気持ちを優先したからだ。
─────これは、自分への罰だ。
あぁ…。
痛い…苦しい…。寒い…。
おれは───最低だっ。
「うっ…っ。うっ…。」
冷たくて冷たくて…身体が動かない。
感覚がなくなる感じがする。
息が苦しくなる。
もう、だめかもしれない。
けど───いいんだ。だって、おれは誰にも────愛されてなどいない。
おれは────罰を受けるべきなんだ。
水の中でずっと思っていた。
これで、よかったって。
これが…もう、最後でいいって。
でも、でもね…、苦しい、つらい。悲しい…。
でも─────悲しい。
「たすっ…けっ…て…。」
─────おれは、まだ何もしていない。
「っ──────掴まれ!!」
声が聞こえた。おれの知らない声。
───────希望を与えてくれる声
その声と手のする方へ手を伸ばすとぐいっと何か温かい人の胸の中にいた。
「──────大丈夫かっ!?」
開かない目を頑張って開ける。
すると────見えた。
オレンジ色の中に輝く──綺麗な瞳。
黒くて強くて──真っ直ぐした、綺麗な目。
「大丈夫か!?おいっ!!」
おれを助けてくれたのは───
日比谷 亮(ひびや とおる)
おれの生まれて始めて─────愛した人だ。
目を開けると知らない天井だった。
びっくりして身体を起こそうとすると
「気がついた?」
声が聞こえた。あ、この声…。おれを助けてくれた声。
「あっ…うん。」
ぬくっと起きる。するとそこは部屋の中だった。 けど…。
「なっ…に?」
部屋の様子は酷い有り様だった。壁は所々に穴が開いていた。机の上には大量のゴミ、そしてガラスの破片。そして、床には────血。
「ごめん、怖がらせたね。」
おれを助けてくれたであろう男の子は落ち着いた様子で床の血を雑巾で拭いた。
「安心して。これは…おれの血だから。」
にこっと笑顔を見せていたが…何も安心できなかった。
「あっ…なんで…血?」
「…殴られちゃったから。おじさんに。」
『昨日はとくに酷かったからなぁ。』と笑いながら話していた。
まるで────他人ごとのようだった。
よく男の子の体を見ると青く腫れてる腕や斬りつけられたであろうカッターの傷がついていた。
「殴られた…?」
「うん、この壁もおじさんがやったんだよ。参っちゃうよね。」
男の子はそういうとおれにコップを差し出す。
「お湯、飲む?」
「…あぁ。」
「ごめんね、おれキッチンには入っちゃいけないことになってて…こんなものしか用意できなくて。本当はお茶…とか作りたかったんだけど…。
勝手に物に触るとおじさんに怒られちゃうから。」
「そ、そうなのかっ…」
「うん。ほんと、参っちゃうよね。
あ、そういえば名前は?
おれは日比谷 亮(ひびや とおる)。」
「あ、おれは…菅野 黎(すがの れい)。」
こうしておれたちは話し始めた。
「プールの景色、綺麗だからよく、あそこに来るんだ、おれ。それで…いつも通りプールに寄ろうとしたら…
びっくりしたよ。君が──溺れていたから。」
「そうだったのか…。すまない、迷惑をかけた。」
「ううん。」
亮は大きく首を振って否定していた。
「…あれは誤って落ちちゃった訳じゃないんだよね?」
「…え?」
「君を助けようとフェイスを超えようとしたら…黎君の他に人がいたから。」
「っ…。」
「あの人に──落とされたの?」
ずばっと当てられておれはびっくりした。
しばらく黙っていると亮が話し始めた。
「ごめん、ごめん。気になっちゃって…。悪いこと聞いちゃったよね?」
「…いいんだ。おれのせいだから。」
あの時の太一の顔が頭から離れない。
おれを──睨みつける、顔。
「あの人にいじめられてるの?」
「いや…、あいつは関係ない。ただ…いじめられてはいるがな。」
「え?」
「学校で…。」
いじめられることは恥ずかしいこと。だから出来れば言いたくはなかった。だが…亮にはいって良いような気がしたのだ。
「…そっか。ならおれと同じだ。」
亮はそういうとにかっと笑った。
…同じ?
「同じって…?」
「おれも──いじめられてるから。」
にかっと笑いながら言う言葉におれは疑問を覚えた。 そんな…軽く言うものか?
いじめられてるなんて──そんな、人生の汚点を。堂々と。
「いじめる人たちって…何したいのかいまいちよくわからない。時間の無駄じゃないかな?」
ははっと亮は笑って答えた。
おれは──そんな亮に聞きたかった。
どうして───
「────笑ってられるんだ?」
「え?」
「おれは─…いじめられて悔しい。悲しい。助けてほしいっ…救ってほしい…!早く終わってほしいっ…、層毎日毎日、願ってるっ…!
だから、いじめられてることを…祖湯な風に軽く言えないっ…!
とっても…怖い!!怖いんだ…!!」
おれは泣きそうな顔を隠しながら亮に思いをぶつけた。
亮は少し驚いたような顔をしながらまた、わらった。
「そっか…苦しいんだ。
わからないな…。」
「え?」
「おれ…そういうのよくわかんない。
ううん…わかるよ?苦しいのもつらいのも…わかってる。
けど─────どうでもいいって思っちゃう。」
「どうでもいい…?」
「だって────
どうでもいい人にいじめられても…
───────何も思わないよ。」
亮はそういうとバッと服を脱いだ。
亮の肌を見ると───背中が青く、醜く腫れていた。
肩には赤い傷が複数あった。
─────とても痛々しい。
「おじさんに殴られて…身体が壊れちゃった。けどね…おれはどうでもよかった。
殴りたいのなら殴ればいいと思ってた。
…心は壊れなかった。けど、身体が壊れちゃった。
そして…身体が傷だらけになった。
けど…こんなの、どうでもいい。」
「なんで…そんな風に思えるんだ?おれには…わからない…。」
「…おれね、一遍に二つのこと、考えられない。」
亮はそういって服をまた着た。
「おれ…大切な人がいるんだ。」
「大切…?」
「うん、大切すぎて壊しちゃいそうなくらい…そのぐらい大切。」
「えっと…こい、恋人っ…?」
おれがそういうとぶはっと息を吐いて亮は笑った。
「恋人っ…なんて、いないよ。おれ小学生なんだから。」
「だっ…て、凄く大切な人っていうからだなっ…」
「大切な人っていうのは…家族。おれの弟のことだよ。
今はね、おれのそばにいないんだけどね。」
亮はそういうとはぁっと息を吐いた。
「なんで…だ?」
「弟…小さい時から体が弱くて今は病院に入院中。
だから…今はおれが一人。」
淡々とそう亮は話してくれた。
「お母さんに…弟のこと守れってずっと言われてた。だからって訳じゃないけど…でも、おれは弟のことを守るって決めた。
だから────おれが一番怖いのは
いじめられることでもなくて
おれのことを醜く見られることじゃなくて─────
弟に嫌われることなんだ。」
亮はそういうと淡々とした話し方からどんどん変わっていった。
「だから───どんなに傷つけられても大丈夫。
怖いのは…弟に嫌われることだけなんだよ。
どんな奴がおれのこと悪く言おうと、おれのこと嫌いって、いなくてもいいって言われても──
弟がおれのこと好きって、そばにいてほしいって望んでくれれば───
それだけで幸せで、とってもハッピーになれるっ。
だから─────他の人なんかいらない。どうでもいい。
消えてしまえばいい。
おれには────弟だけなんだ。」
亮の言葉におれは言葉を失った。
なんて…答えればいいのかわからなくなった。
「ごめん、変だよね。」
亮はそういって笑った。
「わかってるんだ。
こんなのおかしいって…。けどね、おれは──弟がいないと生きられないんだ。
弟が死んだら────おれも死ぬって決めてる。
でも
出来るなら一緒に死にたい。」
「なっ…!?」
亮はにこっと笑って『なんて冗談』と付け加えた。
───────冗談なら、いい。
けど…。
「黎君はクラスでいじめられてるんだよね?」
「あぁ。」
亮はうーんっと悩む格好をして、そしてそうだっ!とひらめいたような様子を見せた。
「黎、これを使えばもう、いじめられなくて済むよ。」
そういって渡してくれたのは──
ナイフだった。
「わぁっ!!」
おれはびっくりしてそのナイフをその場に落としてしまった。
「…大丈夫?ちゃんと持たないと怪我しちゃうよ。」
亮はそういうとおれにナイフを両手で握りしめて渡した。
「なんで…ナイフっ…。」
「おれも…何回かやったことがあるんだけど…ナイフをつかうとみんなびびってくれるから…いじめられなくて済むと思うんだ。」
亮はそういってポケットからまた違うナイフを取り出した。
「こうやって──」
びゅっとナイフを回しおれの顔に近づけた。
おれはいきなりナイフを向けられてびっくりして倒れてしまった。
「ごめん、驚かせたよね。」
亮はそういって笑った。
「別に刺す訳じゃない。ただ人に向けるだけ…だから害はないよ。
それに───いじめるあっちの方が何倍も悪い。」
「けど…こんなっ…」
「怖い?」
「え?」
「ナイフ────持つの、怖い?」
亮は表情を全く変えずそう聞いた。
そりゃ…怖い。だって…。
「これ…振り上げたら…人を、切ってしまうだろ?怖い…よ。」
「確かに傷つける。けど、あっちだっておれを殴ったり蹴ったりした。
そんなの───あいつらだって同じだ。」
亮はそういってナイフを大切そうに持っていた。
「仕方がないことだよ。
おれは自分を、大切な人を守るには─
人を傷つけていいと思ってる。
でないと──自分が壊れちゃう。」
亮はそういって『使うか使わないかは黎君次第だよ。』と声をかけた。
おれは─────。
自分を守るためなら、人を傷つけていいのか。
でも、──ただ、ナイフを人に向けるだけ。
人を、刺してはいない。
亮と話していると
キーンコーンカーンコーンと五時の鐘が鳴った。
「あ、やばいっ!!」
亮はその鐘の音を強く反応した。
「どうした…!?」
「おじさんが…帰ってくる!!」
「え?」
表情が変わらなかった亮の顔が真っ青になるのを感じた。
「ごめん、窓からでてくれる?
人を家に呼んじゃいけないことになってて…。気づかれるとまずい。」
「えっ…?どうなるんだ?」
おれが問いかけると真っ青な顔を隠すかのように亮は笑った。
「──────おれ、殺されちゃう。」
その笑顔がおれは頭の中に残っていた。
「ほら、逃げて。」
「だがっ…、そんなに酷いなら、警察に…」
「だめ。おれは逃げないよ。」
亮は逃げないといった。
「弟が───病院にいる。
守りたい人がいる。それまでは…ここから逃げられない。」
ガチャっとドアを開ける音がする。
「早く───行って。」
亮はおれの背中を押した。
おれは…窓から外へ出た。そして…そのまま走り出した。
後ろから────亮の家の中から、声が聞こえた。
恐ろしい声。そして、ボカっと人を殴る音。
殴られてるのは───多分、亮だ。
おれは振り返ることが出来なかった。
怖かった。
────────亮。
おれは涙が止まらなかった。走りながら泣いていた。
亮は───一人なのか。誰も助けてくれる人はいないのか。
────こんなの、酷すぎる。
ポケットにいれはナイフを触りながらおれは────泣いていた。
それから─────
おれは亮のナイフを使った。
いじめられたらクラスメートにナイフを突きつけた。
するとクラスメートたちは怯えた顔をしておれがおかしいといい始めた。
おかしい?そんなの───どうだっていい。
クラスメートたちはおれがナイフを向けたことを先生に話した。
けど───いいこちゃんであるおれを疑う先生はいなかった。
おれは────そうやって自分を守れた。
亮にもらったナイフを毎日持っていた。
おれの…大切な宝物だ。このナイフはおれを守ってくれる。おれの盾になってくれる。
おれは───もう、立ち止まらない。
息をしなくても足は動く。
周りを伺う必要はない。
変だと思われたっていい。
おれは───おれだ。
ナイフを見ると亮のことを思い出す。
亮は───どうしてるのだろう。
おじさんに殴られた傷だらけの傷を思い出す。
大丈夫なのか、心配だ。
亮、亮、亮─────。
おれはいつの間にか正兄の憧れが消えていた。
おれは…亮のことで頭の中がいっぱいになっていた。
亮、また、いつか会えないかな?
今どうしているのだろう。
会いたいな。かっこいい…亮。
まるでおれは───恋する乙女のように亮のことを思っていた。
おれは───この時からずっと
自分でも気づかない、もっと前から
──────亮が好きだった。
おれは中学になった。
そのときにはおれをいじめる奴は誰一人いなかった。
おれは──みんなから怯えられていた。怖い存在になっていた。
だから…おれはいじめられなかった。けど、孤独だった。一人だった。
この頃から…おれの感情は薄れていた。
今まで泣いていた涙が枯れるかのようになくなっていた。
泣かなくなった。───おれは強くなったのだ。
ただナイフを持っただけ。ナイフという御守りがおれを守ってくれただけ。
それだけだけど…おれは、おれを作り上げた。
中学に上がって───
正兄の様子がおかしくなった。
正兄は───国立のレベルの高い高校に────落ちた。
この現実は正兄を地に落とすほど傷付けた。
正兄は──泣いていた。
その時───知った。
おれは正兄は完璧だと思っていた。天才で届かない…だから憧れていた。
けど…家の隅で声を殺すように泣いている正兄の姿を見て───違うと思った。
そっか…正兄は───完璧じゃないんだ。
おれと──同じ。
知らなかった。正兄のことをずっと憧れとしてみていた。
けど、この時、おれの正兄への憧れは消えていた。
おれは…正兄より思っている人がいた。
おれの憧れは───もっと違う人へと写っていった。
「正兄っ…。」
おれは正兄に話しかけた。
「─────がっかりだろ?」
正兄はそう答えた。
そばにいるとぽつりぽつりと正兄は本音を話してくれた。
「おれは…本当は完璧なんかじゃないっ…!醜くて汚れてる。
おれは、おまえのその真っ直ぐな心を何度憎んだかわからない。
おれはお前のその眼差しが嫌いだった。
怖かったんだ…。
いつか、おれの本当を知ってしまったとき…れーくんはおれのこと───捨てるんじゃないかって。」
正兄は悩んでいた。
自分を天才だと思っていた。けど、それは違った。年をとると共に確実に自分は天才じゃないことを知っていった。
わかっていた、なのに───おれは正兄の憧れをやめない。
だから正兄は憧れを壊さないように必死に守った。けど───そんなむちゃくちゃ、続くことなんか…ない。
「おれは…お前が落ちればいいと思ったっ…!だから友達をつくるなと約束事をつくった。
れーくんがずっとおれの下であってほしいって願ったからだ。
れーくんの…憧れを、守るために。」
正兄はそう話していた。
けど…おれはとっくに正兄の憧れは消えていた。
もう、正兄は憧れじゃない。
けど───おれは優しい嘘をついた。
正兄のことが好きだったから。
「今も…正兄はおれにとって憧れだ。正兄がどんなに変わってもおれたちは───兄弟だ。
正兄が兄である以上、おれは正兄のこと───憧れであり続けるよ。」
その言葉に正兄は必死に声を出した。
「れーくんは…おれを捨てないよね…!?
おれが天才じゃなくて…完璧じゃなくても…れーくんはおれの味方だよね!?
ずっとずっと変わらずそばにいてくれるよね?
れーくんは────おれのこと
大好きだよね…!?」
正兄はおれを抱きしめながらそう、おれに問い詰めた。
おれは────
「──あぁ、そうだな。」
そう答えた。
正兄は震えながらおれを強く強く抱きしめた。
おれは正兄の小さな背中を支えていた。知らなかった。正兄が…どんどん違うものに見えた。
あのとき、憧れた正兄は
もう、いなかった。
あれから──正兄はおれに執着するようになった。
いつでも一緒にいた。
そして──おれは
正兄の視線が変わっていったことに気づいた。
「れーくん、れーくん!」
おれを呼ぶ正兄の声。嬉しい…嬉しいはずなのに…。
「れーくんは…おれのこと、好きだよね?」
とても────怖かった。
だっておれを見る目が違う。おれを正兄はどう見てる?どうしてそんな熱のこもった目で見るんだ?
嫌だ…怖い。正兄の視線におれは押しつぶされそうだった。
怖かった。────意味も分からず
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