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エレスチャル王国編
21.始業式
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「ーーそろそろ時間ですわね」
少しの談笑を挟み、イスから立ち上がったフローライトが言う。
それに慌ててハウ殿も続いた。
「カーネリアン様はきっとご実家のことでしょうから、あまり心配はいりませんわ。ハウ様は、ガーディアンのお仕事に集中してくださいませ」
「はい!」
「ふふ、初仕事ですもの。失敗しても誰も怒りませんから、緊張し過ぎませんように」
茶目っ気溢れるウィンクをする彼女にハウ殿の頬が少し赤くなっている。
思うのだが、どうもフローライトはからかい気質が過ぎるな。
まぁ、それでもマグを連れ意気揚々と部屋を出ていったハウ殿の様子からして、やる気を出させているのだから下手に叱れない。
「さて、私達も行きましょうか」
「あぁ。始業式は正堂で、だったか?」
ここに来るまでの道のりに、確か正堂と説明された大きな扉の部屋があった。
そこで始業式があると記憶している。中からすでに複数の気配もしたな。
「そう、この学院の中央に位置する部屋になるわ。もう生徒達も集まってきている頃かしら」
「……そうだな。表の方が少し騒がしい」
意識を集中させると、正門の方から多数の気配を感じた。
私が先にドアを開け、フローライトが外へと出る。そこからまた私の腕に彼女が手をやり、エスコートする形で正堂へと向かった。
先程はハウ殿の前で普段通りフローライトに接してしまったからな。
これから大勢の人前に出るのだ、もっと気を引き締めていかなければ。
**********
フローライトの案内で進むと、先程の大扉とは違う入り口に辿り着いた。
どうやら、正堂の裏口らしい。
「一般の生徒は正面から、ガーディアンや教師の皆様はこちらの裏口から入ることになっているわ」
「私は外で待っていた方が良いか?」
「まさか」
クスリと笑ったフローライトは、そのまま裏口の扉を開け私の腕を引いて中へと入った。
扉を潜ると、中にいた数名の視線がこちらへと向く。
そして、決まってフローライトに連れられた私の顔を見て、驚きに目を見開いて固まっていた。
「ごきげんよう、みなさん」
そんな中で、淑女の笑みを浮かべたフローライトにハッとした様子で、慌てて礼を向ける。
舞台裏のようで、元の世界の学校にある体育館のように感じた。
正面入口から広間に入り、奥に段差のある舞台。その裏手となっている。
見渡したところ、教師らしき大人が4人。
そして、同年代らしき少年が1人と少女が1人。その護衛か、近くの壁際に私と似た白黒の執事服を着た男性が2人。
「やぁ、フローライト嬢」
「ごきげんよぉ、フローライト様」
私も壁際で待機しようかと思ったが、そのまま彼女に腕を引かれて少年と少女の方へと足を運んだ。
少年は、夜になり始めた空のような、深みの強い青い髪と瞳の落ち着いた雰囲気。
少女は、淡いピンク色の髪に澄んだ空色の瞳の穏やかな雰囲気。
両者とも変わらず私へチラチラと驚きの目を向けつつも、フローライトへ親しげに微笑んだ。
「タンザ様、モルガ様、ごきげん麗しゅう」
「公爵家の領地へと帰っていたそうですが、ゆっくりできましたか?」
「えぇ、特に今回はとても楽しく過ごせましたわ」
「それは何より……ところで、そちらの方は?」
タンザと呼ばれた少年に促され、嬉々とした様子のフローライトが私を紹介する。
「新しく私の護衛を任せた、ケイです。私の遠い親戚ですの」
「ケイと申します」
失礼のないよう丁寧に頭を下げる。ハウ殿の時とは違い、今度は私のことを「姉」だのと言って混乱させる気はないようで何よりだ。
遠い親戚ーーつまり薄くとも血の繋がりがあると聞いて、納得顔で頷きながらも珍しそうにタンザ様とモルガ様が私を見る。
「ここまでソックリの顔立ちとは、珍しいこともあるものですね」
「本当ねぇ。フローライト様が執事服を着ているようで、不思議な感じだわぁ」
モルガ様の言葉に、タンザ様だけでなく周囲で聞き耳を立てていたらしい教師陣も頷いた気配が。
屋敷の使用人と同じく、みんなにも慣れていってもらうしかない。
少しの談笑を挟み、イスから立ち上がったフローライトが言う。
それに慌ててハウ殿も続いた。
「カーネリアン様はきっとご実家のことでしょうから、あまり心配はいりませんわ。ハウ様は、ガーディアンのお仕事に集中してくださいませ」
「はい!」
「ふふ、初仕事ですもの。失敗しても誰も怒りませんから、緊張し過ぎませんように」
茶目っ気溢れるウィンクをする彼女にハウ殿の頬が少し赤くなっている。
思うのだが、どうもフローライトはからかい気質が過ぎるな。
まぁ、それでもマグを連れ意気揚々と部屋を出ていったハウ殿の様子からして、やる気を出させているのだから下手に叱れない。
「さて、私達も行きましょうか」
「あぁ。始業式は正堂で、だったか?」
ここに来るまでの道のりに、確か正堂と説明された大きな扉の部屋があった。
そこで始業式があると記憶している。中からすでに複数の気配もしたな。
「そう、この学院の中央に位置する部屋になるわ。もう生徒達も集まってきている頃かしら」
「……そうだな。表の方が少し騒がしい」
意識を集中させると、正門の方から多数の気配を感じた。
私が先にドアを開け、フローライトが外へと出る。そこからまた私の腕に彼女が手をやり、エスコートする形で正堂へと向かった。
先程はハウ殿の前で普段通りフローライトに接してしまったからな。
これから大勢の人前に出るのだ、もっと気を引き締めていかなければ。
**********
フローライトの案内で進むと、先程の大扉とは違う入り口に辿り着いた。
どうやら、正堂の裏口らしい。
「一般の生徒は正面から、ガーディアンや教師の皆様はこちらの裏口から入ることになっているわ」
「私は外で待っていた方が良いか?」
「まさか」
クスリと笑ったフローライトは、そのまま裏口の扉を開け私の腕を引いて中へと入った。
扉を潜ると、中にいた数名の視線がこちらへと向く。
そして、決まってフローライトに連れられた私の顔を見て、驚きに目を見開いて固まっていた。
「ごきげんよう、みなさん」
そんな中で、淑女の笑みを浮かべたフローライトにハッとした様子で、慌てて礼を向ける。
舞台裏のようで、元の世界の学校にある体育館のように感じた。
正面入口から広間に入り、奥に段差のある舞台。その裏手となっている。
見渡したところ、教師らしき大人が4人。
そして、同年代らしき少年が1人と少女が1人。その護衛か、近くの壁際に私と似た白黒の執事服を着た男性が2人。
「やぁ、フローライト嬢」
「ごきげんよぉ、フローライト様」
私も壁際で待機しようかと思ったが、そのまま彼女に腕を引かれて少年と少女の方へと足を運んだ。
少年は、夜になり始めた空のような、深みの強い青い髪と瞳の落ち着いた雰囲気。
少女は、淡いピンク色の髪に澄んだ空色の瞳の穏やかな雰囲気。
両者とも変わらず私へチラチラと驚きの目を向けつつも、フローライトへ親しげに微笑んだ。
「タンザ様、モルガ様、ごきげん麗しゅう」
「公爵家の領地へと帰っていたそうですが、ゆっくりできましたか?」
「えぇ、特に今回はとても楽しく過ごせましたわ」
「それは何より……ところで、そちらの方は?」
タンザと呼ばれた少年に促され、嬉々とした様子のフローライトが私を紹介する。
「新しく私の護衛を任せた、ケイです。私の遠い親戚ですの」
「ケイと申します」
失礼のないよう丁寧に頭を下げる。ハウ殿の時とは違い、今度は私のことを「姉」だのと言って混乱させる気はないようで何よりだ。
遠い親戚ーーつまり薄くとも血の繋がりがあると聞いて、納得顔で頷きながらも珍しそうにタンザ様とモルガ様が私を見る。
「ここまでソックリの顔立ちとは、珍しいこともあるものですね」
「本当ねぇ。フローライト様が執事服を着ているようで、不思議な感じだわぁ」
モルガ様の言葉に、タンザ様だけでなく周囲で聞き耳を立てていたらしい教師陣も頷いた気配が。
屋敷の使用人と同じく、みんなにも慣れていってもらうしかない。
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