異世界ドッペルゲンガー

Ryo

文字の大きさ
上 下
20 / 22
エレスチャル王国編

20.ガーディアンのお仕事

しおりを挟む
「カーネリアン様がいらっしゃらないのでしたら、私が代わりにお仕事をお教えしますわ」


 暫く雑談を交わしていたが、まだ到着する気配のないカーネリアン嬢。

 仕事が遅れるのは問題ということで、フローライトが教育係の代理をするようだ。


「宜しいのですか?」
「構いませんよ」


 申し訳なさげに俯き加減でこちらを窺うハウ殿に、フローライトは微笑んで頷いている。

 それにホッとした顔の彼に、見ているこちらまで頬が緩む。
 どうもハウ殿は、なんというか、小動物のような雰囲気があるな。


「ケイにも、私の普段の学院での生活を知ってもらえる良い機会ですし」
「そうだな……その方が守りやすくなる事もあるだろう」


 今の一番の問題は私に土地勘がない事だが、これは私が今後努力すれば良いだけの話だ。

 頼む、と頷き返すと、フローライトは正面のハウ殿へと視線を移す。
 ハウ殿も姿勢を正し聞く態勢に入った。


「まずは、ガーディアンのお仕事について軽く説明しましょうか。ガーディアンとは、ヴィオレット学院の規律を守る組織です。これは生徒に対してだけではなく、教師も含まれますわ。
 1年次から5年次の各主席がガーディアンとなります。もちろん本人の意思で辞退は出来ますが、今代のガーディアンは全員主席の方達です。
 ハウ様、違反者にはどういった罰則が課せられるのか、お答えできます?」
「は、はいっ! 生徒には学院側より実家への通達、そして罰に応じて成績が下がり、基準値を下回ると留年または退学処分となります。教師には減給または謹慎、最悪の場合は教師の資格没収、学院追放となります」
「ふふ、そうです。ちゃんとカーネリアン様から学んでいらっしゃるようですね」


 フローライトの表情はまるで弟の成長を喜んでいるようだ。ハウ殿も満更ではない様子で、照れたようにはにかんでいる。


「規律を守ると共に、学院の行事を運営するのもガーディアンのお仕事です。今日の始業式も、本運営はガーディアンが、そのサポートとして教師が動いています。
 この運営はガーディアンの1席から3席が担当する習わしになっていますから、ハウ様は2年後になりますわね」
「1席から3席……というと、5年次から3年次か。確か、フローラは3年次だったろう。運営はどうしたんだ?」
「私の担当は当日の司会・進行ですの。台本は既に休暇中に覚えてありますから、特に急ぐ必要はないわ」


 褒めろと言わんばかりにこちらを振り向いてドヤ顔を決めているフローライトに、苦笑しつつも頭を撫でてやる。

 目を見開いているハウ殿を見る限り、かなり彼女のイメージが壊れているようだが大丈夫なのだろうか。
 髪型が崩れないよう優しく撫でてやると、満足したのか正面へと向き直った。


「4席と5席の今日のお仕事は、まだ学院に慣れていない生徒が迷ってしまわないよう、正堂までご案内して差し上げる事になります。ハウ様は、もう学院の構図は把握してありますか?」
「はい、問題ありません」
「本来であれば4席と共に回るものなのですが、カーネリアン様がいらっしゃらないとなると、ハウ様お一人になってしまうのですが……」
「もしもの時はマグがいますので、大丈夫かと」
「そう。ふふ、今年の主席は優秀だと教師の間でも有名なのよ。期待しているわ」
「あ、ありがとうございますっ‼︎」


 感動した表情で頭を下げたハウ殿。頑張ろうね、と隣に座るマグに声を掛けている。


「フローラは指導者に向いているな」
「そう? ケイがそういうのなら、そうなのかしらね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

雷の夕刻に

いっき
恋愛
ある日、突然現れたドッペルゲンガーに……

身代わりお見合い婚~溺愛社長と子作りミッション~

及川 桜
恋愛
親友に頼まれて身代わりでお見合いしたら…… なんと相手は自社の社長!? 末端平社員だったので社長にバレなかったけれど、 なぜか一夜を共に過ごすことに! いけないとは分かっているのに、どんどん社長に惹かれていって……

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

処理中です...