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王宮での仕事
43 深く…(※)
しおりを挟む「恋人になってください」
恋人は要らないと明言し、リンドさんからの告白も断っておきながらこんな事言うのは俺もどうかと思うけれど。
「…ミオ、本当に?」
「はい」
「無理していないかい?」
「していませんよ」
「…なぜ急に?」
「今日…一日中リンドさんのことを考えていたんです。まだこの屋敷を出てからちょっとも経っていないのに。
早く食べてもらいたくて、美味しいと言って欲しくて急いで来るくらい。
いつの間にか好きになっていたんだなと。俺もさっき自覚したのでまだ整理はついてませんが…」
告白するのってちょっと照れくさいな。
「寂しさを勘違いしているとか…」
「リンドさんとならキスもできますよ?」
「っ」
リンドさんの顔が真っ赤だ。
肌が白いだけにわかりやすい。
「…やっぱり嫌ですか?1度断った身ですしね…はは…」
「……」
『……』
リンドさんの心の声も肉声も全く聞こえなくなった。
目の前に俺がいれば心の声は常に流れ込んでいたのに。
リンドさんの声が聞こえないということは精神防御魔法の精度を高めているからだろう。
断っておきながら。からかっておきながら。と怒っているだろうか。
表情からも読み取ってみようといつの間にか俯いてしまっていた顔を上げるがリンドさんは後ろを向いてしまっていて感情が分からない。
どうしよう。今までに経験がないくらい血の気が引いてきている。
「リンドさん…?」
何も言ってこないリンドさんに痺れを切らして声をかけた。
「はぁ…」
リンドさんのため息…。
やっぱり身勝手だったよな。
「ミオ」
「はい」
「私と恋人になってくれるかい?」
「え…あ、はいっ」
「よろしく、ミオ」
「よろし、く…です…」
さっきまで断る雰囲気ではなかっただろうか…。
「断られるのはわかってても改めて私から正式に交際の申し込みをしに行こうと思っていたのに…まさか先を越されてしまうなんて思いもしなくてね…
全く、ミオは心を揺さぶるのが上手いね?私は翻弄されっぱなしだ」
やれやれとわざとらしく振る舞うがその表情は穏やかで周りに細かくて小さな花が飛んでいるように見えた。
「抱きしめてもいいかい?」
「俺たちはたった今、恋人になったんですよね…?聞かなくても───わっ」
ぎゅっと足が浮くほどの勢いでハグされリンドさんの顔が目の前に来ると唇へと軽いキスを落とされる。
「ん、…いきなり大胆ですね」
「両思いだと言うのなら遠慮はいらないだろう?」
真摯な大人かと思えば俺の言葉に頬をあからめる一面もあり、ハグからのスマートにキスを熟すリンドさん。
俺の心も翻弄されてますっ!
「エッチなことも今からしますか?」
さっき「リンドさんとならキスもできますよ」といった時に彼は頬を赤らめていたし今のでもっと赤くなるのでは?と好奇心で発言したが俺は直ぐに後悔することになる。
「さすがに今からなんて冗談───」
「ねぇ、ミオ…どれくらいエッチなことしようか?」
顔を赤く染めるどころか誘われてしまった。
再び抱きすくめられて耳元でエロティックに囁かれればご無沙汰だった俺の下半身が疼き始め、尻穴がキュッとしたのが腰にあるリンドさんの手に伝わってないといいが、と願った。
「ふふふ、可愛いねミオ」
今度は頬にちゅっとキスされる。
直接肌に触れているのに心の声が聞こえないなんてリンドさんはどれだけ精神防御魔法を強固にしたんだ。
リンドさんの発言は全て本心だとは理解しているが、聞こえていたものが聞こえないとなると少々不安になってしまう。
「リンドさん、今だけ、少しでいいので精神防御魔法緩めて貰えませんか?」
この国1番の光魔法の使い手で魔力量の多いリンドさんは細かい調整などお手の物で。
『4。もっと緩めた方がいいかい?』
「聞こえました」
「なんて言っていたかな?」
「どれくらい緩めればいいのかと」
「数字は聞こえたかな?」
「4です」
「4か。ありがとう」
多分魔法の強さを分かりやすく数字にしていたのだろう。
俺に聞かれたくない事がある時の参考にと。
「ミオは帰ると先程は言っていたけれど私が返したくないからね。
さあ、おいで」
そうして俺は屋敷へと連れ戻されて抱えられた俺を見たゼレンが瞠目していたがリンドさんが声をかければすぐに執事に従事する。
「夜食だけ用意しておいてくれ」
「かしこまりました」
その一言で全てを理解したのだろう。
ゼレンはなんの疑いもなくリンドさんの寝室へと先行し扉を開けた。
室内へ足を数歩踏み入れたリンドさんの後ろで扉を閉めようとするゼレンと目が合い、彼は綺麗なウィンクをしてパタンと扉を閉めた。
こんな全力で『良い夜をお過ごしください』と言われると今からする行為に集中できるかどうか…。
「何を考えているのかな?ミオは」
いつの間にか広いベッドへと下ろされていて顔を覗き込まれる。
毛穴なんて一切見えない彫りの深い顔立ちにスっとした眉毛、綺麗な翡翠色をした瞳と瞬きをしたら音がしそうなほどの長いまつ毛、バランスのとれた位置にある薄い唇。
アップに耐えない顔とは寧ろこの事では。とおもうほどに美しすぎる顔立ちに羞恥し、つい顔を背けてしまった。
「照れることは無いよ、これからもっと恥ずかしいことをするのだからね…ふ、」
「っ、ん、んぅ…は、ん……ぁ」
背けた顔を顎を掬って正面を向かせたリンドさんは深く口付け、座っていた俺を押し倒すと息継ぎもままならないほどに舌を絡まらせたキスを仕掛ける。
「…はっあ、んんっ!?ン、ぁ…、はぁっ、」
口腔内が蹂躙され次第に快楽を拾い始めた。
こんな気持ちのいいキスなんてしたことがない、と唯一の比較対象相手を思い出しているとリンドさんは気づいたのか
「今の、恋人は…、私だよ?ミオ…」
息継ぎの合間に嫉妬めいた言葉を紡ぐ。
「アッ、あんな奴、忘れるくらい…エッチなことしてください」
俺は熱に浮かされてとんでもないことを口走ったが頭に酸素が回らず訂正と言う言葉すら浮かばなかった。
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