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186. ロンド~踊る命~ -3- 鍵を握る者
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青木家の玄関には二台の自転車がある。一台は母・礼夏の、もう一台は妹・紗重の三輪車だ。使われることのない二台の自転車は、常にきれいに磨かれている。
貴之が、みふゆから妹・紗重に関して聞いているのは、手放した事情だけだ。静かに、感情を表に出さずに事情を語ったみふゆだが、妹の行く末を、幸福を案じ続けているのはあきらかだった。
紗重の人生を考えるなら、両親のいる普通の家庭で育ったほうが幸せだと説得された。みふゆ自身まだ十五歳だった。
倒れて目覚めぬままの母親を抱え、紗重まで育てることが出来るのかと問われた時、みふゆには自信がなかった。
紗重は当時三歳。かわいい盛りだったろう。
『おねーたん、さえたん、おねーたん、さえたん』
『紗重ちゃん、いい子にしててね』
『うん。さえたん、いいこ。おねーたんもいいこ』
遊びに行くのだとだまし、タクシーに乗った紗重が小さな手を振りながら笑っていた。
それが最後だったとみふゆは言った。
貴之はみふゆに無断で紗重の調査をさせていた。
もしも、紗重が不遇な立場にいれば惣領家に引き取るつもりだったし、幸福な生活を送っているのであれば、せめてみふゆにその生活ぶりを伝えたいと思っていた。
黒岩の報告は意外なもので、貴之はみふゆに教えるべきかをひとまず先送りとした。
みふゆの妹・青木紗重は、引き取られてすぐに名前を変えられ、米国永住権を取得した養父母とともに渡米。現在はワシントン州に住んでいる。日本語はまったく話せず、ほぼアメリカ人として生きている。
養父母に愛され、恵まれた家庭で幸せな暮らしを送っている。
貴之は紗重が幸せであることに胸をなでおろした。伝えるのはみふゆが健康を取り戻してからでも遅くはないと考えた。
寝室のドアが開き、貴之が出てきた。みふゆが振り向いて、
「お父さん、おそーいっ」
と口を尖らせたが、すぐに抱いていたクッションに顔を埋めてしまった。
「ごめんなさい!」
意識せず口から飛び出した言葉と態度にみふゆは即座に謝った。父親になったとはいえ、貴之に対して使ったことのない口調に、自分じゃないような気がして戸惑った。自分はこんなにもずーずーしい性格だったのか。
「なに謝ってんだ?」
貴之がみふゆの頭を撫でた。
「口の利き方が・・・」
クッションに顔を埋めたまま、小さな声でみふゆが言った。
「みふゆ、顔あげろや」
みふゆはクッションからゆっくりと顔をあげた。涙目だ。
「みふゆ、俺は何度も言ったはずだ。お前はもっと俺に甘えていいってな。お前のわがままはわがままのうちには一つも入らねぇ。お前は俺のたったひとりの娘だ。どんな甘えもわがままも俺は受け止めてやるし叶えてやる。だから、謝らなくていいんだ」
貴之はどうしてこんなにも自分を思ってくれるのか、みふゆには貴之の真意がわからなかった。
「な?」
「・・・」
泣きそうな唇がへの字になって、みふゆは無言でうなずいた。
「さあ、病院に戻りますわよ」
胡蝶が声をかけ、貴之がみふゆの車椅子を押した。
本郷二条総合病院、九階特別室。
みふゆはベッドに入るとふぅと息をもらした。
「疲れたか?」
「少し」
「晩飯まで時間がある。眠ったらどうだ?今日のことは晩飯食いながらでも話せばいい」
「うん」
垣間見える、子供の『惣領みふゆ』
消えてしまうと思っていた、八歳の惣領みふゆはこうして貴之の側にのこってくれている。いつかは完全に消えてしまっても、それは、親ならば誰もが体験する、子供が成長した証だ。短い間だとしても、一緒に過ごした日々が消滅するわけではない。
みふゆがリモコンで頭部のリクライニングを下げた。抱っこ用のひよこぐるみを横に置きかえ、みふゆは京司朗からもらったクッションを抱きしめながら眠りについた。
胡蝶が病室に入ってきた。
着物からえんじ色の医療用スクラブに着替えた胡蝶は、眠っているみふゆをみつめている京司朗を目にとめた。
胡蝶は貴之に話しかけた。
「眠ったのね」
「ああ、別にかまわねぇだろ?診察あんのか?」
「ないわ。精神科の先生には大塚から報告がいってるし、私からも伝えるから。あ、そうそう、京司朗、夕飯はどうするの?食べていくなら厨房に連絡をするわよ?」
「いえ、屋敷に戻ります。屋敷の改築でセキュリティを再考したい場所があるので」
「なんだ?」
「黒岩家と屋敷の繋がりです」
「海斗の部屋か?」
「はい。海斗の部屋だけでなく全体を見直します。見直しには海斗も参加させます」
「そうか、・・ケガも治ったんならお前に任せるか・・。海斗にセキュリティを勝手に変更した罰に、個人稽古をたっぷりとつけてやると脅しとけ」
「わかりました。ついでになりますが錦戸の見舞いに行ってから帰ります」
錦戸は惣領家の厨房で長く働いている調理師で、昨年ガンが見つかり入院治療を受けている。
「ああ、そういやお前、帰国してから会ってねえか」
「はい。なかなかタイミングが合わなくて」
「俺も後で顔見せるって言っといてくれ」
京司朗が「はい」と言って貴之に軽く一礼した。
みふゆがピンクのクッションを抱いて寝返りを打ったのが見えた。
離れたくない。ずっと側にいられたら━━━━
気持ちを持て余したまま、京司朗は病室を出ていった。
惣領家の屋敷の二階には、十二~三人の男たちが常に備えている。貴之を護るのを主な役目としている彼らは常駐組と呼ばれ、二十四時間体制で屋敷に詰めている。
貴之が不在でも役目は変わらず、屋敷の護りに徹している。
「おい、矢口、寝るなら隣の部屋に行くか寮に帰れよ」
桐島が矢口を揺さぶった。
今日、矢口は常駐組のメンバーには入っていない。公休日なのに、特にどこにも行かないからと勝手に参加しているだけだった。
居ても邪魔になるわけではないので置いていたが、矢口は三十分ほど前にうとうととし始め壁に寄りかかって眠ってしまった。
「おい、矢口っ」
桐島が矢口の肩を掴んでぐらぐらと揺るがした。
「矢口?」
矢口の反応がない。
「おい!矢口!」
桐島が大声で呼んだが、矢口の上体は壁に背をつけたまま滑るように倒れてしまった。
桐島が矢口の名を叫んだ。矢口は起きなかった。
「錦戸、調子はどうだ?」
京司朗は開けっぱなしのドアから声をかけた。後ろの三上は軽く会釈をした。
ナースステーションのすぐ近くの個室は、錦戸が重病であることの証明だ。開けっぱなしのドアは看護師が常時観察できるようにしてあるからだった。
錦戸は京司朗が訪ねてきたのに驚いた。寝ていた体を起こし、「わざわざすみません」と頭を下げた。
「帰国後に来るつもりだったんだがタイミングが悪くてな。具合はどうだ?」
「いやあ、最近めっきり調子が良くって、もう退院出来るんじゃないかと思ってるんですよ」
京司朗は錦戸の言葉の裏を読みとったが、にこやかな表情で「それならまたお前の餃子が食べられそうだな」と言った。
錦戸が得意とする料理は中華だ。中学を卒業してすぐに中華料理店で働き、独立の夢をみた錦戸は、たちの悪い友人に騙され、ある組事務所で指をつめるハメになった。その後の人生は転落の一途を辿るよくある話だ。錦戸は最終的には詐欺で逮捕された。
出所が決まると、心配した刑務官のひとりが、惣領家の寺を紹介してくれ、働くことになった。
たまたま貴之が寺を訪れた際に、錦戸の餃子を振る舞われ気に入ったのがきっかけで、惣領家の屋敷の厨房で働かせることにしたのだ。
以来、中華料理は錦戸の担当だった。
「もちろんですよ。退院したら真っ先に作らせてもらいます」
痩けた頬、痩せ細った手。影の薄さが錦戸の残り少ない命の彩りを表していた。
「会長もあとで━━━」
言いかけたところで京司朗のスマートフォンが鳴った。
貴之からだった。
〈京司朗!すぐに戻れ!!〉
貴之の逼迫した声だ。
その向こうでみふゆの叫び声がした。
「矢口!」
ぐったりと畳の上に倒れて寝そべったまま、矢口は動かなかった。
「大塚クリニックに連絡しろ!」
屋敷の二階はにわかに慌ただしくなった。
「桐島さん!明理さんが来ました!」
「どうしたの?!」
「矢口が目覚めないまま倒れました。呼んでも引っぱたいても反応がありません!」
本橋明理は使用人頭の本橋の娘で、二年前まで本郷二条総合病院の総看護師長を務めていた。現在は屋敷で本橋とともに、屋敷内を仕切っている。また従業員の健康管理も本橋明理の仕事だった。
矢口は呼吸も心臓の動きも正しく、顔色も悪くない。深く深く眠っているように見える。明理は「大塚クリニックに運んで」と、指示を出した。
「違う!!駄目だ!!」
矢口が突然叫んで起きあがった。
「女神が危ない!!」
矢口は叫ぶと自身がいつも持っているリュックをつかんで飛び出して行った。
青木家の玄関には二台の自転車がある。一台は母・礼夏の、もう一台は妹・紗重の三輪車だ。使われることのない二台の自転車は、常にきれいに磨かれている。
貴之が、みふゆから妹・紗重に関して聞いているのは、手放した事情だけだ。静かに、感情を表に出さずに事情を語ったみふゆだが、妹の行く末を、幸福を案じ続けているのはあきらかだった。
紗重の人生を考えるなら、両親のいる普通の家庭で育ったほうが幸せだと説得された。みふゆ自身まだ十五歳だった。
倒れて目覚めぬままの母親を抱え、紗重まで育てることが出来るのかと問われた時、みふゆには自信がなかった。
紗重は当時三歳。かわいい盛りだったろう。
『おねーたん、さえたん、おねーたん、さえたん』
『紗重ちゃん、いい子にしててね』
『うん。さえたん、いいこ。おねーたんもいいこ』
遊びに行くのだとだまし、タクシーに乗った紗重が小さな手を振りながら笑っていた。
それが最後だったとみふゆは言った。
貴之はみふゆに無断で紗重の調査をさせていた。
もしも、紗重が不遇な立場にいれば惣領家に引き取るつもりだったし、幸福な生活を送っているのであれば、せめてみふゆにその生活ぶりを伝えたいと思っていた。
黒岩の報告は意外なもので、貴之はみふゆに教えるべきかをひとまず先送りとした。
みふゆの妹・青木紗重は、引き取られてすぐに名前を変えられ、米国永住権を取得した養父母とともに渡米。現在はワシントン州に住んでいる。日本語はまったく話せず、ほぼアメリカ人として生きている。
養父母に愛され、恵まれた家庭で幸せな暮らしを送っている。
貴之は紗重が幸せであることに胸をなでおろした。伝えるのはみふゆが健康を取り戻してからでも遅くはないと考えた。
寝室のドアが開き、貴之が出てきた。みふゆが振り向いて、
「お父さん、おそーいっ」
と口を尖らせたが、すぐに抱いていたクッションに顔を埋めてしまった。
「ごめんなさい!」
意識せず口から飛び出した言葉と態度にみふゆは即座に謝った。父親になったとはいえ、貴之に対して使ったことのない口調に、自分じゃないような気がして戸惑った。自分はこんなにもずーずーしい性格だったのか。
「なに謝ってんだ?」
貴之がみふゆの頭を撫でた。
「口の利き方が・・・」
クッションに顔を埋めたまま、小さな声でみふゆが言った。
「みふゆ、顔あげろや」
みふゆはクッションからゆっくりと顔をあげた。涙目だ。
「みふゆ、俺は何度も言ったはずだ。お前はもっと俺に甘えていいってな。お前のわがままはわがままのうちには一つも入らねぇ。お前は俺のたったひとりの娘だ。どんな甘えもわがままも俺は受け止めてやるし叶えてやる。だから、謝らなくていいんだ」
貴之はどうしてこんなにも自分を思ってくれるのか、みふゆには貴之の真意がわからなかった。
「な?」
「・・・」
泣きそうな唇がへの字になって、みふゆは無言でうなずいた。
「さあ、病院に戻りますわよ」
胡蝶が声をかけ、貴之がみふゆの車椅子を押した。
本郷二条総合病院、九階特別室。
みふゆはベッドに入るとふぅと息をもらした。
「疲れたか?」
「少し」
「晩飯まで時間がある。眠ったらどうだ?今日のことは晩飯食いながらでも話せばいい」
「うん」
垣間見える、子供の『惣領みふゆ』
消えてしまうと思っていた、八歳の惣領みふゆはこうして貴之の側にのこってくれている。いつかは完全に消えてしまっても、それは、親ならば誰もが体験する、子供が成長した証だ。短い間だとしても、一緒に過ごした日々が消滅するわけではない。
みふゆがリモコンで頭部のリクライニングを下げた。抱っこ用のひよこぐるみを横に置きかえ、みふゆは京司朗からもらったクッションを抱きしめながら眠りについた。
胡蝶が病室に入ってきた。
着物からえんじ色の医療用スクラブに着替えた胡蝶は、眠っているみふゆをみつめている京司朗を目にとめた。
胡蝶は貴之に話しかけた。
「眠ったのね」
「ああ、別にかまわねぇだろ?診察あんのか?」
「ないわ。精神科の先生には大塚から報告がいってるし、私からも伝えるから。あ、そうそう、京司朗、夕飯はどうするの?食べていくなら厨房に連絡をするわよ?」
「いえ、屋敷に戻ります。屋敷の改築でセキュリティを再考したい場所があるので」
「なんだ?」
「黒岩家と屋敷の繋がりです」
「海斗の部屋か?」
「はい。海斗の部屋だけでなく全体を見直します。見直しには海斗も参加させます」
「そうか、・・ケガも治ったんならお前に任せるか・・。海斗にセキュリティを勝手に変更した罰に、個人稽古をたっぷりとつけてやると脅しとけ」
「わかりました。ついでになりますが錦戸の見舞いに行ってから帰ります」
錦戸は惣領家の厨房で長く働いている調理師で、昨年ガンが見つかり入院治療を受けている。
「ああ、そういやお前、帰国してから会ってねえか」
「はい。なかなかタイミングが合わなくて」
「俺も後で顔見せるって言っといてくれ」
京司朗が「はい」と言って貴之に軽く一礼した。
みふゆがピンクのクッションを抱いて寝返りを打ったのが見えた。
離れたくない。ずっと側にいられたら━━━━
気持ちを持て余したまま、京司朗は病室を出ていった。
惣領家の屋敷の二階には、十二~三人の男たちが常に備えている。貴之を護るのを主な役目としている彼らは常駐組と呼ばれ、二十四時間体制で屋敷に詰めている。
貴之が不在でも役目は変わらず、屋敷の護りに徹している。
「おい、矢口、寝るなら隣の部屋に行くか寮に帰れよ」
桐島が矢口を揺さぶった。
今日、矢口は常駐組のメンバーには入っていない。公休日なのに、特にどこにも行かないからと勝手に参加しているだけだった。
居ても邪魔になるわけではないので置いていたが、矢口は三十分ほど前にうとうととし始め壁に寄りかかって眠ってしまった。
「おい、矢口っ」
桐島が矢口の肩を掴んでぐらぐらと揺るがした。
「矢口?」
矢口の反応がない。
「おい!矢口!」
桐島が大声で呼んだが、矢口の上体は壁に背をつけたまま滑るように倒れてしまった。
桐島が矢口の名を叫んだ。矢口は起きなかった。
「錦戸、調子はどうだ?」
京司朗は開けっぱなしのドアから声をかけた。後ろの三上は軽く会釈をした。
ナースステーションのすぐ近くの個室は、錦戸が重病であることの証明だ。開けっぱなしのドアは看護師が常時観察できるようにしてあるからだった。
錦戸は京司朗が訪ねてきたのに驚いた。寝ていた体を起こし、「わざわざすみません」と頭を下げた。
「帰国後に来るつもりだったんだがタイミングが悪くてな。具合はどうだ?」
「いやあ、最近めっきり調子が良くって、もう退院出来るんじゃないかと思ってるんですよ」
京司朗は錦戸の言葉の裏を読みとったが、にこやかな表情で「それならまたお前の餃子が食べられそうだな」と言った。
錦戸が得意とする料理は中華だ。中学を卒業してすぐに中華料理店で働き、独立の夢をみた錦戸は、たちの悪い友人に騙され、ある組事務所で指をつめるハメになった。その後の人生は転落の一途を辿るよくある話だ。錦戸は最終的には詐欺で逮捕された。
出所が決まると、心配した刑務官のひとりが、惣領家の寺を紹介してくれ、働くことになった。
たまたま貴之が寺を訪れた際に、錦戸の餃子を振る舞われ気に入ったのがきっかけで、惣領家の屋敷の厨房で働かせることにしたのだ。
以来、中華料理は錦戸の担当だった。
「もちろんですよ。退院したら真っ先に作らせてもらいます」
痩けた頬、痩せ細った手。影の薄さが錦戸の残り少ない命の彩りを表していた。
「会長もあとで━━━」
言いかけたところで京司朗のスマートフォンが鳴った。
貴之からだった。
〈京司朗!すぐに戻れ!!〉
貴之の逼迫した声だ。
その向こうでみふゆの叫び声がした。
「矢口!」
ぐったりと畳の上に倒れて寝そべったまま、矢口は動かなかった。
「大塚クリニックに連絡しろ!」
屋敷の二階はにわかに慌ただしくなった。
「桐島さん!明理さんが来ました!」
「どうしたの?!」
「矢口が目覚めないまま倒れました。呼んでも引っぱたいても反応がありません!」
本橋明理は使用人頭の本橋の娘で、二年前まで本郷二条総合病院の総看護師長を務めていた。現在は屋敷で本橋とともに、屋敷内を仕切っている。また従業員の健康管理も本橋明理の仕事だった。
矢口は呼吸も心臓の動きも正しく、顔色も悪くない。深く深く眠っているように見える。明理は「大塚クリニックに運んで」と、指示を出した。
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