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ガーディアン号、自我が目覚める
その2
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その後、ウィルドさんをはさんで詳しく交渉。
ガーディアンの所有は私だから、ガーディアンと同じ物を作るにあたってその何割かもらえるように話をつけてくれた。
「でも私いずれ帰る身ですから、そんなお金なんて必要最低限でいいのに」
「いや、といってもすぐに帰れるかわからないだろう? 何かあったときには金は必要だ」
とウィルドさん、きっぱり。
――ああ、そうだった。
私はウィルドさん宅に居候の身だった。
「……すみません。二階の宿の部屋、ずっと使ってて……まとまったお金ができたら今までの分、お支払いして貸家さがします!」
ぺこん、と頭を下げる私を見てウィルドさんが珍しく慌てていた。
「そんなこと言ってんじゃないって! 宿のことは気にすんな。宿代もらっても余るくらいミサトには働いてもらってる。異世界のフードメニューも提供してもらって、売り上げは上々だ。こっちは助かってるし、逆に賃金やれなくて申し訳ないと思ってる」
「いえ! 住処も食事も全部ただで提供いただいているので……! それくらいはさせてください! 恩知らずではいたくないです」
そうだ。この状況に甘んじて、つけあがってはいけなんだ。
「ホセさんからお金頂けたら、ウィルドさんのお店の近くに部屋を借ります」
「……そうか」
決まり悪そうな顔をして、顎に生やした無精髭を擦りつつ頷くウィルドさん。
「何か?」
なんか考え込んでいるようなおじさんに、私は尋ねる。
「なんていうか……まあ、はっきり言ってしまえば、心配なんだよ。俺は」
ぽすん、と私の頭に手が乗る。ウィルドさんの手だ。
「ミサトの住んでいる異世界の話を聞くに、ここよりずっとでかいのに治安のいい都市じゃないか。この城下街もそこそこ治安はいいが、ミサトのいる世界に比べたら危険は多い。特に夜なんかはな。治癒持ちで力持ちだろうが、ミサトは女の子なんだ。もし怖い目に逢ったらと思うと、貸家を借りて出て行くという選択に素直に頷けねえんだ」
「で、でも――」
「でもも何もねえ、いいから好きなだけ二階にいろ」
「だけど、売り上げが……」
それでもまだグダグダ言おうとする私の頭を、ウィルドさんはぐりぐり痛いほど撫でてくる。
「おじさんを心配させる気か? ああ? 心配しすぎて筋肉痩せちゃうだろ? おじさんのためを思うなら、おじさんの言うとおりにしろ。いいな?」
言い方がおかしくて笑ってしまう。
「おじさんって、自分でいうかな」
「最初、おじさんって言ってたの誰だよ?」
「私です」
無精髭生やして、体躯はでかいし筋肉質でとても料理人には思えないけど実際は「俺はまだ三十二だ」と言っていて、まあ思っていたほど若い。
明るいブラウンの髪の毛に蒼い瞳に彫りの深い顔立ちは、私の世界で言ったらウエスタンの世界にいる人みたいだ。
でも思う。
(歳の離れたお兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかな)
って。
「痛い痛い。ウィルドさん撫で方痛いです」
ぐりぐりやられすぎて、髪がグシャグシャだ。
それでも全然イヤじゃなくて笑っていられるのはきっと、ウィルドさんの手が無骨ながら温かくて気持ちが良いものだからだろう。
ガーディアンの所有は私だから、ガーディアンと同じ物を作るにあたってその何割かもらえるように話をつけてくれた。
「でも私いずれ帰る身ですから、そんなお金なんて必要最低限でいいのに」
「いや、といってもすぐに帰れるかわからないだろう? 何かあったときには金は必要だ」
とウィルドさん、きっぱり。
――ああ、そうだった。
私はウィルドさん宅に居候の身だった。
「……すみません。二階の宿の部屋、ずっと使ってて……まとまったお金ができたら今までの分、お支払いして貸家さがします!」
ぺこん、と頭を下げる私を見てウィルドさんが珍しく慌てていた。
「そんなこと言ってんじゃないって! 宿のことは気にすんな。宿代もらっても余るくらいミサトには働いてもらってる。異世界のフードメニューも提供してもらって、売り上げは上々だ。こっちは助かってるし、逆に賃金やれなくて申し訳ないと思ってる」
「いえ! 住処も食事も全部ただで提供いただいているので……! それくらいはさせてください! 恩知らずではいたくないです」
そうだ。この状況に甘んじて、つけあがってはいけなんだ。
「ホセさんからお金頂けたら、ウィルドさんのお店の近くに部屋を借ります」
「……そうか」
決まり悪そうな顔をして、顎に生やした無精髭を擦りつつ頷くウィルドさん。
「何か?」
なんか考え込んでいるようなおじさんに、私は尋ねる。
「なんていうか……まあ、はっきり言ってしまえば、心配なんだよ。俺は」
ぽすん、と私の頭に手が乗る。ウィルドさんの手だ。
「ミサトの住んでいる異世界の話を聞くに、ここよりずっとでかいのに治安のいい都市じゃないか。この城下街もそこそこ治安はいいが、ミサトのいる世界に比べたら危険は多い。特に夜なんかはな。治癒持ちで力持ちだろうが、ミサトは女の子なんだ。もし怖い目に逢ったらと思うと、貸家を借りて出て行くという選択に素直に頷けねえんだ」
「で、でも――」
「でもも何もねえ、いいから好きなだけ二階にいろ」
「だけど、売り上げが……」
それでもまだグダグダ言おうとする私の頭を、ウィルドさんはぐりぐり痛いほど撫でてくる。
「おじさんを心配させる気か? ああ? 心配しすぎて筋肉痩せちゃうだろ? おじさんのためを思うなら、おじさんの言うとおりにしろ。いいな?」
言い方がおかしくて笑ってしまう。
「おじさんって、自分でいうかな」
「最初、おじさんって言ってたの誰だよ?」
「私です」
無精髭生やして、体躯はでかいし筋肉質でとても料理人には思えないけど実際は「俺はまだ三十二だ」と言っていて、まあ思っていたほど若い。
明るいブラウンの髪の毛に蒼い瞳に彫りの深い顔立ちは、私の世界で言ったらウエスタンの世界にいる人みたいだ。
でも思う。
(歳の離れたお兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかな)
って。
「痛い痛い。ウィルドさん撫で方痛いです」
ぐりぐりやられすぎて、髪がグシャグシャだ。
それでも全然イヤじゃなくて笑っていられるのはきっと、ウィルドさんの手が無骨ながら温かくて気持ちが良いものだからだろう。
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