王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第9章 明かされた真実編

①一触即発

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「あれ?エルもシュウも、ふたりでこんな所に突っ立ってどうしたの?」

 ギルドに向かっていた俺は、到着を前にしてふたりが外で立ち尽くしているのが目に入った。心配そうで、驚いた顔・・どうかしたのだろうか。

「あ・・ああ、レノ・・いや、カイルとクリスが突然消えたんだ・・たぶん転移魔法だ。カイルは転移魔法は使えない・・おそらくクリスがカイルを連れて行った・・」
「え・・どうして・・?」

 嫌な予感しかない・・ふたりがどうして?場所を変えなくてはいけない理由・・まさか!

「あのふたりは以前から牽制し合っていたから・・何か話し合うのかもね」

 レオは自分の正体を明かすつもりだ。きっと俺との関係を話すことも覚悟の上なんだ。
 話し合いならそれでいい、でももし傷付け合ってしまったら!

「俺!探してくる!ふたりはギルドで待ってて!」

 俺は走って路地に入っていくと、追いかけて来るふたりの視界を遮って、転移魔法を行使した。

 森の中のひらけた場所でレオとカイルが向かい合っていた。
 まずい・・すでに攻撃魔法が仕掛けられている。

「やめて!!ふたりとも!」

 俺は夢中で走っていき、ふたりの間に立って攻撃を制止した。

 ふたりが放った強力な攻撃は、俺に当たる前にレオが張った障壁が弾いて暴発した。

「「レノ!」」
「何してるの!?ふたりとも!やめてよ!」

 ふたりは俺に近づいて来て、心配そうに手を伸ばそうとする。俺はそれを避けるように数歩下がってふたりを見る。

 レオはまだクリスさんの姿だ・・どこまで話したの?何をしようとしているの?

「レノ、離れてろ。これは俺たちの問題だ」

 カイルがレオを視界に捉えながらも、俺を労わっているのがわかる。

「何が問題だって言うんだよ!傷つけあうのを黙って見てろって言うの!?そんな事、出来るはずないでしょ!?」
「俺はお前を愛してるよ。お前を失いたくない。きっと、それが問題なんだ・・クリス、そろそろ明かせ、もういいだろ?」

 カイルがレオに向かってまっすぐに見た。
 何か、覚悟しているような、そんな目をしている。

「カイル・・いや、ヒューベルト。お前が他国の王族でなければすぐにでも殺していた」

 そう言うとレオは変身魔法を解いて、本来のレオの姿に戻った。

「は・・?レオナルド、様?いや・・嘘、だろ?」

 カイルが驚いている。目を見開いて、レオをじっと見たまま動かない。

「久しぶりだな、ヒューベルト。私たちの結婚式以来だ」

 レオが、とんでもない程の威圧でカイルを睨んでいる。

「え・・レノ・・お前、お前は・・」

 どうしよう・・こんな展開、想定してなかった・・カイルが、考えを巡らせるような顔で、なかなか言葉が出ないまま、俺を見つめる。

 それから深く息を吐いて整えると、俺に向かって静かに言った。

「セス、様・・?」

 言いながら、諦めた表情を見せて顔をしかめた。

「カイル・・ごめんなさい。俺どうしても、この事だけは言えなかった・・騙してるって分かっていても、レオに迷惑だけは掛けたくなかった・・離婚していたとしても、俺がレオの障害になる事だけは避けたかったから!」

 結婚式を盛大に開いてパレードもした。街の人の中には俺を知る人だっているだろう。

「セス様は・・男性のはずでは・・?なぜ女性の姿に」

 俺は、もう隠すことなく西国タリアネシアの魔女ウィリアにかけられた呪術の事も、精神汚染魔法の事も全て話した。

「セス、私と城へ戻るよ・・もう遊びはおしまいだ」

 レオが俺の肩を抱く。城へ?俺の帰る場所はもうないよ。俺はもう誰のものでもないんだ。レオとはもう会わないって、そう何度も言った。

「レオ、もう帰って!もう会わないって何度も言ったでしょ?俺たちはもう離婚しているんだから、もう終わりにしたいんだ!レオ、恋人と・・幸せになって・・」

 俺はレオの手から逃れて離れる。
 これでいい。レオを忘れて生きるって決めたんだから。

 そう言ってレオに背を向けようとした時に、キラキラと羽を羽ばたかせて妖精が飛んできた。









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