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96話 イザベラ様の寝顔

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(はわわ……。イザベラ様の寝顔、とても可愛らしいです)

 わたしはイザベラ様に膝枕をしている状態です。
 イザベラ様はワインで泥酔して眠っておられますが、緩んだ表情もいつもと違って素敵です。
 わたしは思わず見惚れてしまいました。

「それにしても姉上は完全に酔ってしまったみたいですね。こんなに弱かったなんて意外です」

「わたしも驚きました。……でも、これはあなたの失態でもありますよね? フレッドさん」

「うっ……。それは面目ない。僕がもっと注意しておくべきでした。まさか、ジュースではなくてワインの飲み比べだったとは……」

 フレッドさんは、わたしの指摘を受けてバツの悪そうな顔をされています。

「しっかりしてください。もう子供ではないのですから」

 フレッドさんはわたしよりも一つ年下で、イザベラ様の弟君です。
 幼い頃からイザベラ様の薫陶を受けていたおかげか、座学や護身術などあらゆる分野にて優秀な成績を収めていると聞きます。
 特に、ポーションや毒物に対する造詣は深いとか。
 ですが、このように抜けているところもあります。
 イザベラ様の弟君なのであまり強くは言いたくないのですが……。
 それでも、今回のことは少し厳しめに注意しておきましょう。

「しかし、困りましたね。姉上がここまでぐっすり眠られてしまうとは……」

「いいではありませんか。イザベラ様は普段から頑張りすぎなくらいです。今日ぐらいはゆっくり休んでいただきましょう」

 イザベラ様は様々なことに手を出されています。
 特に、戦闘能力は学園史上でもトップクラス。
 ご本人は隠されているおつもりのようですが、教師や生徒には既に広まっています。
 中には、『武神』だとか『守護者』だとか呼ぶ人までいます。
 つい先日、エドワード殿下やカイン様と一対二で戦って圧勝したのは記憶に新しいところです。
 もちろん戦闘能力だけではなく、座学やポーション作成の技量においても素晴らしい成績を収められています。
 ダンスやマナーは少しお苦手のようですが、それでも落第点を取ったことありません。
 天に愛された才女とは、イザベラ様のような人のことを言うのでしょう。

「それはそうですが……。ううーん……」

「どうしました? 何か問題でもありましたか?」

「いや、ええと……。姉上ともう少し秋祭りを回りたかったな、と……」

 フレッドさんが恥ずかしげに呟きます。
 その気持ちは痛いほどわかります。
 イザベラ様と一緒にいると楽しいですからね。
 わたしだって、イザベラ様ともっと二人で屋台巡りをしたかったです。
 まさかフレッドさんのようなお邪魔虫が現れるなんて……。
 何か、イザベラ様の酔いを覚まして、フレッドさんを振り切る方法はないでしょうか……。
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