チャリに乗ったデブスが勇者パーティの一員として召喚されましたが、捨てられました

鳴澤うた

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イメージ違うんですけど!

その2

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「……えっ?」
 今「弟」って言いませんでしたか?
 私、ウィルドさんと王様を交互にガン見。
「弟? ウィルドさんって王様の弟さん?」
「まあ、な……。全く、こんな兄をもって情けないやら恥ずかしいやらだが、血が繋がっている」
 ――それより、とまだへたり込んでいる兄である王様に向かってウィルドさんは凄む。
「いいから予備の剣はどうしたよ? ミナトってやろうじゃあ、属性からもだが、あんなへなちょこじゃあ今回の瘴気を倒せるわけねーだろ? あいつが素直にミサトに剣を渡せばいいが、へんなプライド持っているせいか無理っぽいしな」

「あ、ああ……」
 と王様はフラフラと立ち上がると、暖炉の上に飾ってあった帯剣を取る。すると――脇に設置してあったキャビネットが横にスライドした。

 そこに鉄の扉があり、開けると剣が立てかけて保存されていた。
 ウィルドさんは剣を取ると、状態を確かめる。
「うん、破損もないし。予備とはいえさすがに勇者用の剣だ」
 と、鞘から抜いた剣を見て満足そうに頷く。
 確かに、その剣の刃の輝きが違う。素人の私でさえ分かる。
 僅かな光を吸収し、自分の内なる力を放出しているかのようなまばゆい光だ。

「おい、兄貴。――言いたいことが山ほどあるが、まずはこの瘴気を倒さないといかん」
「あ、ああ……」
「首洗って待ってろよ」
 しょぼん、としている兄貴――王様。
 なんだか、弟さんの方が偉そう。
 ぼんやりとこの状況を眺めている王太子を後目に、ウィルドさんは私に剣を渡す。

「いいか、勇者の剣は持ち手の性質や願いで形を変える。これは予備として鍛え上げられた剣だが、あの馬鹿勇者が持つ剣と対で造られて性能は変わらん。これも『勇者の剣』だ。ミサト、もって願ってみろ」
「は、はい」
 恐る恐る受け取って重さにガクンと身体が揺れた。
「お、重い……っ!」
 と口に出した途端、軽く持てる程度の重さになった。
「あ、あれ……重さが変わりました」

「ミサトに合うように剣の方が調整してくれてるんだ。何度か振ってみろ」
「はい」と剣道の振り方を思い出しながら振ってみると、みるみると剣の形も変わっていく。
 幅広な刃だったのに、まるで日本刀のような幅になり、柄も私の手のひらにあう大きさになる。

 何より――

「剣の仕様? なんでしょうか? 属性が変わったような気がします」

 表現すれば『逞しさ』や『男らしさ』があった剣が『神々しさ』『艶やかさ』な剣になった気がする。
「今のミサトならステータスが視れるだろう? 視てみろ」
「どうやって『視る』んですか?」
 まずそこからだろう。
「そうだな……剣に手をかざして『状態開示』でいけるんじゃないか?」
「はい」と私は剣の前に手をかざし、
「状態開示」
とせりふを吐く。
 すると――目に前に透明な画像が出現した。
「うわぁ! ゲームの世界だわ!」
 思わず声を上げる。
「名称『聖勇者の剣』対象物に切りつけることで相手の状態、魔力、体力を回復させる。アンデット、ゾンビ、闇属性のモンスターに有効だが、普通のモンスターに対しては回復させてしまうので注意が必要……ああ、支援系の剣ですね」
「元々、治癒師のミサトだからな」
「人を切って怪我させるより良いかな、と思います」
 ぽん、と私の頭にウィルドさんの手のひらが乗る。
「ミサトが持つのに相応しい剣じゃないか!」
「はい……!」
 頭ぐりぐりされる。いつも髪が乱れて嫌だ~とか思う反面、大好きだったりする。
(乙女心は複雑だ~)

「これならミオの身体を傷つけることなく『瘴気』だけを倒すことができるぞ、ミサト」

 ――そうだ、私はそう願って剣を握った。

 剣はそれに答えて姿も属性を変えてくれた。
 私は、気を引き締めて真剣な顔をウィルドさんに向ける。

「澪ちゃんを助けてきます!」




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