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50話 王女の勅命
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8回の裏を終わって、1対0。
桃色青春高校がプリンセスガーディアン・ハイスクールをリードしている。
しかし、その差はわずか1点。
連打を食らえば、すぐに同点に追いつかれてしまう。
場合によっては逆転される可能性すらある。
桃色青春高校としては、全く気を許せない状況だ。
「よし。円陣も組んだし、こっちの気合は十分だな。……ん?」
龍之介が相手チームのベンチ前を見る。
そこには円陣を組むプリンセスガーディアン・ハイスクールの選手の姿があった。
彼女たちとしても、この回が重要になってくる。
このまま0点で完封されるわけにはいかない。
「いいですか、皆さん。私たちは絶対に負けられないのです。プリンセスガーディアンの名を背負っているのですから」
「「はい!!」」
ソフィの言葉に、野球少女たちが気合のこもった声で答える。
その声からは彼女たちの強い意志を感じた。
「不甲斐ない私たちのために、姫様が激励のお言葉を送ってくださるそうです。姫様、よろしくお願いします!」
ソフィがそう言うと、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手が一斉にベンチ近くの観客席に視線を向けた。
そして、一列に整列して一斉に頭を下げる。
「皆さんの頑張りは見ていました。その見事なプレイだけでも、私の心に届いています」
透き通るような声。
この声を、龍之介は知っている。
(こ、この声は……まさかあの……!?)
彼が顔を上げる。
観客席に視線を向けると……そこには白いドレスに身を包んだ美しい少女の姿があった。
「お姫様ですわっ!!」
「わわ……! 綺麗な人ですねぇ……」
ユイとミオが興奮している。
それは、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手たちも同じだった。
全員が目を潤ませて、憧れの少女の姿を食い入るように見つめている。
そんな少女たちに対して、その少女は優しく微笑みかけた。
「貴方たちの実力をもってしても、今回の相手には苦戦されているようですね。でも、私は何も心配していません。勝利の光は私たちにあるのですから。信じていますよ、未来のガーディアンたちよ」
姫様は優雅に微笑むと、選手全員に激励の言葉を送る。
その声と言葉は、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手を勇気づけるのに十分なものだった。
そして、その効果はそれだけに留まらない。
「死力をつくして戦いなさい。――【王女の勅命(プリンセス・オーダー)】!!」
「「「「おおおおおおおっ!!!」」」」
プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手たちが、一斉に【王女の勅命】の効果を受けた。
彼女たちが雄叫びを上げる。
(な……なんだ、あれは!?)
2099年の今、スポーツ医療だけではなく脳科学や遺伝子工学の分野においても急速な発展が見られている。
それによって、スポーツ選手には様々な恩恵が与えられるようになっていた。
2050年以前にはオカルト扱いされていた特殊な能力も、今ではその一部が再現可能なスキルとしてスポーツ界に導入されていたりする。
リーダーシップを持つ者の言葉によりチーム全体が異様に活気づく――なんて現象も見慣れた光景だ。
しかし姫様のそれは、龍之介ですら驚くほどの強力な効果だった。
「こ、これが……プリンセスガーディアン・ハイスクールの真の力なのか……!!」
龍之介は、目の前で起きた現実を上手く受け止めることができなかった。
彼が脳内スコアブックを更新させる。
姫様の【王女の勅命】を受けた今のチームオーダーは……
先攻・プリンセスガーディアン・ハイスクール
1番遊・ソフィ・BECCB
2番二・ガレティア・CEDDC
3番中・セリナ・CEDDC
4番一・ユーリ・CDFDC
5番三・イリス・DDEDC
6番左・レストウィン・DEFED
7番右・ラ ナ・DEFED
8番捕・ユリア・EEFCC
9番投・リンディル・EFFDC
*9回の表は5番打者からの攻撃
投手・リンディル
最高球速125km 制球力D 持久力E 変化球E
チーム全体評価
打撃D 走塁E 守備D 投手E 控え選手F 総合力E
「す、凄まじい強化だ……。ミートバッティング能力が2段階、パワーが1段階向上している……!!」
龍之介は思わず呟く。
中学大会でも、似たような能力が使われている光景を見たことがある。
しかし、これ程の強化量は初めてみたのだ。
彼の呟きが聞こえたのかソフィが彼の方を向いた。
「私たちの真の力、お見せしましょう。姫様から頂いたこの力で、勝たせていただきます!」
そう言って、ソフィは自信満々な様子で龍之介を睨みつけた。
「……ああ、そうだな。勝負はここからだ」
龍之介もソフィを睨み返す。
こうして、お互いに譲れないものを賭けた最後の攻防が幕を開けていくのだった。
123456789 計
―――――――――――――――――
プリンセスガ|00000000 |0|
桃色青春|00010000 |1|
―――――――――――――――――
9回表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃前
【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ20【ダークホース桃色青春高校】
112:代走名無し@野球大好きオジサン
きたああああああああ!!
113:代走名無し@野球大好きオジサン
姫様きたああああああ
114:代走名無し@野球大好きオジサン
流れ変わったな
プリンセスガーディアン・ハイスクールの表情が一気に引き締まった
115:代走名無し@野球大好きオジサン
これは強い
ただの精神論っぽい激励でも、カリスマを持った人間の一声には大きな力がある
最新の研究でもそれは証明されてるもんな
116:代走名無し@野球大好きオジサン
姫様が一声かけただけで、ここまで変わるか
まだ攻撃開始前のノーアウト・ランナー無しだが……
桃色青春高校は大ピンチと言っていいかもしれない。
桃色青春高校がプリンセスガーディアン・ハイスクールをリードしている。
しかし、その差はわずか1点。
連打を食らえば、すぐに同点に追いつかれてしまう。
場合によっては逆転される可能性すらある。
桃色青春高校としては、全く気を許せない状況だ。
「よし。円陣も組んだし、こっちの気合は十分だな。……ん?」
龍之介が相手チームのベンチ前を見る。
そこには円陣を組むプリンセスガーディアン・ハイスクールの選手の姿があった。
彼女たちとしても、この回が重要になってくる。
このまま0点で完封されるわけにはいかない。
「いいですか、皆さん。私たちは絶対に負けられないのです。プリンセスガーディアンの名を背負っているのですから」
「「はい!!」」
ソフィの言葉に、野球少女たちが気合のこもった声で答える。
その声からは彼女たちの強い意志を感じた。
「不甲斐ない私たちのために、姫様が激励のお言葉を送ってくださるそうです。姫様、よろしくお願いします!」
ソフィがそう言うと、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手が一斉にベンチ近くの観客席に視線を向けた。
そして、一列に整列して一斉に頭を下げる。
「皆さんの頑張りは見ていました。その見事なプレイだけでも、私の心に届いています」
透き通るような声。
この声を、龍之介は知っている。
(こ、この声は……まさかあの……!?)
彼が顔を上げる。
観客席に視線を向けると……そこには白いドレスに身を包んだ美しい少女の姿があった。
「お姫様ですわっ!!」
「わわ……! 綺麗な人ですねぇ……」
ユイとミオが興奮している。
それは、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手たちも同じだった。
全員が目を潤ませて、憧れの少女の姿を食い入るように見つめている。
そんな少女たちに対して、その少女は優しく微笑みかけた。
「貴方たちの実力をもってしても、今回の相手には苦戦されているようですね。でも、私は何も心配していません。勝利の光は私たちにあるのですから。信じていますよ、未来のガーディアンたちよ」
姫様は優雅に微笑むと、選手全員に激励の言葉を送る。
その声と言葉は、プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手を勇気づけるのに十分なものだった。
そして、その効果はそれだけに留まらない。
「死力をつくして戦いなさい。――【王女の勅命(プリンセス・オーダー)】!!」
「「「「おおおおおおおっ!!!」」」」
プリンセスガーディアン・ハイスクールの選手たちが、一斉に【王女の勅命】の効果を受けた。
彼女たちが雄叫びを上げる。
(な……なんだ、あれは!?)
2099年の今、スポーツ医療だけではなく脳科学や遺伝子工学の分野においても急速な発展が見られている。
それによって、スポーツ選手には様々な恩恵が与えられるようになっていた。
2050年以前にはオカルト扱いされていた特殊な能力も、今ではその一部が再現可能なスキルとしてスポーツ界に導入されていたりする。
リーダーシップを持つ者の言葉によりチーム全体が異様に活気づく――なんて現象も見慣れた光景だ。
しかし姫様のそれは、龍之介ですら驚くほどの強力な効果だった。
「こ、これが……プリンセスガーディアン・ハイスクールの真の力なのか……!!」
龍之介は、目の前で起きた現実を上手く受け止めることができなかった。
彼が脳内スコアブックを更新させる。
姫様の【王女の勅命】を受けた今のチームオーダーは……
先攻・プリンセスガーディアン・ハイスクール
1番遊・ソフィ・BECCB
2番二・ガレティア・CEDDC
3番中・セリナ・CEDDC
4番一・ユーリ・CDFDC
5番三・イリス・DDEDC
6番左・レストウィン・DEFED
7番右・ラ ナ・DEFED
8番捕・ユリア・EEFCC
9番投・リンディル・EFFDC
*9回の表は5番打者からの攻撃
投手・リンディル
最高球速125km 制球力D 持久力E 変化球E
チーム全体評価
打撃D 走塁E 守備D 投手E 控え選手F 総合力E
「す、凄まじい強化だ……。ミートバッティング能力が2段階、パワーが1段階向上している……!!」
龍之介は思わず呟く。
中学大会でも、似たような能力が使われている光景を見たことがある。
しかし、これ程の強化量は初めてみたのだ。
彼の呟きが聞こえたのかソフィが彼の方を向いた。
「私たちの真の力、お見せしましょう。姫様から頂いたこの力で、勝たせていただきます!」
そう言って、ソフィは自信満々な様子で龍之介を睨みつけた。
「……ああ、そうだな。勝負はここからだ」
龍之介もソフィを睨み返す。
こうして、お互いに譲れないものを賭けた最後の攻防が幕を開けていくのだった。
123456789 計
―――――――――――――――――
プリンセスガ|00000000 |0|
桃色青春|00010000 |1|
―――――――――――――――――
9回表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃前
【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ20【ダークホース桃色青春高校】
112:代走名無し@野球大好きオジサン
きたああああああああ!!
113:代走名無し@野球大好きオジサン
姫様きたああああああ
114:代走名無し@野球大好きオジサン
流れ変わったな
プリンセスガーディアン・ハイスクールの表情が一気に引き締まった
115:代走名無し@野球大好きオジサン
これは強い
ただの精神論っぽい激励でも、カリスマを持った人間の一声には大きな力がある
最新の研究でもそれは証明されてるもんな
116:代走名無し@野球大好きオジサン
姫様が一声かけただけで、ここまで変わるか
まだ攻撃開始前のノーアウト・ランナー無しだが……
桃色青春高校は大ピンチと言っていいかもしれない。
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