化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏

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第3章 裏世界

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美玲みれいちゃん、降ろして。ぼく、抱っこより頭の上がいい」

 ぼくの訴えが聞こえないのか、美玲みれいちゃんはだまって走り続けた。

美玲みれいちゃん、頭の上の方が、もえちゃんを捜しやすいよ!」


「無理! もう頭に乗せられない!」

 なおも訴えかけるぼくに、美玲みれいちゃんは怒鳴るようにこたえた。
 そして、まっすぐ前を見つめて走りながら、困惑した表情で続ける。

「だってあんた、もう猫じゃない。人間の、男の子だもの……」


 ぼくは驚いて、美玲みれいちゃんの胸に抱かれながら自分の両手を見つめた。
 そこに毛だらけの丸っこい手はなく、三歳か四歳くらいの人間の、小さな手のひらがあった。

「なんで! どうして!」

 混乱するぼくに、美玲みれいちゃんも混乱した様子でこたえる。

「ごめん、わからない! けど、いまはもえをさがすのが一番なの!」

 なぜか人間になってしまったぼくは、美玲みれいちゃんの腕から飛び降りて一緒に走った。
 けんめいに走りながらも、ときおり手のひらを見つめる。

 初めてのはずの人間の体が、なぜか少し、懐かしい感じがするのだ。




 闇に沈んだゴーストタウンのような街を、ぼくらはひたすらに走った。
 大通りと言えど行き交う車の姿はなく、弱々しくともる街灯と、無意味に変わり続ける信号機の灯りが、どこまでもぽつぽつと続いている。
 マンションや住宅、ビルの窓から漏れる明かりは、ひとつもない。
 ぼくらは、美玲みれいちゃんともえちゃんが一緒に遊びに行ったことがある、公園や駅前のお店などを見てまわった。


美玲みれいちゃん、見てあそこ! 人がいる!」


 それは、駅前にあるゲームセンターを捜索しているときだった。いくつも並んだ写真シール機のひとつで、カーテンの下のすきまからのぞく、人の足を発見したのだ。

 美玲みれいちゃんが、写真シール機に飛び込んで叫ぶ。


もえ!」


 よろこび勇んで開けたカーテンの中にいたのは、全身が真っ黒な大人の女性。
 晴れた日の地面に映るような、くっきりとした女性の影が、驚いた様子でぼくらを見つめていた。

「すみません! わたしぐらいの女の子見ませんでした? 最近、こちらの世界に迷い込んでしまったんです!」

 美玲みれいちゃんは怖ろしがるよりも先に、女性の影に話しかけていた。
 しかし女性の影は、不思議そうにぼくらの方を見やるだけで、また操作パネルに視線をもどしてしまった。


「こっちは必死になって聞いているんだ! なにかこたえてよっ!」

 ぼくは女性の影が見つめている操作パネルに、文字を書いてやった。
 正面にある写真シール機の画面に、「こっちを見ろ!」という文字が浮かび上がる。

 すると、女性の影は震え上がって、カーテンの外に逃げ出してしまった。
 そのあとを美玲みれいちゃんと追いかけるも、やがて女性の後ろ姿は、霞のように消えてしまった。

 と、そのとき、頭の中にシショウの声が響く。


「無駄だよ、美玲みれいさん……」

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