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41. 華やかな迷路へ (3)
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『嬢ちゃんのその力は誰に似たんだ?』
『お母さんです。お母さんはもっと凄かったみたいですけど。でもその辺はあまり詳しくは話してくれませんでした。困った時に相談に乗ってくれて、この御守りをくれたんです』
あの魔除けの御守りはうちの寺のものだ
特徴があってすぐにわかる
修行にきていた連中と身内に渡す御守りだ
その中でもごくわずかな、限られた人間しか手にしていない
せめて頼る先として寺の話だけでもしてくれてたら・・
いや、御守りを渡したなら話すつもりだったかもしれない
まさかそんなに早く倒れるなんて本人も思っていなかったんだろう
ましてや意識のないまま死ぬなんて・・・
どんなに悔やんでももう遅い
『くも膜下出血だったんです。術後に意識が戻らなくて』
何もかも━━━━
「よお!すまねえな、どうだ?振袖選びは?」
言いながら、組長先生は床の間を背にあぐらをかいて座った。
はっきりと言われてしまった。
振袖選び・・。
やっぱり振袖一択か。
んー・・・、どうしたものか・・。
わたしは三枚目の振袖を着せてもらっていた。
そう、着せてもらっているのだ。
羽織って帯を合わせるだけのつもりが、楓さんが現れてすっかり試着大会のようになっていた。この調子だと全部試着させるつもりだ。楓さんの瞳が輝いているもの。
三枚目は淡いクリーム色の地に、蘭菊・キキョウ、たぶん・・萩?・・などが描かれている。全体的に色彩はおとなしめだが、しかし品のある振袖だ。
「おお、こりゃあいいねえ。着るとまたいっそう上品さが際立つ。似合うぞ、嬢ちゃん」
「あら、あたしはさっきの白と薄紅のほうがいいわあ。かわいくて」
「なんだ、薄紅のやつは着ちまったのか?最後でいいからもう一回みせてくれや」
組長先生、薄紅が好みかな。たしかにかわいくてわたしも好きだけど・・・。
洋服なら選ばない色もかわいい花柄も、着物ならば着てもいいと思うし、許せるのが不思議よね。
上品だと言われた振袖を着ながら、わたしは次に着るだろう振袖が気になって、ちらちらと見ていた。
あの、神秘的な振袖。
でも藤の花は終わってしまってるし、季節がずれてない?
ここにあるということは季節感とか気にしなくていいってこと?
「なんだ?嬢ちゃん、真ん中の振袖が気になるのか?」
組長先生、めざといな。わたしの視線の動きまで見ていたのか・・。
「あの、亡くなった父が藤の花が好きで・・・、似てるんです。父の見た夢の中の風景と。亡くなる2ヶ月くらい前に夢で藤の花がたくさん咲く桃源郷を見たって言ってて」
「ほう?桃源郷か・・。それで?」
「それで、絵を描いたんです。父はもう絵筆を持つ力がなかったので、わたしが代わりに父から聞いて、天から下がるたくさんの咲き乱れる藤の花と白い馬が一頭いる絵を描きました。父が桃源郷と言ったので、それなら藤の幻の郷に変えて藤幻郷にしたらいいんじゃないかと思って、絵の題名に藤幻郷とつけたんです」
「その絵はいまどうしたんだ?」
「父と一緒に火葬しました。父のための絵だったし、持っていきたいと父も言ってましたから」
「なんだかすごい偶然ね」
楓さんが、不思議そうに組長先生と藤原さんを見て言った。
「偶然?」
「この振袖は『まほろば藤』と名がついております」
藤原さんが柔和なまなざしで、わたしに微笑んで言った。
『嬢ちゃんのその力は誰に似たんだ?』
『お母さんです。お母さんはもっと凄かったみたいですけど。でもその辺はあまり詳しくは話してくれませんでした。困った時に相談に乗ってくれて、この御守りをくれたんです』
あの魔除けの御守りはうちの寺のものだ
特徴があってすぐにわかる
修行にきていた連中と身内に渡す御守りだ
その中でもごくわずかな、限られた人間しか手にしていない
せめて頼る先として寺の話だけでもしてくれてたら・・
いや、御守りを渡したなら話すつもりだったかもしれない
まさかそんなに早く倒れるなんて本人も思っていなかったんだろう
ましてや意識のないまま死ぬなんて・・・
どんなに悔やんでももう遅い
『くも膜下出血だったんです。術後に意識が戻らなくて』
何もかも━━━━
「よお!すまねえな、どうだ?振袖選びは?」
言いながら、組長先生は床の間を背にあぐらをかいて座った。
はっきりと言われてしまった。
振袖選び・・。
やっぱり振袖一択か。
んー・・・、どうしたものか・・。
わたしは三枚目の振袖を着せてもらっていた。
そう、着せてもらっているのだ。
羽織って帯を合わせるだけのつもりが、楓さんが現れてすっかり試着大会のようになっていた。この調子だと全部試着させるつもりだ。楓さんの瞳が輝いているもの。
三枚目は淡いクリーム色の地に、蘭菊・キキョウ、たぶん・・萩?・・などが描かれている。全体的に色彩はおとなしめだが、しかし品のある振袖だ。
「おお、こりゃあいいねえ。着るとまたいっそう上品さが際立つ。似合うぞ、嬢ちゃん」
「あら、あたしはさっきの白と薄紅のほうがいいわあ。かわいくて」
「なんだ、薄紅のやつは着ちまったのか?最後でいいからもう一回みせてくれや」
組長先生、薄紅が好みかな。たしかにかわいくてわたしも好きだけど・・・。
洋服なら選ばない色もかわいい花柄も、着物ならば着てもいいと思うし、許せるのが不思議よね。
上品だと言われた振袖を着ながら、わたしは次に着るだろう振袖が気になって、ちらちらと見ていた。
あの、神秘的な振袖。
でも藤の花は終わってしまってるし、季節がずれてない?
ここにあるということは季節感とか気にしなくていいってこと?
「なんだ?嬢ちゃん、真ん中の振袖が気になるのか?」
組長先生、めざといな。わたしの視線の動きまで見ていたのか・・。
「あの、亡くなった父が藤の花が好きで・・・、似てるんです。父の見た夢の中の風景と。亡くなる2ヶ月くらい前に夢で藤の花がたくさん咲く桃源郷を見たって言ってて」
「ほう?桃源郷か・・。それで?」
「それで、絵を描いたんです。父はもう絵筆を持つ力がなかったので、わたしが代わりに父から聞いて、天から下がるたくさんの咲き乱れる藤の花と白い馬が一頭いる絵を描きました。父が桃源郷と言ったので、それなら藤の幻の郷に変えて藤幻郷にしたらいいんじゃないかと思って、絵の題名に藤幻郷とつけたんです」
「その絵はいまどうしたんだ?」
「父と一緒に火葬しました。父のための絵だったし、持っていきたいと父も言ってましたから」
「なんだかすごい偶然ね」
楓さんが、不思議そうに組長先生と藤原さんを見て言った。
「偶然?」
「この振袖は『まほろば藤』と名がついております」
藤原さんが柔和なまなざしで、わたしに微笑んで言った。
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