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20. 平凡に生きたい (2)
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気まずい。非常に気まずい。
「俺と一緒に車に乗るのがそんなに嫌ですか?」
「な、なんのお話でしょうか?」
こうなったら一刻も早く組長先生のお屋敷についてほしい
「アイスの時といい、今日といい、あきらかに俺と車に乗るのを嫌がっていますよね?」
「い・・・、い・・え?そんなことは・・・・」
「社長に何か言われたんですか?」
「い、・・・う・・・・、し、知らない人の車に乗っちゃいけないとお母さんが」
「俺とあなたは既に面識がありますよ。それに俺はあなたがよく知っている会長のいわば側近中の側近です。信頼できませんか?」
「いや・・でも、・・そういう肩書きと、信頼できるかどうかは別なのでは・・・組長先生と、わ、若頭さんがそもそも別ですし・・」
しどろもどろなわたし。
「なるほど・・・、で?社長は何と言ったんですか?」
「え・・?あー、・・」
わたしは言葉に詰まっていた。
どうごまかせばいいのか。
それとも社長が言った言葉をそのまま教えればいいのか。
下手に教えて険悪の火種になっても困る。あれでも一応雇い主だ。
「く、組長先生なら社長が何を言ったかなんて気にしないと思いますが・・・・」
苦し紛れに若頭の上司の組長先生を出してみた。
虎の威でもなんでも今は借りたい。
一瞬、若頭の目が驚いたように見開いた気がした。
「仙道さん、花屋の社長からです」
社長、ナイスアシスト!助けて!
若頭は助手席の男性から携帯電話を受け取った。
「はい、仙道です」
〈仙道ーー!テメー!うちの従業員なに連れ出してんだこの野郎ーー!!〉
社長の怒号がわたしの耳まで届いた。
「お借りしますよと言った時、勝手にしろと言ったのはあなたでしょう?だからお借りしますよ。ああ、昼御飯を食べてもらってからお返しします。それともあなたがうちまで迎えに来てあげますか?来れるものならの話ですが」
おかしな含みの話し方だった。
社長は組長先生のお屋敷にはまるで絶対来れないような・・・。
そういえば、お屋敷にお花を届けるの、社長が行ったのを見たことがない。社長がタクシー代を出すからと、わたしか、たまに七十先輩が行ってるな。
あれこれ考えているさなか、若頭と社長はどうやら根暗いバトルを続けていたようだった。
〈仙道、てめぇ性格の悪さは変わってねぇな〉
「ええ、ありがとう」
わたしにはなんて言ってるか聞こえなかったけど、若頭が笑みを浮かべてるということは、バトルじゃないのか?仲良しさん?
〈うちの従業員に手ぇ出すんじゃねえぞ。出したらただじゃすまねぇからな〉
「俺はあなたの部下ではないのでね。なんとも答えられませんね」
「そろそろ着きます」
「では切りますよ」
いったい何を話していたのか、若頭はあっさりと携帯電話を切った。
いたたまれずうつむいて、社長と若頭の会話をずっと聞いていたせいで、わたしは外の風景に注意を払っていなかった。てっきり組長先生のお屋敷に行くのだとばかり思っていたし。
到着したと、若頭がドアを開け、わたしに手を差しのべた。手を借りないでも降りれるが、手を借りないことがまた若頭に対して失礼になるのではないかと深読みしたわたしは、差しのべられた手を取った。
若頭が、ふと笑みをこぼした。
芍薬の花がほころびるような、ほんとうの笑み。
そして、初めて気がついた。
ここ組長先生のお屋敷じゃない。
「ここは・・・」
お寺?
「会長は今日は住職の代理で、ある方の法要をおこないます。亡くなった方がその白い・・?」
お花の名前にはうといらしい。
「トルコキキョウです」
「を、好きだったそうです」
「え?あの、代理で法要ってお坊さんですか?お経を読むのですか???」
「住職の代理ですから。・・・ご存知ありませんでしたか?このお寺は会長のご実家です」
「・・・・・・・」
ええーーーーーーっ!?
組長先生にはいろいろと謎が多い。
気まずい。非常に気まずい。
「俺と一緒に車に乗るのがそんなに嫌ですか?」
「な、なんのお話でしょうか?」
こうなったら一刻も早く組長先生のお屋敷についてほしい
「アイスの時といい、今日といい、あきらかに俺と車に乗るのを嫌がっていますよね?」
「い・・・、い・・え?そんなことは・・・・」
「社長に何か言われたんですか?」
「い、・・・う・・・・、し、知らない人の車に乗っちゃいけないとお母さんが」
「俺とあなたは既に面識がありますよ。それに俺はあなたがよく知っている会長のいわば側近中の側近です。信頼できませんか?」
「いや・・でも、・・そういう肩書きと、信頼できるかどうかは別なのでは・・・組長先生と、わ、若頭さんがそもそも別ですし・・」
しどろもどろなわたし。
「なるほど・・・、で?社長は何と言ったんですか?」
「え・・?あー、・・」
わたしは言葉に詰まっていた。
どうごまかせばいいのか。
それとも社長が言った言葉をそのまま教えればいいのか。
下手に教えて険悪の火種になっても困る。あれでも一応雇い主だ。
「く、組長先生なら社長が何を言ったかなんて気にしないと思いますが・・・・」
苦し紛れに若頭の上司の組長先生を出してみた。
虎の威でもなんでも今は借りたい。
一瞬、若頭の目が驚いたように見開いた気がした。
「仙道さん、花屋の社長からです」
社長、ナイスアシスト!助けて!
若頭は助手席の男性から携帯電話を受け取った。
「はい、仙道です」
〈仙道ーー!テメー!うちの従業員なに連れ出してんだこの野郎ーー!!〉
社長の怒号がわたしの耳まで届いた。
「お借りしますよと言った時、勝手にしろと言ったのはあなたでしょう?だからお借りしますよ。ああ、昼御飯を食べてもらってからお返しします。それともあなたがうちまで迎えに来てあげますか?来れるものならの話ですが」
おかしな含みの話し方だった。
社長は組長先生のお屋敷にはまるで絶対来れないような・・・。
そういえば、お屋敷にお花を届けるの、社長が行ったのを見たことがない。社長がタクシー代を出すからと、わたしか、たまに七十先輩が行ってるな。
あれこれ考えているさなか、若頭と社長はどうやら根暗いバトルを続けていたようだった。
〈仙道、てめぇ性格の悪さは変わってねぇな〉
「ええ、ありがとう」
わたしにはなんて言ってるか聞こえなかったけど、若頭が笑みを浮かべてるということは、バトルじゃないのか?仲良しさん?
〈うちの従業員に手ぇ出すんじゃねえぞ。出したらただじゃすまねぇからな〉
「俺はあなたの部下ではないのでね。なんとも答えられませんね」
「そろそろ着きます」
「では切りますよ」
いったい何を話していたのか、若頭はあっさりと携帯電話を切った。
いたたまれずうつむいて、社長と若頭の会話をずっと聞いていたせいで、わたしは外の風景に注意を払っていなかった。てっきり組長先生のお屋敷に行くのだとばかり思っていたし。
到着したと、若頭がドアを開け、わたしに手を差しのべた。手を借りないでも降りれるが、手を借りないことがまた若頭に対して失礼になるのではないかと深読みしたわたしは、差しのべられた手を取った。
若頭が、ふと笑みをこぼした。
芍薬の花がほころびるような、ほんとうの笑み。
そして、初めて気がついた。
ここ組長先生のお屋敷じゃない。
「ここは・・・」
お寺?
「会長は今日は住職の代理で、ある方の法要をおこないます。亡くなった方がその白い・・?」
お花の名前にはうといらしい。
「トルコキキョウです」
「を、好きだったそうです」
「え?あの、代理で法要ってお坊さんですか?お経を読むのですか???」
「住職の代理ですから。・・・ご存知ありませんでしたか?このお寺は会長のご実家です」
「・・・・・・・」
ええーーーーーーっ!?
組長先生にはいろいろと謎が多い。
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