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第十一話
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オズベルト様と別れた私は、あてもなくキサロの街を歩き続けた。
……どうしよう。また会う約束をしてしまった。
このままではいけない。何とかしなければ。
私は愚かだ。
何故オズベルト様が童貞である事を嘆いた時に、私で卒業させてあげようなどと思ったのだろう。
あの時の浅はかな行動が、今の事態を招いたのだ。
このまま正体を隠し、友人関係を続けようか?
……いや、それは無理だ。
オズベルト様は人型の私を愛して下さっている。ずっと友人でなどいられない。いつの日かそれ以上の関係を望まれる日が来るだろう。
私はその時が来たら、オズベルト様を拒めばいいのだろうか。それでは遅くないか? どうせオズベルト様の気持ちには応えられないのだ。拒むなら早い方がいいのではないか?
「……」
本当は、オズベルト様の気持ちにお応えしたい。オズベルト様はとても素晴らしいお方なのだ。
もしもオズベルト様と恋仲になれたのなら、私は天にも昇る心地だろう。
私が蛇じゃなかったら……。
いや、せめてオズベルト様のペットでは無かったなら……。
……考えても仕方がない。
実際のところ私はただの蛇で、オズベルト様のペットでもあるのだ。
今、私が考えなければいけないのは、この関係をどう終わらせるか……と言う事だ。
なるべくオズベルト様がお心を痛めないような方法を取りたい。
何か良い案はないだろうか……。
「……」
歩き続けていたら疲れてしまった。
少し先にベンチが設置されていたのでそこに座った。
そうだ、好きな人ができたからもう会えないと言うのはどうだ?
……いや、ダメだ。
もし私がオズベルト様の立場ならそんな事を言われたら落ち込んでしまう。
……ならば、遠くに行くのでもう会えないと言うのはどうだろう?
「……!」
そうだ、それが良いんじゃないか?
私は『旅人』と言う設定なのだ。『暫くこの辺りの街に滞在していましたが、そろそろ旅を再開しようと思います。遠くに行くのでオズベルト様とはもうお会いできません』とでも言えばいいのではないか!?
それならオズベルト様は諦めてくれるだろう。
多少は寂しく思うかもしれないが、旅人ならば仕方がないと納得して下さるのでは?
「よし! これでいこう!」
私は勢いよくベンチから立ち上がった。
次にオズベルト様とこの姿で会うのは三日後だ。
その時はオズベルト様の家で落ち合う予定だ。
家に入ったら、すぐに旅に出る事を告げよう。
それで別れの挨拶をして家を去れば、もう二度とこの姿でオズベルト様と会わないですむ!
良かった! 良い案を思い付いて。
私はホッと胸を撫で下ろした。
よし。そうと決まれば、そろそろ家に帰ろう。オズベルト様が心配している。
私は転移魔法を唱えてオズベルト様が待っている家に帰った。
家に着くと、窓からこっそり中の様子を伺った。
どうやらオズベルト様はご自分の部屋にいるようだ。
私はリビングの窓を開けて、音を立てないよう静かに中へ入った。
忍び足で自分の部屋に向かう。
オズベルト様は優しいお方だ。蛇である私なんかに一室を与えてくれた。
私には自分の部屋があるのだ。
部屋に着くと、しっかりとドアの鍵を施錠してから蛇の姿に戻った。
蛇に戻ったので、人型の時に着ていた服がハラリと床に落ちた。
私はそれを丁寧にたたみ、部屋の隅にある私の『宝物箱』にしまった。
オズベルト様が私なんかの為に一生懸命選んで下さった服だ。これは私の一番の宝物だ。大事に大事にしよう。
私は宝物箱のフタを、パタンと閉めた。
……どうしよう。また会う約束をしてしまった。
このままではいけない。何とかしなければ。
私は愚かだ。
何故オズベルト様が童貞である事を嘆いた時に、私で卒業させてあげようなどと思ったのだろう。
あの時の浅はかな行動が、今の事態を招いたのだ。
このまま正体を隠し、友人関係を続けようか?
……いや、それは無理だ。
オズベルト様は人型の私を愛して下さっている。ずっと友人でなどいられない。いつの日かそれ以上の関係を望まれる日が来るだろう。
私はその時が来たら、オズベルト様を拒めばいいのだろうか。それでは遅くないか? どうせオズベルト様の気持ちには応えられないのだ。拒むなら早い方がいいのではないか?
「……」
本当は、オズベルト様の気持ちにお応えしたい。オズベルト様はとても素晴らしいお方なのだ。
もしもオズベルト様と恋仲になれたのなら、私は天にも昇る心地だろう。
私が蛇じゃなかったら……。
いや、せめてオズベルト様のペットでは無かったなら……。
……考えても仕方がない。
実際のところ私はただの蛇で、オズベルト様のペットでもあるのだ。
今、私が考えなければいけないのは、この関係をどう終わらせるか……と言う事だ。
なるべくオズベルト様がお心を痛めないような方法を取りたい。
何か良い案はないだろうか……。
「……」
歩き続けていたら疲れてしまった。
少し先にベンチが設置されていたのでそこに座った。
そうだ、好きな人ができたからもう会えないと言うのはどうだ?
……いや、ダメだ。
もし私がオズベルト様の立場ならそんな事を言われたら落ち込んでしまう。
……ならば、遠くに行くのでもう会えないと言うのはどうだろう?
「……!」
そうだ、それが良いんじゃないか?
私は『旅人』と言う設定なのだ。『暫くこの辺りの街に滞在していましたが、そろそろ旅を再開しようと思います。遠くに行くのでオズベルト様とはもうお会いできません』とでも言えばいいのではないか!?
それならオズベルト様は諦めてくれるだろう。
多少は寂しく思うかもしれないが、旅人ならば仕方がないと納得して下さるのでは?
「よし! これでいこう!」
私は勢いよくベンチから立ち上がった。
次にオズベルト様とこの姿で会うのは三日後だ。
その時はオズベルト様の家で落ち合う予定だ。
家に入ったら、すぐに旅に出る事を告げよう。
それで別れの挨拶をして家を去れば、もう二度とこの姿でオズベルト様と会わないですむ!
良かった! 良い案を思い付いて。
私はホッと胸を撫で下ろした。
よし。そうと決まれば、そろそろ家に帰ろう。オズベルト様が心配している。
私は転移魔法を唱えてオズベルト様が待っている家に帰った。
家に着くと、窓からこっそり中の様子を伺った。
どうやらオズベルト様はご自分の部屋にいるようだ。
私はリビングの窓を開けて、音を立てないよう静かに中へ入った。
忍び足で自分の部屋に向かう。
オズベルト様は優しいお方だ。蛇である私なんかに一室を与えてくれた。
私には自分の部屋があるのだ。
部屋に着くと、しっかりとドアの鍵を施錠してから蛇の姿に戻った。
蛇に戻ったので、人型の時に着ていた服がハラリと床に落ちた。
私はそれを丁寧にたたみ、部屋の隅にある私の『宝物箱』にしまった。
オズベルト様が私なんかの為に一生懸命選んで下さった服だ。これは私の一番の宝物だ。大事に大事にしよう。
私は宝物箱のフタを、パタンと閉めた。
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