50 / 61
第3章 裏世界
13
しおりを挟む
「あんの、モジャ頭ヒゲ男が~っ!」
怒り狂うチャーシューをよそに、美玲ちゃんは冷静にシショウにたずねた。
「萌はここにいるんでしょ? 早く萌の居場所を教えて」
「残念だが、ぼくにも居場所はわからない。ぼくは萌さんをよく知らないからね。
裏世界へ迷い込んだ萌さんの魂は、ここを現実世界だと思ってさまよっているはずだ。心当たりがある場所を捜してみるといい」
役立たずのシショウに見切りをつけて、美玲ちゃんがみんなにふり返った。
「みんな、手分けして捜しましょう! 時間がなくなる!」
「せやな、ヒゲのおっさんに頼っても時間の無駄や。とりあえず、そこの子に聞いてみようや。見かけてるかもしれへん」
ぼくを指さしながら、チャーシューが近づいてくる。
ぼくは驚いて後ずさりしてしまった。チャーシューは、ぼくの姿が見えているの?
「怖がってるじゃない! わたしが聞くから下がってて! ねえ、ぼく、お姉さんくらいの女の子、見かけなかった?」
美玲ちゃんが、ぼくの顔をのぞき込みながら聞いてくる。
この一大事に、美玲ちゃんは何をふざけているんだ?
「ぼく、ミッケだけど」
「ぼく、見かけたけどって言ったよ!」
よろこぶ優斗くんに、美玲ちゃんはぼくを見つめたまま首をふった。
「ちがう! ミッケって言ったのよ……。あんた、本当にミッケなの?」
困惑した顔でたずねる美玲ちゃんに、それ以上に困惑してぼくはこたえる。
「一緒に飛ばされてきたんだよ。なにがそんなに不思議なのさ!」
「かわいそうに。その子は、ヒゲのおっさんのヘンテコ魔法に巻き込まれたんや。一緒に行動せんと、迷子になって帰れなくなるで」
チャーシューの言葉に美玲ちゃんはうなづくと、ぼくを抱き上げてみんなに言った。
「じゃあチャーシューは学校、優斗くんは萌の家を捜して。わたしはこの子と、萌が行きそうな場所を手当り次第に捜してみる!」
そのとき、またシショウの声が頭に響いてきた。
「もし、萌さんが見つからなくても、夜明けまでには、この交差点にもどるように。でないとぼくは、きみたちを現実世界へ連れ戻せなくなる。いいね」
「了解!」
三人は同時に返事をすると、それぞれの場所に走り出した。
怒り狂うチャーシューをよそに、美玲ちゃんは冷静にシショウにたずねた。
「萌はここにいるんでしょ? 早く萌の居場所を教えて」
「残念だが、ぼくにも居場所はわからない。ぼくは萌さんをよく知らないからね。
裏世界へ迷い込んだ萌さんの魂は、ここを現実世界だと思ってさまよっているはずだ。心当たりがある場所を捜してみるといい」
役立たずのシショウに見切りをつけて、美玲ちゃんがみんなにふり返った。
「みんな、手分けして捜しましょう! 時間がなくなる!」
「せやな、ヒゲのおっさんに頼っても時間の無駄や。とりあえず、そこの子に聞いてみようや。見かけてるかもしれへん」
ぼくを指さしながら、チャーシューが近づいてくる。
ぼくは驚いて後ずさりしてしまった。チャーシューは、ぼくの姿が見えているの?
「怖がってるじゃない! わたしが聞くから下がってて! ねえ、ぼく、お姉さんくらいの女の子、見かけなかった?」
美玲ちゃんが、ぼくの顔をのぞき込みながら聞いてくる。
この一大事に、美玲ちゃんは何をふざけているんだ?
「ぼく、ミッケだけど」
「ぼく、見かけたけどって言ったよ!」
よろこぶ優斗くんに、美玲ちゃんはぼくを見つめたまま首をふった。
「ちがう! ミッケって言ったのよ……。あんた、本当にミッケなの?」
困惑した顔でたずねる美玲ちゃんに、それ以上に困惑してぼくはこたえる。
「一緒に飛ばされてきたんだよ。なにがそんなに不思議なのさ!」
「かわいそうに。その子は、ヒゲのおっさんのヘンテコ魔法に巻き込まれたんや。一緒に行動せんと、迷子になって帰れなくなるで」
チャーシューの言葉に美玲ちゃんはうなづくと、ぼくを抱き上げてみんなに言った。
「じゃあチャーシューは学校、優斗くんは萌の家を捜して。わたしはこの子と、萌が行きそうな場所を手当り次第に捜してみる!」
そのとき、またシショウの声が頭に響いてきた。
「もし、萌さんが見つからなくても、夜明けまでには、この交差点にもどるように。でないとぼくは、きみたちを現実世界へ連れ戻せなくなる。いいね」
「了解!」
三人は同時に返事をすると、それぞれの場所に走り出した。
13
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
輪廻と土竜 人間界管理人 六道メグル
ひろみ透夏
児童書・童話
★現代社会を舞台にしたミステリーファンタジー★
巧みに姿を隠しつつ『越界者』を操り人間界の秩序を乱す『魔鬼』とは一体誰なのか?
死後、天界逝きに浮かれていたメグルは煉獄長にそそのかされ小学生として再び人間界に堕とされる。人間界管理人という『魔鬼』により別世界から送り込まれる『越界者』を捕らえる仕事をまかされたのだ。
終わりのない仕事に辟易したメグルは元から絶つべくモグラと協力してある小学校へ潜入するが、そこで出会ったのは美しい少女、前世の息子、そして変わり果てた妻の姿……。
壮絶な魔鬼との対決のあと、メグルは絶望と希望の狭間で訪れた『地獄界』で奇跡を見る。
相棒モグラとの出会い、死を越えた家族愛、輪廻転生を繰り返すも断ち切れぬ『業』に苦しむ少女ーー。
軽快なリズムでテンポよく進みつつ、シリアスな現代社会の闇に切り込んでゆく。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
マダム・シレーヌの文房具
猫宮乾
児童書・童話
マダム・シレーヌの文房具という巨大な文房具を使って、突如現実から招かれるマホロバの街で戦っているぼくたち。痛みはないけど、意識を失うか、最後の一人になるまで勝つかしないと、現実には戻れない。ぼくの武器は最弱とからかわれる定規だ。いつも強いコンパスなどに殺されている。ある日、現実世界に戻ってから、「大丈夫か?」と男の子に声をかけられた。※不定期更新です。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
R:メルヘンなおばけやしき
stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。
雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。
ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆
ねがいがかなうレストランは過去か未来へ行くことができる
響ぴあの
児童書・童話
時の国という異世界と日本の現実世界の間に存在する不思議な幻のレストラン。
過去か未来のもしもの世界を体験でき、ねがいをひとつかなえることができる。代償は記憶の一部。
幻のレストランでボランティアをすることになった女子高校生の時野夢香。
イケメン店長18歳のアサトと10歳の少女まひるには秘密があって――
レストランには、未来でベストセラーを盗作して書きたいとねがう者など様々な客が来る。どんな記憶と引き換えにねがいをかなえるのか?幸せになれるのか?
シンデレラのオムライス、眠り姫の納豆ごはん、人魚のムニエル、白雪姫のりんごラーメン……不思議でメルヘンなメニューがたくさんある。
夢香はアサトという時の国の王子様とヨルトの間で恋心が揺れ動く。
レストランでの人とのかかわりの中で夢香は夢を見つける。
恋と夢と希望と。
二条姉妹の憂鬱 人間界管理人 六道メグル
ひろみ透夏
児童書・童話
★巧みに姿を隠しつつ『越界者』を操り人間界の秩序を乱す『魔鬼』とは一体誰なのか?★
相棒と軽快な掛け合いでテンポよく進みつつ、シリアスな現代社会の闇に切り込んでゆく。
激闘の末、魔鬼を封印したメグルとモグラは、とある街で探偵事務所を開いていた。
そこへ憔悴した初老の男が訪れる。男の口から語られたのはオカルトじみた雑居ビルの怪事件。
現場に向かったメグルとモグラは、そこで妖しい雰囲気を持つ少女と出会う。。。
序章
第1章 再始動
第2章 フィットネスジム
第3章 宵の刻
第4章 正体
第5章 つながり
第6章 雨宮香澄
第7章 あしながおじさんと女の子
第8章 配達
第9章 決裂
第10章 小野寺さん
第11章 坂田佐和子
第12章 紬の家
第13章 確信にも近い信頼感
第14章 魔鬼
第15章 煉獄長
終章
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる